第60話 緒戦の勢い
「うおおおお、大正門を破壊したぞォ―ーーあべし!?」
「げへへへ、殺せぇ―――ぶぎゃばぁ!?」
「溜まってたんだ、死ぬほど人間の女共を犯してやらぁ――ぐひゃ!?」
「皆殺し――――ぶけばぁ!?」
と、数秒前まで息巻いていた異形の魔族の集団。
しかし、その先陣が一気に空へ飛ぶ。
「な、なんだぁ!?」
「おい、今、先鋒の部隊がぶっとんだぞ!?」
「なんだ、誰かいるのか!? いや、何だ……3人?」
その最前線の防衛ラインで迎え打ったのは、俺、ソード、ネメス。
そして……
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお、我らが戦友に続けぇええ、殺せえええええ!!!!」
「「「「「ウーラーッッッ!!!!」」」」」
本当なら勢いよく雪崩れ込もうとしていた魔王軍も、俺たちに一瞬怯み、そしてその怯みにこちらは荒くれた奴らが走り出した。
「ウラぁぁ、死ねやクソ蛆虫魔族がぁ!」
「殺せぇ、ぐははは、首刎ねろぉ!」
「容赦すんなぁ、ミナゴロシダぁ!」
「我らの魔法で灰塵となるであります!」
それは魔王軍以上の荒々しい鼻息で、数百人の魔法学園戦士たちが、狼狽えて足を止めた魔王軍へと次々と襲い掛かる。
「ひっ、なんだこいつら!」
「ちょ、ま、なんだぁ、ぐふぇああ!?」
「ぬ、や、野郎! 足を止めるな、やっちま―――ぶぎゃっ!?」
まずは先手を取った。
相手の戸惑いに対してこちらが勢いで飲み込んでいった。
「お、おお、なんと、すごいぞ、あの若者たちは!」
「ぐっ、こ、皇帝陛下の御前であるぞ! 若者の雄姿に我らだけ見ていることなど許されぬ!」
「そ、そうだ! 我らも続けぇえ!」
「「「「「ウオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」」」」
さらに、最初は怯えていた兵たちも、陛下の参戦や、魔法学園戦士たちの序盤の勢いに高揚し、一斉に皆が武器を手に走り出した。
「魔極神流・豪乱打ァ! そらそらそらァァァァ!! ぷはっ、もう、何なのよぉ、皆して! すごいじゃない! こりゃ、私も負けられないわ!」
「神聖魔法・バフルンデース!! さぁ、皆さん! 私の魔法で皆さんの攻撃力や防御力を一時的に向上させました! 存分に!」
更に、こっちは他にも一騎当千の猛者もいて……
「うおおおお、チオちゃん、オラたちも加勢に来たぞォ、べらぼーにやってやるあァ!」
「さあ、力を見せたるえ!」
「「「「「うおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」
さらに、他にも援軍が駆け付ける。
胴着に身を纏ったチオの道場の猛者たち、さらに……
「負傷した方々は私たちの下へ!」
「ネオターショ教会シスターたちで回復チームを結成しました!」
「可愛い男の子たちを守るため、私たちも死力を尽くします!」
後方支援の部隊も結成された。
「おおおい、どけぇ! 何をしておるかァ! どかんか雑兵共ォ、ワシが直々に相手してくれるわ!」
「貧弱な帝都民共に、我ら魔族の力を思い知らせてくれる!」
「ウホ、早く犯すウホ」
と、その時だった。
たじろぐ魔族の先鋒たちをかき分けて、何かが来た。
デカい……
「お、おおおお! 来てくれたぞ!」
「サイクロプス部隊の三人の巨戦士長だ!」
「たのんます、隊長! あいつら踏みつぶしてくださいッ!」
巨大な足音を響かせて、門の向こうから、まるで巨人のような一つ目の怪物が三体も現れやがった。
慄いていた魔王軍の兵たちの表情にも笑みが戻る。
どうやら、相当名のある奴らなんだろう。
さらに……
「オーッホッホッホ、開戦ですわ~! 伝説の幕開けですわ~! さぁ、今こそ帝都の陥落の時ですわ~!」
上空から声。
黒い天馬や、グリフォン、さらにはガーゴイルたちなど翼の生えた魔族やら騎兵やらが城壁の上の空に出現した。
門からだけでなく、空からもってか。
いよいよ本格的に戦争って感じだ。
だが……
「ギガ・サンダーストームッッッ!!!!
――――――――ッッッッ!!!!????
突如、帝都の上空を激しい超暴風と雷が鳴り響き、上空に居る全ての敵を容赦なく撃ち落としていく。
そこには……
「うるさいハエたちが居ますねぇ……ですが、さっさと本命のオーク軍を呼びなさい。この戦いが終われば……うひ♥ ぐひひひひ♥」
いつもはクールに済ました顔……いや、最近はそんなことないけど、とにかく興奮の笑みを浮かべているマギナが城壁の砲台として、大魔法を振るっていた。
「ぬ、なんだァ!? 城壁の上に強力な魔導士でもいるのか?!」
「兄者、面倒だ。こいつらブチ殺して城壁登って魔導士殺すぞ!」
「嗚呼、早く犯してぇ! 犯してぇよぉ!」
その状況に現れたばかりの巨人サイクロプスたちも驚愕するも、すぐに切り替えて何をすべきかを口にする。
だけど……
「野郎共、ワシらに続け! このサイクロプスの英雄がぶりゅら―――――――あで?」
次の瞬間……巨人サイクロプスの一人の頭が粉々に吹っ飛んだ。
「……ダマレ」
それをやったのは、鮮血を浴びながら冷たい目で剣を振るったソード。
現れた巨人サイクロプスの誰かさんを名乗る前に殺した。
「な、あ、……兄者ァあああ、お、おのれ、ぶぎゃぶあ!?」
そして、目の前で顔面が粉砕されている状況を理解できていないもう一人のサイクロプスだが、その隙を……
「殺せるときに僕は殺します」
ネメスが剣でサイクロプスの首を刎ねた。一閃。
それは俺が知る、前回の「優しいお人よしの勇者」とは一変した、残酷な冷たい目をしたネメス。
あいつ……ソードの訓練やこれまでのことで闇落ちしてね?
