第69話 新たなる人生の幕開け

「ばかなぁ、こんな、女共に……お、俺たち、最強のトラレッタ海賊団が……」


 若干薄気味悪いがしっかりとした作りの帆船。

 広い甲板には呻き声をあげた数十人の男たち。

 そして、俺とナオホさんの前でズタボロの姿を晒す巨漢の船長。


「オーッホッホッホ、キューピッドや他のペガサスたちが飛んだり走ったりで疲労困憊でしたので、船で皆で移動というのはナイスアイディアですわぁ~! おまけに強奪ではなく、海賊たちから没収というのであれば、な~んにも心が痛みませんですわぁ~」


 そう、移動に伴いペガサスたちも流石に働き過ぎで疲れが見え、ならば皆で海上をゆっくり移動しながら、今後のことを考えながらノンビリしようという話になった。

 そして俺たちのしたこと、それは船の調達を……海賊からしちゃえばいいという大胆なものだった。


「ふん、弱いな人間の男どもめ。私のハビリ殿とは天と地の差だな」

「ハビリお兄さまぁ~、私も頑張りました~、へうぅ、撫でて下さるとうれしいですぅ~」

 

 最初は海賊たちも「魔族。しかし上玉の女たち、ヤッちまえー」みたいな感じだったが、勝負は一瞬でついた。

 セフレーナは一切手出しせず、セフレーナ女騎士団たちだけで屈強な海賊団は一人残らず全滅した。


「ほうほう、お宝もありますわね~。ふむ、まあまあの宝石もありますし、しばらく路銀には困りませんですわ。それにしても、あなた方、随分と悪いことをしていましたのね~」

「ぐぅ、何しやがる、この、クルクル髪のメスブタがぁ! くそ、離せぇ、くそ、犯してやるぅ!」

「おーっほっほっほ、残念ながらこのワタクシのパーフェクトボディにおエッチなことをできるのはこの世でハビリ様だけなのですわ~」


 海賊を狩る……と言っても簡単なことではないと最初は思ったが、意外とアッサリとデカい船と色々と持っていた海賊団と遭遇して狩ることができた。

 最初は海賊や盗賊に身を落とすのは……と、騎士である彼女たちにも葛藤はあったかもしれないが……



「なるほど、これが海賊の帽子……おーっほっほっほ、皆さん、今日からこのワタクシのことは将軍ではなくキャプテンとお呼びなさい!」


「「「「「了解です、キャプテン!!」」」」」


 

 セフレーナ自身が意外とノリノリだった。

 聞いたところ、これまでかなりの箱入りで育てられていたようで、外の世界でこうやって冒険のように自由に生きることに憧れていたりもしたとかなんとか。

 海賊帽子とそれっぽい黒いコートを羽織り、機嫌よさそうにセフレーナは笑った。


「どうです、似合いますでしょう、ハビリ様」

「はは……ああ……キャプテン」

「んも~、ハビリ様はワタクシのことは名前で呼んでくださいですわ。そうですわね、今後は夫婦らしく……ええ、そうですわ! 新たに生まれ変わった意味も込めて、今日よりワタクシのことは、『セフレ』とお呼び下さいですわ! ね?」

