タッグバトル

"ビビってる"、"逃げた"

これはアルフィスが最も言われたくないセリフだった。

前世でもこれを言ったやつは半殺しにしてやったが、この言葉を二つをいっぺんに言った奴はいなかった。


アルフィスの怒りはもはや頂点だった。



闘技場中央



アルフィスとアゲハ。

リナとロイが立ち合う。


真ん中には聖騎士学校の女子生徒が立っており、コイントスをおなうようだ。


「やる気になってくれて嬉しいわ。優勝候補さんがどんなものか、ここで試しておきたいし」


リナはニヤニヤしながら二人を見る。

ロイの方はやる気なさそうだ。


「生きて帰れると思うなよ……」


「落ち着いて下さいアルフィス。今のうちに少しでも作戦を練りましょう」


アゲハの提案はもっともだったが、その声はもうアルフィスには聞こえていなかった。

ただ目の前の敵をぶっ飛ばすことしか考えていなかったのだ。


真ん中に立つ女子生徒がコイントスをおこない、コインは上空へ。


そして地面にコインが落ちた瞬間に開戦した。


「複合魔法……」


アルフィスは複合魔法を唱えた瞬間にその場から消えた。


「エンブレム……」


リナまでの距離は15メートルほどあったが、一瞬にしてリナの目の前に現れ、渾身の右ストレート。

同時にリナの周りに透明な円形状のフィールドが展開した。


アルフィスはそれを確認してすぐに、パンチ動作をストップしてバックステップする。

フィールドに触れると魔法が解除されてしまうことを察知したものだった。


「あらま、すごい反応ね」


バックステップしたアルフィスはまた前にダッシュしてまた右のストレートモーションに

入る。


「解除されるのに、馬鹿なの?」


リナはショートソードで一応防ごうと、刃を立て拳を防ぐ。

しかし、剣で拳を防いだ瞬間、バン!という音と共に一気にリナの体が剣ごとのけぞった。

アルフィスは右拳を振りぬいている。


「くっ!なに?」


この瞬間、アルフィスの複合魔法は解除された。


「複合魔法……!」 


アルフィスの二打撃目、左のボディブローは完全にリナの右脇腹をとらえていた。

しかし、触れる瞬間、横から爆風と共に風の刃がアルフィスへ向かってくる。

真横へ移動していたロイが長距離から風の魔法を放っていた。


「アルフィス!エンブレム!」


走ってきたアゲハがとっさにアルフィスと風の刃の間に入り、風を打ち消した。

が、アルフィスの二度目の複合魔法も打ち消してしまった。


「どんな手品かしら?まぁどうでもいいけど」


体制を立て直した。リナは両手持ちのショートソードで魔法が解除されたアルフィスに斬り掛かる。


瞬間、アルフィスを押し退け、アゲハが前に出る。


「天覇一刀流・雷打!」


リナの一閃を弾いて仰け反らせた。

アゲハの二段目、完全に抜刀し相手を斬り伏せるための体制に入る。


「天覇一刀流……」


だが、アゲハの周りで勢いよく風が舞い上がり土埃が舞う。

風の魔法は打ち消されたが、土埃がアゲハの目に入る。

ロイのアゲハに対しての目潰しだった。


「うっ!」


「目が見えないんじゃ、剣も振るえないよね」


リナがニヤりと笑い、再度両手持ちでアゲハに対しての一閃。

アルフィスはアゲハを守るため補助魔法無しのクロスガードでリナのショートソードを受ける。

アルフィスはその刃が左前腕の骨まで到達しているのがわかった。


「クソがぁ!」


痛みが尋常では無いが、左前腕でショートソードを押し退け、右ストレートをリナの顔面に放つ。

しかし、リナはすぐにショートソードを手から離し、バックステップする。


バックステップ後、そのまましゃがんだリナ。

するとリナの頭上のギリギリを風の刃が高速で通り過ぎ、アルフィスの胸に当たる。


「がはぁ!」


アルフィス達の真横にいたロイは少しの時間でリナの背後まで移動していたのだ。


アルフィスと、その後ろにいたアゲハは一緒に後方に勢いよく数メートル吹き飛ばされてしまった。


「はい、試合終了!」


「連携が全く取れてないね」


リナとロイはアルフィスとアゲハが倒れているところに近づく。

リナは落ちているショートソードを拾い、血を払い鞘に収める。


「優勝候補って言うから、どんなものかと思ったら弱すぎて話にならないわ」


「だから言ったんだよ早く帰ろうって」


二人で会話しながら何事もなかったように倒れているアルフィスとアゲハの横を通り過ぎる。

このまま帰るつもりなのだろう。


「アルフィス!アルフィス!」


アゲハが状態を起こし、アルフィスを揺さぶるが反応が無い。

胸からの出血があり、息はあるようだが呼吸が浅かった。


「あらあら、大変。まぁリベンジ待ってるわ」


「剣士のほうは全然ダメだけど、魔法使いのほうはまだ何か隠してるね」


「なんでもいいわ。じゃあお先に」


そう言って二人は完全に闘技場から姿を消した。


この後、アルフィスを呼ぶアゲハの声だけが闘技場に響いた。

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