第11話 次の一手
「囮に使った!!!」
帰りの電車で、事の顛末を聞いたアンは思わず叫ぶ。
電車に乗った皆が注目したので、思わずアンは口を手で塞ぐ。
鈴華が思い付いた作戦。それはアンを囮にして、裏切り者を誘き寄せる事だった。
アンの不幸体質の中に、何故か悪党を引き寄せるというものがあった。
今までも全国指名手配犯に人質に取られたり、たまたま話しかけた男が先ほど窃盗した男だったり、間違って入ったカラオケ部屋で麻薬の取引がされていたとか、とにかく事件に突っ込むことが多いので、もしかしたら今回も引き寄せられると思ったのだ。
「ああやって煽れば、あんたは絶対ゆいちゃん連れて逃げると思ったから」
まさか自分が掌で踊らされたとは。
「ところで、どうだった藤堂君は?」
壁にもたれかかり、落ち込んでいる親友に問いかける。
「どうって」
窓から見える夕暮れを見つめながら、今日一日のことを思い返し、思わず口を結ぶ。
「助けてくれたのは確かに感謝しなければいけないんだと思う。多分私彼がいなかったら死んでた。
でも、やっぱり私には目的のために一切合切切り捨てるという考えは全く理解できない」
どうして自分にあれだけ良くしてくれるのかも、命がけで守ってくれるのも、なんであんなことを言ってくれたのかもわからない。
でも、誰かの犠牲を払ってまで、誰かの命の代償に自分が生き延びるなんて選択、アンにはできない。
「ベルちゃんこそ。いつの間にあんなに葉月ちゃんと仲良くなって」
「え、うん、まぁね」
そこで鈴華のスマホが揺れる。
『明日十時。駅前のカフェで』
それを見た鈴華は大きく息を吐く。
「葉月、明日の約束もしかしたら遅れるかもしれない」
「え?うん、わかった。じゃあ、連絡して」
「ありがとう」
そう言って窓の外を見る親友の顔は何か覚悟を決めた、そんな表情にアンには見えた。
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