「ふ~、分かったよ……セフレ」

「はい! ワタクシはハビリ様のセフレですわぁ~♥」


 そして俺に抱き着いては、幼い少女のようにウキウキしてはしゃぎ、何だか幸せそうだったので、俺ももうそれでいいやと思うことにした。


「では、将軍……いえ、キャプテン、この海賊共はどうします?」

「ん~? そんなの決まってますわ~。ワタクシとハビリ様の愛の巣に邪魔なゴミは不要……海に捨てるのですわ~!」

「御意」

「「「「「ちょっ!?」」」」」


 それでいて、セフレーナ……いや、セフレは容赦しない。ま、相手はかなり悪いことをしている海賊のようだから、俺も庇う気はないが……


「くそぉ、テメエら、覚えてやがれー!」

「ぎゃああ、くそぉ、魔族共―!」

「俺たちの船を返せー!」


 セフレの指示に従い、ナオホたちも容赦なく海賊たちを海に投げ捨てていき、そして後は俺たちだけになり……



「さあ、皆さま、いえ野郎共さんたち、今日よりワタクシたちの新しい人生の始まりですわー! 今日よりワタクシたちはセフレーナ女騎士団改め、セフレ女海賊団ですわー!」


「「「「「おーーーーっ!!!!」」」」」


「はぁ……どうしてこんなことに……もう仕方ないが……」



 俺たちの新たなる人生ん幕開けだと宴が始まり……


「というわけでお祝いに、おエッチですわー、ハビリ様ぁ!」

「あっ、ずるいー、私も―!」

「ハビリお兄さま!」

「ハビリくん!」

「ハビリさん、お願いしますであります!」

「私たちしかいないし、よし、脱いじゃえ~」


 そして、周囲には海しかなく俺たち以外に誰もいないような世界。

 山の中よりもさらに開放的になった皆が一斉に全裸になって俺を――――



「って、ちょっと待であります、大変であります、キャプテン!」


「?」



 と、そこでまた皆でイチャイチャが始まるかと思ったが、船の中を見回っていたプニィが慌てて飛び出してきた。

 その手には新聞が握られ……



「先日の帝都での私たちの戦に関する続報であります!!」


「「「「「ッッ!!??」」」」



 その瞬間、皆の表情が強張った。

 俺たちが出会って、俺が皆を助けて記憶を失ったとかいう戦争について。

 確か話では、帝都で悪魔みたいな奴らが現れて大敗したとか……



「記事によると、大敗した魔王軍の体制を立て直すため、謹慎中だったイーディー将軍率いるオーク軍が超法規的措置で派遣され、残党を回収して再び帝都へ攻め入ったと」


「あら、イーディーさんですの?」


「なんと……イーディー大将軍が……謹慎中にも関わらずに派遣……大魔王様も苦渋の決断であったか?」



 俺にはよく分からんが、相当ヤバい将軍なのか、ナオホさんたちも息を飲んでいる。 

 だが、プニィの話はそこで終わらず……


「そ、それが……そ、そのぉ……」

「プニィ?」


 プニィが顔を青くし、そして激しく震えている。

 何だ? 何が書いてあるんだ?

 すると……



「それが、……そのイーディー大将軍が……半日も経たずに討ち取られたそうであります!」


「「「「「え……?」」」」」


「さ、さらに記事によると、屈強なオーク軍もほぼ全滅……容赦なく徹底的に魔王軍は蹂躙され……それを行ったのが、軍人ではなくまだ卒業もしていない魔法学園の生徒たちとか……」


「「「「「ッッッ!!??」」」」」


「特にイーディー大将軍を一騎打ちの際に四肢を切断して臓腑を生きたまま抉り出してから殺した、『闇の堕天勇者ネメス』を筆頭に、同じ人類ですら戦慄する戦いぶり、容赦ない冷酷ぶりから、その若者たちを新聞では『地獄の悪魔世代』としていますであります……」


 

 悪魔? 

 帝国に、そんな奴らが居るのか?

 勇者なのに堕天? 一体どんな奴らなんだ?


「ま、マジ? イーディー将軍死んだ? マジ?(あたい、転籍前で良かったぁ~~~~)」

「ひう、そ、そんな怖い人たちがいたなんて……」

「でも、僕たちが手も足も出ずに負けたのは、決して僕たちが弱かっただけでなく……」

「うん、異常な連中がいたってことね」

「よく分からないけど、これで六星が崩れた……その地獄の悪魔世代というのを筆頭に、人類と魔王軍の戦争は大きく揺れ動くことになりそうね」


 いずれにせよ、これで世界の流れは大きく動くことになる。

 一方で……



「とにかく、そんな危ない連中の居るような帝都にワタクシたちのハビリ様を帰すわけにはいきませんわ! ええ、ハビリ様は帝国から遠ざけることにしますわ!!」


「「「「「異議なし!!!!!」」」」」



 うん、俺もなんか怖そうだから、帝国には帰りたくないや。

 このまま皆と生きていこう。



「では、ハビリ様! 早速宴ですわ! さて、選択肢……オッパイ祭り、お尻祭り、ペロペロ祭り、それとも合体祭り……どのお祭りがハビリ様はご所望ですの?」


「う~ん……じゃ、じゃあ……全部?」


「「「「「やーい、エッチ~♥ でも、お任せあれ~~~♥♥♥」」」」」



 こんなに皆が愛してくれるのだから。






――あとがき――

次話で一旦章を区切ります。最後までよろしくお願い致します。

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