いずれにせよ……
「ふぇ? ど、どーした! 友! どうした! 一緒に人間どもを犯すって……おいいいいい!」
残る一人のサイクロプスも激しく取り乱し、その状況に他の魔王軍たちも盛り上がりが失せ、顔面を蒼白させて停止。
ならば俺も容赦なく。
「燃え尽きろ」
「!?」
「蒼炎大炎上ッッ!!!!」
「ブギャアアアアアアアアアアアアっ!!??」
燃やし尽くす。巨人サイクロプスも、そして正門で固まっている魔族共も容赦なく、燃やし尽くす。
「な、う、うそだああ!」
「ば、ばかな! あの歴戦の猛者である三人の巨戦士長が、う、嘘だァ!」
「ど、どうなってんだよぉ! 帝国には、た、大した戦力はいないって……」
「ひ、ひいい!?」
こうなれば、攻め込んできていたはずの魔王軍たちも怯え、先鋒の部隊はみっともなく慌てて逃げ出そうとする。
しかし、
「逃がすなァ! ソルジャーたちよぉ! 蹂躙せよぉ!」
「「「「「ウオオオオオオオオオオオ、殺せぇえええええ、魔族を殺せえええええ!!!!」」」」」
「ななな、なんだこいつらー!?」
ソードの指示に従い、魔法学園戦士たちが一斉に、逃げ出した兵たちを後ろから蹂躙していく。
「ひいい、たす、け、俺は、帰ったら結婚―――ぷがや!?」
「いやだー、死にたくない、俺にはマダ――ばが?!」
一切の容赦も慈悲もなく、冷酷に狩り取っていく。
「ふぁ、はは……何とも……何とも痛快ではないか! 悪魔のごときこの強さ! 何とも頼もしき者たちよ! ブドーやエンゴウたちにも見せたかったぞ! この頼もしき次世代たちを!」
もはやこの状況に、後方の皇帝陛下も笑うしかなかった。
そう、誰の目にも明らか。
緒戦は俺たちの圧勝だ。
だけど……
「さて……坊ちゃま……今は小生らのペースですが、このままではいかぬでしょう」
「ソード……ああ……」
「あ~、小生は詳しくないのですが~、まったく分かりませぬが~、こういう大軍には必ずそれを率いる本軍があり、大将軍とやらがいるでしょう。その将が率いる豪傑たちこそ本命でしょう(実際、あのオーク軍が雪崩れ込めば、勢いだけではどうにもできん。ま、頭は小生がぶっ潰せばいいだけだがな。ぐひひ、六星のイーディーさえ殺せば……坊ちゃまとのスーパードスケベライフの開幕だ)」
「だろうな。六星かもしれねーなー、いったいだれなんだろーなー(棒読)」
ソードの言う通り、まだ戦は緒戦。
そして本命は屈強で百戦錬磨のオークの兵たち。
あいつらが前へ出てくれば、戦況は―――
「きゃあああああああああ、だれかああああ、ワタクシを助けるのですわ~~~~~!!!!」
「「ん?」」
「そこの人ぉ、ワタクシを受け止めるのですわァああああああ!!!!」
「え? サーイエッサー! ……え?」
上空から突然の声。
見上げると、空から誰かが降ってきた。
恐らくは、マギナの魔法で撃ち落とされた騎兵?
いずれにせよ、命令されたことで俺の体は勝手に反応するが、流石に直前過ぎた、ぶつかる!
「な、ぼ、坊ちゃまぁ!」
「いや~~んですわーーーー!」
まず、ぶつかる! ってか、かわいい、美人、女の子? イイ女! 耳尖ってる魔族、角もある、魔族の女、胸もなかなか、髪の毛クルクルロール!? 太ももも尻もムチムチで良し! スカートの下は紫のパンツで魅惑のぉおおおって、ヤバい!
「ぎゃん!?」
「ふげっ!?」
俺はどうしようもできず、ただ、空から降ってきた魔族の女とぶつかり、そのまま勢いよく二人でゴロゴロ地面の上を転がり。
「がはっ!? むちゅっ……!? ……ッッ!!??」
「あん! ん、ぶちゅっ………? ……ッッ!!??」
えっと、どういう状況だ? 突如空から降ってきた女とぶつかり、そのまま地面を転がって壁に激突した俺が目を開けると……
「ぬわああああああああああ、ぼぼぼぼ、坊ちゃまぁァああ!!??」
「せ、先輩ィいいいいいい!?」
「ちょ、わ、エロエロ先輩、何やってんの!?」
「ハーくんが、ハーくんがァ!?」
皆の悲鳴のような声も聞こえる。
うん、なんか俺……今……すごい状況……
転がった勢いで、偶然俺は魔族の女の胸に右手を添えて、左手が何故かスカートの中の紫パンツの中にまで侵入して、そして……
「あっ、ん! ……あ……え? えええ!? ど、どどど、うぇえ!?」
「あ、いや、あの……事故で……」
女とキスまでしていたのだった。
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