ループした悪役かませ炎使いが真面目に生きたら女勇者パーティー全員が痴女になってしまい世界はピンチ！？

第64話 炎の脱出

　熱い。焼ける。炎の使い手である俺が？　アレ？　力も入らねえ……

「ハビリ様……嫌ぁあああ！　ハビリ様ぁあ、ワタクシのハビリ様がぁあ！」

　うるさいな……なんかセフレーナが……アレ？　俺、倒れてる？　力が入らねえ。

「っ、何だこいつ！？」

「おいおい、待てよコイツ……人間？　何で人間がここに！」

「知るかよぉ、くそ、邪魔しやがって！」

　ああ、そうか……俺、刺された？　刺されたのか！？　こいつらに……

「ぐっ、貴様ら、何を―――」

「おっと、動くんじゃねえよ、ナオホ副官！　もうここは完全に包囲してんだからよ！」

　ハッとした副官さんが怒って剣を抜こうとする。

　だけど……

「きゃあ、いやぁ、なに！？」

「ちょ、あなたたち、なんなの！　いや、いやぁ！」

　いつの間にかドカドカと他の兵たちまで入って来て、戸惑う女騎士たちに武器を向けて圧をかける。

「こ、これは……お、お前たち……」

「恨まんでくださいよぉ、ナオホ副官。これはもう俺らの総意なんだ。どーせ、お飾りの無能な騎士団ゴッコのあんたたちじゃぁ、この局面をどうにかできるとも思えねえ。だったら、さっさとあんたらの首を手土産に降伏しようってことさ」

「な、なん、だと、貴様らぁ！」

「おっと、動くんじゃねえ！　お仲間たちの綺麗なお顔をズタズタにされたいのかぁ？」

「ぐっ、う、……」

　完全包囲で抵抗する間もなく武器を添えられて成すすべない副官さんたち。

　嗚呼……このまま……

「へ、へへ……そ、それにしてもよぉ……無能な連中でも実際……マジでイイ女ばかりだよな……セフレーナ女騎士団」

「「「「ッッッ！！？？」」」」

　だが、その前に、下衆な醜い欲にまみれた誰かの呟きがその場に響き、他のモンスター兵たちも急に気持ちの悪い笑みを浮かべて鼻息荒くした。

「どうせよ、こいつら殺すんだろ？　げへへ」

「ああ、だったらよ……なぁ？」

「そうそう。俺、今日は帝国の女共を犯しまくれると思って、メッチャ溜めててよぉ……へへ」

「セフレーナ将軍もナオホ副官も……一回ヤッてみてーと思ってたんだよなぁ！」

　嗚呼、そういう発想……アレだな……

「「「「ヤッちまえええええ！」」」」

　俺だわ……

「ひっ、ちょ、何しますの、あなたたち！　無礼もの、このワタクシに触れるなど許しませんわ！」

「き、貴様らぁ、そ、それでも武人かッ！　誇りはないのか！　恥を知れ、ぐっ、やめろぉ！　くっ、殺せ！」

「ひいい、やめてください、放してえええ、いやああ、わ、私、いやああ！」

「お願いします、やめてください！　わ、私、まだ処女なんです！」

「助けてええええ！」

　女を無理やり……嗚呼……人がやっているのを見ると胸糞も悪くなって……ソードとマギナへ償いするはずが、なんやかんやでこの世界でも色んな女と関係持っちまって……

「女は犯さず、口説いてから抱きやがれぇえええええ！！！！」

「「「「ッッッ！！！？？？」」」」

「自炎乙（じえんおつ）・武羽痲乱（ブーメラン）」

　いや、本当にお前がどの口がって話だけど……

「ハビリ様ッ！？」

「なっ……」

　ってか、俺は何のために戦ってんだ？　いや、普通にセフレーナが六星なら首刎ねて終わりなのに……やばい、相当俺はアホなことしている……

「な、なんだこいつ！？　ぐわあああ！？」

「ほ、炎の刃が飛んで、ぎああああああ！？」

「こいつ、死んでないのか、っ、何て力？！」

　でも、なんか助けちまった。

　目の前のモンスター共を切り裂いて、俺は敵の総大将を助けちまった。

　くそ、どうせなら本当に醜いクソみたいな性格のオークだったらよかったのに……

「なんだ、本陣から……」

「炎が！？　うわ、あっち、近寄れねえ！」

「おい、あいつら、ちゃんと将軍の首を刎ねたのかよ！」

　外にはまだ無数の反旗を翻した兵たちが居る。

　とりあえず、そいつらを近づけねえように……

「炎壁（ファイヤーウォール）魔火賦威（マカフイ）！」

　まず、この本陣を囲むように炎の壁を作り上げる。

　やべ、今のでかなり意識が……

「ハビリ様ぁ、嗚呼、傷が……ハビリ様ぁ！」

「くっ、っ、貴公、どうして……」

　泣きじゃくるセフレーナに、戸惑う副官さんに、そして犯される寸前だった女騎士たち。

　どうして？

　俺が知りたいよ。

　ただ……

「へへ……俺が……美人な女たちに滅法弱いアホで良かったな……」

「「「「「ッッッッッ！！！！？？？？」」」」」

　俺がアホだった。もうそれだけだ。

　すると……

「将軍……とにかく、今は脱出しましょう。……この人間を連れて……」

「そう、ですわね」

「我々も逃げながら、とりあえず全軍に撤退と降伏を。どこまで生き延びれるかは分かりませんが……我々の身の振り方は、とりあえずこの場を離脱し、そしてこの人間の怪我を治してからですね」

「分かりましたわ」

　そうか……ってか……俺まで救うか……義理堅いやつら……

「おい、サイイン。お前の治癒能力でこの人間を。お前の血を飲ませばそのような傷は治るであろう」

「あ、ああ、分かったっす……」

「姫様、キューピッドを今すぐ逆召喚します。他の者たちもダークペガサスを用意し、全員離脱する」

「分かりましたわ！」

「「「「「承知ッ！！！！」」」」

　こうして俺たちは混乱の中で……

「……あっ、そういやあたいの血を飲んだら……怪我は治るけど、人間なんかが飲むと副作用で精力がバカヤバになるし、頭がけっこうパーになって記憶も混濁するし、最悪記憶失うんだけど……まっ、いいか」

　こうして俺、セフレーナ、そして副官含めたセフレーナ女騎士団、合計二十人。混乱に乗じて脱出に成功。

　ただし、俺が帝国へ戻ることは無かった。