第67話 みんな愛して
俺は俺が分からない。
何かにうなされて目を覚ました俺の視界には、多くの美しい女たちが居た。
彼女たちは全員魔族だった。
しかし、誰もが俺の目覚めに喜び、涙し、抱き着いてきた。
そこから何が何だか分からなかった。
俺は自分が誰なのかよく分からなかった。名前はハビリというらしいし、帝国に居たそうだ。
そう、『帝国』とか『魔族』とか『魔王軍』とか『戦争』とか、そういう知識はあるのに、俺は自分のことが分からなかった。
サキュバスのサイイン曰く、俺は彼女たちを守るために無理をして重傷を負った。
そこから生還するために無理をしたので、記憶の混濁があるようだと。
今はただ、彼女たちの手厚い看護を受けながら休むように言われた。
今後の身の振り方や、俺を帝国へ帰すこととか、もう少し落ち着いてから話をしようと。
ただ、落ち着けば落ち着くほど……
「っ、はあはあ……つ、俺は……」
混濁しながらも俺はある記憶がよみがえる。
それはまずは……
――ハビリ様ぁああああん♥
――ハビリ殿ぉぉぉお♥
――ハビリさ~~~ん♥
――ハビリく~~~ん♥
――ハビリお兄様ぁぁ♥
俺に手厚い看護をしてくれた彼女たちにしてしまったこと。
ハッキリと覚えている。
「うぷっ」
「ぬ? ハビリ殿、どうされた?」
「い、いや……ちょっと、川で顔洗ってくる」
「そ、それならば私も一緒に……あ、ハビリ殿……」
もはや怪宴とも言えるほど濃密で淫らで悍ましい乱痴気極まりない交わり。
俺は彼女たちの身体を貪った。
その時の記憶や感触や彼女たちの香りや息遣い、何もかもを鮮明に覚えているし、俺はそれに興奮して誰かれ構わず目の前の女を手当たり次第に貪った。
彼女たちは笑顔で俺に「大丈夫」と言ってくれたが、ほぼ全員が「初めて」だった。
それなのに俺は……
それに、それだけじゃない。
それよりももっと……
――い、いやだ、やめろぉ、たのむ、小生はもう……うう……わ、わんわん!
――ぐっ、殺してください……このような屈辱……う、うう……ぶひ、ぶひぶひ!
小川で俺はそのまま川に飛び込んだ。
「う、うわ、うわああああああああああああああ!!!!」
記憶の奥底で、二人の女が泣きながら抵抗するも、俺がその傍らで笑っている。
嫌がる女たちを悪魔のような笑みで凌辱している。
アレが俺?
俺は一体何なんだ?
「う、うう……俺は……俺は一体……」
川に飛び込んで冷たい水を全身に浴びてもまだ思い出せない。水面に映る自分の顔を見ても思い出せない。
しかし、思い出したら俺はどうなってしまうのだ?
また、悪魔のような俺に――――
「へ、へうぅ?! は、ハビリお兄さま……きゃっ」
「わ、は、ハビリさんでありますか……あう!」
と、そこで俺はハッとした。
そこには、二人の小柄な魔族の少女が裸で水浴びしていたのだった。
「あ、あああ、す、すまん、『リロ』! 『プニィ』! い、いたの気づかなくて……すぐ出ていく」
「あ、へう、ま、待ってくださいィィ!」
「そうであります、待つのです!」
慌てて出ていこうとした俺だったが、二人の少女は二人がかりで俺の手を引っ張って止めた。
「あのぉ、ハビリお兄さま……別に、リロは気にしないです……もう、リロはお兄さまに全部を捧げましたし見られてますし……えへへ、むしろ一緒がいいです。お体洗われるのならお手伝いします」
そう言って俺を兄と呼んで優しく微笑むのは、セフレーナ女騎士団の中でも一番の年下で新人のリロ。
俺の腰元ぐらいの身長しかない小柄な少女。
虫すら殺さなそうな優しく可憐な微笑みと、少し恥ずかしがり屋なところもある、空色の髪の魔族の少女。
行為の最中から俺を逞しいとか何とかで「兄」と呼ぶようになり、そのまま日常でもそう呼ぶようになった。
「そうであります、今更恥ずかしがるような間柄ではないのであります。む、むしろ、わ、私たちはラッキーだとか、なんとか、えっと、あうう、であります!」
そして同じくリロのように小柄で、少々恥ずかしがり屋なリロとは対照的に元気で大胆な、薄緑のショートの髪をした少女のプニィ。
リロと同じ歳で女騎士団で一番年下の二人だった。
魔族と人間では年齢の概念が違うとはいえ、俺は容姿だけなら明らかに俺より年下にしか見えない二人を、他の女たちと一緒に変態的な行為に及んだ。
「だめだ……って……俺なんかが……」
「へゥ……お兄様は……もう、私たちの体に……飽きてしまったのですか?」
「それとも、私たちのようなツルペタでは欲情しないでありますか? 迷惑でありますか?」
と、拒否する俺に不安そうな顔を浮かべて泣きそうになる二人。
そんなバカな。
「そんなわけないだろ! こんな可愛い二人に……だから、その、危ないって……」
「ふぇええ!? かわ、い……え、えへへ……かわいい、お兄様……っ、で、でもそれなら……あの、もう私たちは、お兄さまにそういうこと、し、してもらいたいな~って、あ、へう、治療です!」
「えへ、も、もう、それなら私たちを拒否しないで欲しいであります。サイイン先輩からもしばらくはハビリさんは副作用に苦しむから定期的に相手をするようにと、セフレーナ様もそれの許可は取ってくれてるであります! これも恩あるハビリさんへ報いるため!」
二人は蕩けるような笑みを俺に向け、俺から手を離さず引き寄せ、「そういうこと」を俺とすることに何の躊躇いも無い様子。
だけど……
「恩とかそんなのやめてくれ! 俺は二人が、みんながそんなふうに体を張って治してもらえるような立派な奴じゃないんだ! きっとそうだ、俺には分かる! 俺には醜い悪魔のような本性が眠っている……だから……だからぁ!」
だからもう、俺なんかのためにそういうことをしないでくれ。
俺はそう叫んでいた。
だけど……
「そ、そんなこと、ないですぅぅう!」
「ないのでありますぅぅぅぅ!」
と、そのとき二人が俺を強引に力づくで引き倒した。
「んちゅ♥」
「ちゅっ♥」
―――ッ!?
