第55話 永劫

「世界が黄色く見える」


 こんなことは前回の人生以来だ。

 休日の日に朝から晩、そして翌朝までぶっ通しでソードとマギナに対して性的な凌辱のみしかしなかったとき。

 俺自身も骨の髄まで発散して枯渇寸前になるほど二人を穢した。

 今の俺はそんな気分だった。


「……ここは……」


 目を覚ました俺の視界には見知らぬ天井。

 そして……


「起きたんでちゅね、ハーくん♥」

「御館様、おはようございますでござる♥」


 雌の顔で微笑んでいるヴァヴミィとイチクノ。

 そうだ、俺はあの後……


「うふふふ、マーマにおはようの挨拶は?」

「……っ、テメエ……」

「んもう、そんな口の利き方は……めっ、でちゅよ?」


 思い出した。

 俺たちは昨日、からっからになるほどこのベッドで……ん? そういえば……


「薬の効果かが切れて、俺は元の姿になっているけど……いつまでそんなゴッコ遊びしてるんだ?」


 薬で幼児化した俺を壊すほど愛でてきたヴァブミィ。イチクノも。

 しかし、今の俺は元の姿。

 それなのにヴァブミィは変わらない態度。


「私の可愛いハー君が『たまに大人』の姿になる……ただそれだけのことでちゅよ?」

「……い、いや……この姿が本当の俺なんだけど」

「たしかに、マーマは寂しいでちゅ。この姿のハーくんは反抗期でちゅから」

「いや、だから……」

「でも仕方ありまちぇん。マーマもどうにかして大きくても素直でイイ子なハーくんになってもらおうと、『ツルツルにした』んでちゅけど、駄目でちたね」

「……え?」


 ツルツル? 何を言って……いやっ!


「ッ!? ちょ、お、おい、まさか!」


 そのとき、俺はようやく気付いた。

 寝起きで気づかなかったが、体中がスースーしていることを。

 それは、俺が服を着ていない裸だから? それだけじゃない。

 俺はベッドのシーツを捲って自分の姿を見ると……



「んなっ!? あ、あ……あああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!??」



 俺は「首から下の毛が全て」無くなっていた。


「我が流派に伝わる永劫脱毛の術でござる……」

「え……脱毛……えいごう……永劫ッ!?」

「永劫でござる」

「えええええ、ええ、いえい、えい、えいきゅうっうううううううう!!??」


 目をキランとさせてサラリと頷くイチクノ。

 永久? ちょっと待て、永久ってどういうことだ! まさか……


「ちょ、ま、まて! お、俺、永劫って、まま、まさか、い、一生!? 一生!?」

 

 腋毛も、胸毛も、その他の「首から下の毛全て」が永劫脱毛!?


「ざ、ざ……ざけんなこらあああああああ! て、テメエ、よ、よりにも、よって、なな、なんてことをぉお!?」

「んもう、いけないでちゅよ、ハーくん。イチクノお姉ちゃんとマーマは、ハーくんの汚いお毛毛を処理してあげたんでちゅから……はぁ~、いけないハーくんでちゅねぇ」

「なな、は?! ふざけんな、テメエ、何で!」

「おっきいハーくんは、乱暴でエッチも暴走したらすごかったでちゅ……あ、子供姿のハーくんも正気を失ってからのアレも……えへへ♥ んもう、マーマ恥ずかちいでちゅ♥」


 顔を赤らめてクネクネするヴァブミィ。

 たしかに、俺は意識が飛ぶ寸前、もう責めに耐え切れずに精神と肉体が分離したかのように荒ぶった記憶がある……が……それはそれとして、こいつら俺が意識を失っている間にそんなことをしたのか!?

 しかも、話が通じない。


「イチクノ、よりにもよって、お前まで!」

「申し訳ないでござる、御館様。しかし、これからそのお体は姫様と何百回と交わるもの……衛生面を考えたらこれがむしろトレンドであると判断させて頂きましたでござる」

「だからって、この年にもなって、つ、つんつるりんとか、ふざけんなぁああああああ!」


 これはもう謝って許せるようなもんじゃない。

 俺の怒りは最高潮。

 さらに、あの一週間の地獄の鍛錬の疲れも、寝たら回復したのか、鍛え抜かれたものが研ぎ澄まされている感じだ。


「ぬっ!?」

「まぁ!?」


 この今の俺の漲るものを感じて、流石にイチクノもヴァブミィも顔色を変える。

 そう、こんなふざけたオママゴトを続けることなど――――――



「坊ちゃまああ、御無事でえええええ!」


「うふふふふふ、ようやくご主人様の波動を感じ取りましたよぉ!」


「ハビリィいいいい! イチクノぉおおおお!」


「先輩ィいいい! 僕が助けに来ましたよぉお!」


「このエロエロ先輩ィいい!」



 と、そのとき、空間が歪んで転移魔法でソード、マギナ、トワレ、ネメス、チオの五人が凄い形相で……いや……ほんとごめんなさい……



「「「「「ふぉっ!?」」」」」



 そして五人は裸の俺を見て……



「「「「「つ、つるつるぅ!?」」」」」


「……………」


 

 え? そこ? 驚くところソコ?



「はい、私とイチクノさんで剃りました」


「姫様もこの方がよいかと……」


「「「「「剃った!? か……か……かわいい! グッジョブッ!!!!」」」」」



 え? いいの? それはいいの? 五人は悦に浸った顔で……だけど……



「「「「「……で?」」」」」



 いや……


「この状況、きっちり説明してもらおうか?」

「一体どういうおつもりです? 二人とも」

「イチクノぉ~? 私ィ~イチクノは別にいいって言ってたけどぉ、抜け駆けはダメだよぉ?」

「先輩……うう、僕たちにコレだけ心配させて何してるんですか!」

「そうよ、このエロエロ変態先輩、ちゃんと説明しなさいよ!」


 そんな甘くはなかったか。笑顔から一転して、五人の目が座った。非常に禍々しいオーラを放ちながら。

 こ、これは……


「え、えーと、シスター・ミィ、イチさん! 私たちはこれで~」

「それじゃあ、またね、ハーくん!」

「ばいばーい」


 って、そういえば昨日ドサクサに参加してたシスターの姉さんたちもまだ居て……しかし、この状況にビビッてそそくさと逃げやがった。

 まずい、これは……


「まあ、そんな怖い顔をなさらないでください。ただの母と子のスキンシップです」

「拙者は、少々珍見しただけでござる」


 と、二人は取り繕うが……そんな雌顔で言われてもまるで説得力が……


「はうわッ!?」

「うわ、そ、ソード?」


 そのとき、ソードが驚愕の表情でガタガタ震えだした。

 その視線の先には……あ……



「こ、この血は……」


「「「「あっ!!??」」」」


「あら」


「ぽっ♥」


 

 ベッドのシーツに染みついた血痕。

 それは……




―あとがき―

ラグビーのニュージーランド代表が試合前にやる儀式は?

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