第6話 第一章 6

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 僕は、カーテンを付け替えた。

 明るい黄緑の中にうっすらと白い色の木々が描かれている。病院で亡くなったと厳しい現実を突き付けられた時も、和室に遺体が運ばれた時も涙は抑えられたが、自分の部屋で新しいカーテンを見つめる僕に涙は止められなかった。


 母の突然の事故死によって、僕と父の生活環境は大きく変化した。

 葬儀が終わって三日目に僕と父はこれからの生活について話し合った。母がしていた主婦業というやつを僕達がしなければいけなかったためだ。


 洗濯は、各自担当、掃除は各自、リビングは僕、和室は僕という風に適当に割り振った。ゴミ捨ては父が請け負うことになった。


 問題は、食事だった。

朝食は、僕も父もパンだった。ふたりとも、缶の野菜ジュース、トースト、コーヒーと全く同じだった。僕が買って冷蔵庫に入れておくことにした。


 昼食、父は、会社の近くで外食だったので、これまで通りだった。僕の方は、変化があった。母は、肉、野菜など栄養を考えてバランスよく弁当を作ってくれていたが、それがなくなったのだ。


「売店でいろいろ弁当とかパンとか売っているからそれにする」

 僕は父に言った。

「菓子パンだけとかにするなよ」

「了解」

 朝食、昼食はこんな風に決まっていった。


 夕食のところで父と僕は、立ち止った。

「ふたりとも、外食とコンビニ弁当ですませるか。スーパーの弁当コーナーという手もあるけど」

「ウーン」

 僕は答えに窮した。外食には抵抗があった。ひとりで飲食店に入ったことがほとんどなかったからだ。高くもつく。

 

 コンビニやスーパーだったら、たくさんのお弁当や総菜が並んでいる。それらを組み合わせれば、いろいろ食べられそうだ。でも、母が作った手料理に比べるとわびしい感じがした。

「夕飯だけ作ってくれる女性を頼むか?お金のことは心配しなくていい」

 父のさらなる提案に僕は「だったら」という言葉を返していた。続きの言葉は自然と流れるように口から出た。


「僕が作る。今、料理を覚えておけば、将来役立ちそうだし」

「勉強に差障らないか」

「大丈夫。テレビ観たり、ゲームをしたりする時間の七割程の時間で十分足りると思う、挑戦してみる」

 何か気分が高揚する中で僕は言ったのである。


「俺のも作ってもらえるわけだな」

「もちろん。ただ、栄養は考えるけど、オカズの品数とかは、これまでとは同じにいかないよ」

「それはかまわないよ。栄養のバランスが偏ってなくて、味がまあまあなら十分だ。負担が大きくなったら遠慮なく言ってくれ」

 父は、ちょっと嬉しそうだった。


 

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