第68話 共に生きていく

「さて、改めて、将軍、今後についてどうするかを話し合おうと思います。もう、魔王軍には戻らないという決断をしたまではいいですが、それにあたってどこでどうやって生きていくかについて―――」


「「「「「じ~~~~~~」」」」」


「ぬ、な、なんでありましょうか、将軍。そ、それに、お前たちまでジト目で!」



 ナオホさん含め、女騎士団は今日から魔王軍ではなくなることを決め、その上で今後どうやって生活するかなどの話し合いを皆でするのだが、セフレーナはじめ皆がジト目。


「あぅぅ~」

「ぴゅ、ぴゅー、ぴゅー」


 いや、リロは顔を真っ赤に俯き、プニィも吹けもしない口笛で誤魔化そうとしているが、誤魔化せない。

 だって、三人ともすごい肌が艶々しているから。



「あはっ、ナオホ副官~あんたたち~、坊やとヤッたねぇ?」


「「「ギクッ!!」」」



 サイインの言葉にバレバレの反応をする三人。

 すると……


「ムキー、やっぱりそうでしたのね! ハビリ様はワタクシの夫だというのに、ずるいですわー!」

「そうそ~、私たちもハビリくんとエッチしたいの~」

「やれやれ、僕も誘って欲しかったよ」

「あの、もう細かい話は抜きにして、まずはまた皆で楽しくヤリません?」


 と、本当は真面目な話をしたいのに、皆して一斉に俺にくっついてきた。

 全員が魅力的で美人だったり可愛かったりで、正直反応するなというのが無理だ。

 ただ……


「うう、皆して、お、俺が記憶無くす前はたぶん酷い奴だったって、言っただろうがぁ、あう、んちゅっ、ひゃ、お、おいい!」

「むちゅっ♥ あ~ん、ハビリ様ァ~おエッチの時間ですわァ~♥ 嗚呼、ワタクシとしたことが、キスだけでコウノトリさんが現れると思っていましたけども、召喚の儀式をいっぱいしないとダメだとは思いませんでしたわー、でも、全てを知った今はもうラブラブラブラブ~ですわ~♥」


 俺の脳裏に過るかつての記憶で、ある二人の女に非人道的な悍ましい行為をしたことは皆には告白したのに、皆して「いいも~ん♥」という感じで俺に触れてくっついてキスもそれ以上のことも求めてくる。



「え、えええ~い、は、ハレンチなことは―――」


「「「「副官だってしたくせに~♥」」」」


「あ、あう、だ、だって……わ、私だって……」



 ナオホさんも強くは言えない様子でゴニョゴニョしている。

 だけど、それでも言わなくてはならないことだと顔を真っ赤にしながら顔を上げ……



「静粛に! ハビリ殿の記憶が混濁しているとはいえ、ハビリ殿は帝国の帝都の住人である! つまり、身元などすぐに分かるであろうし、何だったら家族も待っているかもしれん! ならば、ハビリ殿をちゃんと家に帰して差し上げねばと――――」


「そ、そんなのダメですわー!」


「「「「「反対反対反対ッッ!!!!」」」」」



 そう、俺が自分のことを分かっていなくても、俺自身の名前と帝都に居た人間であることは分かっているんだから、帝都に戻れば俺の―――



「ええい、将軍もお前たちも何を! 私とてハビリ殿に恩があり、これからも一緒に居て肌を重ねたいとかキスをしたいとか子供が欲しいとか、おはようからおやすみまでずっと一緒にとかそういう気持ちは痛いほど分かるが、ハビリ殿が人間であり、故郷も分かっている以上は、むしろ帰して差し上げるのが、うう、うぐっ、真の恩返しではないのか?」


「「「「う、うう……」」」」



 帝都に帰る。

 そのとき、俺の脳裏に―――



――僕はあなたのような人は嫌いです! あなたはろくでもない男です! 僕は権力に物を言わせて他者を虐げる人を嫌悪します!


――ほんと情けないよ……カッコ悪いよ……君は恥ずかしくないの?


――あんたみたいのを、七光りのバカ息子って言うんでしょ? おまけにあいつに惨敗してダッサーイ、やーい、ざーっこざっこざっこ!』


――主よ……愚かなる悪に処罰を与えることをお許しください……私はこの人を断罪します



 あ、流れ込んできて……



「あ……俺はろくでもない男……」


「「「「「??」」」」」


「情けなくて、カッコ悪くて……バカで……愚かな断罪されるような男で……俺は追放され……ッ、うう!」


 

 胸が引き裂かれるような言葉。

 どこかの誰かが俺を軽蔑し、呆れ、嫌悪し……


「そうか……俺は追放されるような、そんな――――」

「もういいですわ、ハビリ様!」

「っ、セフレーナ……」

 

 そのとき、それ以上のことを思い出しそうになる前に、セフレーナが涙目で俺を強く抱きしめた。


「ハビリ様の記憶がどうであれ、ワタクシたちの知っているハビリ様は、逞しくて、カッコよくて、素晴らしく賞賛されるような方ですわ! もしあなたが過去に帝国で何かをし、それが原因で居場所も無い方なのでしたら、それならそれで構いませんわ! そんな過去は忘れたまま、ワタクシたちと生きていきましょうなのですわ!」


 それは、何の裏表のない、ましてや安っぽい同情心などではない、セフレーナの本心の言葉なのだと俺にはハッキリ伝わった。


「ハビリ様はワタクシたちと共にあるべきですわ! そして、ワタクシたちと幸せになるのですわ!」


 すると、他の皆も今まで以上に俺にくっついて……


「ハビリくん、私、いっぱいハビリくんのために何でもするよ!」

「君に寂しい思いはさせない!」

「ハビリお兄さま、リロはずっとお兄さまの側にいます!」

「エッチなことはあたいに任せろ!」

「わ、私は丈夫なので子供をいっぱい産むぞ、ハビリ殿!」

「ナオホ副官どさくさ!」


 と、二十人のこんなに魅力的な女たちが一斉に……それがうれしくて……



「あ……ありがとう……みんな……おれ、嬉しいよ」


「「「「「きゅぅ~~~~~ん♥♥♥♥」」」」」



 俺は嬉しいと思うことができた。



「というわけで、ハビリ様がこれからもワタクシたちと共にある以上、ナオホさんの最初の話の通り、これからのことを話し合いますわ! すなわち……ハビリ様とのおエッチをどのようにしていくかですわ!」


「ちょ、将軍!?」


「「「「「わー、賛成~ぱちぱちぱち~♪」」」」」


「とりあえず、一週間の予定にした場合、妻のワタクシはまず毎日、朝と夜を担当しますのでそれ以外はあなた方が空いた時間に――――」


「「「「「卑怯です! それは不公平です!!!!」」」」」


「ムキー、何ですの! 妻のワタクシが大半を占めるのは当り前ですわ!」


「い、いい加減にしてください将軍! せ、せめて……副官である私が毎朝というフォーメーションで……」


「「「「「ナオホ副官ッ!?」」」」」


 

 いずれにせよ、俺の記憶を失う前はとんでもないクズだったかもしれないが、これからはこいつらと共に―――





――あとがき――

絶妙な切り抜き記憶喪失

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