浅瀬で尻もち着いた俺に、二人が同時に左右から頬にキスしてきた。
「ハビリお兄さまは素敵な人です……分かっています。記憶を無くす前、魔族である私たちに情けを……戦争中だというのに私たちを助けて下さり、そして記憶が混濁する前も私たちのためを想って、私たちを穢さないとかそういうことを仰って、苦しみながらも拒絶して……そんなハビリお兄さまに……私たちは一目惚れしたんです、お慕いしたんです、だから、全然穢されるとか、そういうことないんですぅ!」
「そうなのであります。人間は敵。男はクズ。そう私たちは思っていたであります。しかし、ハビリさんが私たちを救ってくださったとき……私たちは……あの逞しさ、雄々しさ、男らしさ、そして優しさに惹かれたであります。恩とは言いましたが、恩のためだけでなく、私たちは自分の意志で、したいからしているであります」
と、二人とも泣きそうな表情で必死に俺に想いを伝えてきてくれた。
違うのに。
きっと本当の俺はもっと……
「そ、それに……は、ハビリお兄さんが本当は、す、すごい、え、えっちな方でも……そ、それはむしろ、私たちは望むところといいますか……へう、むしろ、う、嬉しいと言いますか……んちゅっ、ちゅ♥」
だが、そんな俺を黙らせるように、リロは頬から今度は唇にキスをしてきた。
「うぅ……その、わ、私は……その、へうううう、白状しますぅ! ほんとうは単純にお兄様にえっちなことしてほしいっていうのもあるんですぅ!」
と、裸で本当はすごく恥ずかしいだろうに、まだまだ未成熟な身体を俺に押し付けて肌をくっつけてきた。
その懸命に恥ずかしいことを白状するリロに、俺は思わず笑ってしまった。
「は、はは……リロのエッチ」
「ふぇえええん、えっちでごめんなさい~~」
でも、何だか心が温かく、かわいかった。
そして……
「そ、そういうことでありますので、え、遠慮無用というか、か、カモンベイベーであります!」
と、自分も居るのだと主張するようにプニィも反対側から艶っぽい息を漏らしながらくっついてきて、そんな二人の気持ちにくすぐったい気持ちになりながら、何だか救われたように―――
「なななな、何をしているゥ、リロ、プニィ、あ、朝からハレンチでけしからんことをぉ!」
「「「わっ!?」」」
「ままま、まったく、ハビリ殿の様子が気になって来てみれば……ま、まったく」
と、そこで声を荒げて顔を真っ赤にして、副官のナオホさんが乱入してきた。
「ふぇえええん、ナオホ副官~」
「こ、これは、違うであります! あ、あくまで治療の一環で―――」
慌てて起立してアタフタするリロとプニィ。
するとナオホさんは……
「ま、まったく、ほ、ほんとうにけしからん、うんうんけしからん……」
「「うう、ごめんなさい」」
「し、しかしだ、こ、コホン、うん、ハビリ殿の治療はぁ、その、うん、処理的なのは必要なわけだから……」
と、生真面目な態度で部下を律するナオホさん……かと思えば顔を真っ赤にしながら俺に近づき……
「し、しかたない、私がハビリ殿のお相手をさせて頂こう……ちゅっ♥」
「ッ!?」
「「あーーー、副官ずるいですぅ! わ、私たちも!!」」
そして、三人に一斉に押し倒される俺。
――♥♥♥♥♥♥♥♥
結局戻ってくるのが遅いと他のみんなも駆けつけて、そして最後は……うん
――あとがき――
さて、帝国と女騎士団どっちのハーレムが良いかなぁ?
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