第22話 無茶苦茶な作戦?
「な、なんだ」
トラックの運転手は思わず、声を荒げてしまう。
先程まで順調に流れていたのに、急に車が停滞し始めた。目的地まで後数メートルなのに。そして遂には止まってしまった。
「一体何が」
「ソーリーごめんなさいね」
その時車の横を警察官が通り過ぎていく。
まるでアメコミに出てくる女性ポリスのような風貌。セクシーなミニスカに今にも制服のボタンがはち切れそうな格好。一瞬、男は目を奪われかけたが、今は任務の途中。しかも命かげの。すぐに男は平静を装う。
「おい、何があった」
「あ、ごめんなさいね。水道管が破裂してしまって、今迂回路の方に順番に案内していますので、今しばらくお待ちくださいね」
「マジかよ」
「おい、やばくねぇか」
その時、助手席に座った男のスマホが鳴る。
『おい、何してる!』
「それが渋滞に引っかかってしまって」
『ふざけるな。なんとか時間内にあいつだけでも運べ!』
「りょ、了解致しました」
返事はイエスしかない。失敗したら自分達の命が危ないからだ。
かといっても走っていたら間に合わないし、いきなり他の乗り物を用意できるほど、男たちにはツテがない。
どうしようかと途方に暮れていた時だった。白バイが目の前で止まった。降りてきた警察官はトラックをノックする。運転手は恐る恐る窓を開いた。
「おい、使いだ。早く乗れ。あいつはこのバックに詰めろ」
そう言って差し出されたブローチを見せられて、男は安堵した。
「ありがてぇ」
男は荷台に乗せた獣人の少女の魔法を解いて、バックに詰めるとバイクの後ろ乗って取引現場に向かった。
取引現場の廃工場に着くと、既にM3の奴らは待機をしていた。
トラック男は待機していた仲間にバックを渡すと早々に退散した。
「あれ、あの白バイの奴は」
気がつけば、自分をここに運んできた奴もいなくなっていたが、さっさとこの場をさりたかったので、男は徒歩で去っていく。
定刻通りに取引は始まり、お金が入ったバックと少女が入ったバックを交換している最中だった。
「さぁ、やっちゃってください!」
ロザリーの指示で特攻してきたのは、逃走中を思わせるサングラスとスーツを着た男数名。経った数名のはずが。
「どういうことだ」
急に増殖したのだ。しかし、すぐにM3の一人がきづく。
「うろ堪えるな!単なる幻影魔法だ!」
そう叫ぶのと、同時に工場の電気が全て破裂した。いや、正確に言えば全て狙撃された。工場内は一気に暗転した。外からの唯一の光源である巨大扉もリタによって、封鎖された。
「‥‥‥しんどい」
人手が足りないので、無理矢理借り出されたリタは今にも死にそうな表情だ。
「二重のトラブルか」
一つじゃ、対処されてしまう。でも二つなら、そんなにすぐには対処できない。異世界で葉月がよくやる方法だったな、と昔を思い出しながら、アルエはリタを回収して、撤退する。
ようやくM3の一人が、扉の開閉スイッチを押したときには既にそこには誰もいなかった。男たちも、ロザリーも、もちろんバックも。
「くそ!」
すぐ探知魔法で少女の行方を追った。だが。
「嘘だろ」
百キロ圏内は探知できるはずなのに、少女は既にその圏外だった。
かくして無茶苦茶すぎる、少女奪還作戦は無事に完遂したのだった。
異世界帰りの勇者と魔王少女 @esora-0304
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