第52話 一緒に

 小さい姿にされてイチクノに連れ去られるように帝都から少し離れる。


「ここまでくればもう大丈夫でござる」

「ははは……おう、ありがとな」

「はうッ!? ぐっ、めんこい……」

「ん? なに?」


 今は使われていないという修道院の元・寮まで逃げてきた俺。

 ここまでイチクノに抱っこされたままで恥ずかしい。

 っていうか、改めてイチクノに抱っこされて感じるのは、手足は非常に引き締まっている感じが伝わってくるのだが……む、胸が……


「……そ、そろそろおろしていいぞ?」

「かわい……え? いえいえ、いついかなる獣が来るか分からず危ないので、拙者がお傍で抱きかかえたままでおりますでござる!」

「あぷっ!? ぎゅ、ぎゅって、するの、く、くるしい!」

「……あぁ……お館様……」


 結構胸がデカいのな、イチクノ。

 っていうか、今までトワレの側近としてしか見ていなかったけど、イチクノの格好……全身は紺を基調とした忍び装束。ふとももを露出して、短いスカートのようなもので……紐の青いパンツがチラチラと……胸もなんというか、布一枚で覆ってるだけで、横乳見放題で、ようするにエロい!

 長い青髪を後ろで束ね、口元はマスクで覆っているが、まず間違いなく美人の部類。

 そして、初対面のころはクールな印象が強かったが、今こうして傍にいる俺に対してものすごい熱視線というか、息が荒いというか……


「ったく……意外と勝手なことするんだな、イチクノは」

「ぬ? いえ、決してそのような……」

「イチクノは、トワレに怒られていいのか?」

「……はい? い、いえ、これも姫様を想ってのことでござる」

「そっか……」


 このままではなんか俺も気分的にまずい気がして、俺は雑談で気分を誤魔化すようなつもりで話題を振った。

 ただ、口を突いて出た言葉ではあるが、こういうタイミングでないと聞けないこと……


「っていうか、イチクノって何歳なんだ? あんまり離れていないように……」

「拙者は19でござる」

「……おお……少し上だったか。じゃあ、トワレにとってもお姉さんみたいな感じか?」

「……昔は……もっと幼いころは、そんな関係にも似ていたでござるが……今では拙者はお側付でそれ以上でもそれ以下でも……」


 お姉さん的な……年齢は俺よりソードやマギナとむしろ近いって感じか……。

 とはいえ、ただの部下っていう感じではなく、クールぶっていてもちゃんとトワレのことを大切に想っているんだなということは態度や言葉の端々から伝わってくる。

 今回のことも……

 だから……


「トワレもさ、姫とはいえ魔法とかそういうのの才能あると思うんだけど……」

「?」

「イチクノもさ、護衛としてだけでなく、トワレを鍛えるとかそういうこと考えないのか? これから先の時代……どうなるか分からないんだし……今、この国には精鋭が居ないってのもあるし、万が一の時……」


 前回、イチクノとほとんど関わりのなかった俺は、トワレが死んだ後の世でイチクノがどうしたのかは知らない。

 でも、ひょっとしたら後を追って……



「……確かに……そこはお館様の言う通りでござる……姫様には才がある……それどころか、成長次第ではブドー王子同様に、勇者にすらなれる器と拙者も思っているでござる」


「……だよな?」


「拙者も時折、王子にその進言はしたでござる。姫様に指南する任もと……しかし、姫様自身にその気がない以上、半端に力をつけて半端に戦場に出るぐらいなら、最初から戦わない存在として後方で民を鼓舞する存在としてあり続けられる方が良いとの結論になったでござる」


「……あ~……そ、そうか……」



 俺も同じようなことも考えていた。トワレにも戦力の一人として強くなってもらうことより、無駄に前に出て危険な目に合って死ぬかもしれないのなら、今回は後方に……と……だから……


「俺も頑張るけど……いざというときは、あんたに本当に頑張ってもらわないとな」

「無論でござる」


 今回は俺も隠れてないで、戦うべき時は戦う。

 だが、それでもどうなるか分からない。

 だからこそ、イチクノには本当にトワレに付きっきりで守ってもらわないと。



「姫様は拙者が何に変えてもお守りするでござる。そして、いずれお館様との間に生まれる御子様の教育係もさせていただくのが、今の拙者の夢でござる」


「……そっか……」


 

 力強く、そして頼もしさも感じるイチクノの言葉に、少し俺は安心した。

 この世界、奇跡の黄金世代連中は色々と前回よりも問題がありそう中、前回あまり知らなかったイチクノは頼りにできそうだということが分かったから―――


「そして、拙者もお館様とまぐわって、姫様の御子様と腹違いの兄弟姉妹を生むのもまた拙者の今の夢の一つでござる!」

「……そそ、そ、そう、か?」


 これは本気なのだろうか?

 確かにイチクノとスルのはトワレも公認的な感じだったけども……


「うむ……おお、そういえば……拙者もせっかくの機会ですので―――」

「ん~?」

「お館様が姫様と交わる前に、その肉体やら性技を一度毒見ならぬ珍見をさせていただきたいと思っていたでござる」

「……ん?」

「お館様は何だかんだで童貞とお聞きしているでござるが……あのソードとマギナのような変態臭漂う女と交わって、歪んだ性技を身に着けて姫様を穢される前に、拙者と勉強会を兼ねて―――」

「うぇ、あ、ちょ―――――」


 真面目な話だったのに……次の瞬間、イチクノが口元のマスクを外し……あっ、やっぱり美人だ……でも、胸も急にボロンとはだけさせて、何と柔らかそうな―――


「ちゅっ♥」

「んむっ!?」


 両手で顔をがっちりと挟まれて、有無も言わせずに俺の唇を塞いで……!?


「んむううううう!?」

「ふむ、うむ、うむうむ、正しいキスを覚えねばでござる♥」

「ぷあっは?! なな、なにするんだよぉ!」

「はうっ! か、かわ、い……はあはあはあはあ、いやいや、これは姫様のため……姫様が体験する前に味見するは拙者の任でござる♥ そう、念のため、やはり子供姿も大人姿も両方味わ……こほん、珍見せねば♥」

「うぇ……ぇ……え! ちょ、ま、まて、あ、だめええええ!」


 いかん、やっぱこいつ、危ないやつ!?

 クールだったはずが急に鼻息荒くして、俺の服を脱がしにかかる、ってか、もうそっちは半脱ぎ状態!?


「さ、大人しくするでござる、お館様! オナゴを抱く技術を学ぶも男の務めでござる!」

「いや、ま、俺、そういうのは、た、だめだってばぁ!」

「ふふふ、嫌よ嫌よと申しながらも体は正直でござるぞ? 恥ずかしがるようでは、一国の姫を孕ませられませぬぞ? 拙者が存分に練習相手に―――」

「だ、だ、わああああ! やめろぉ!」

「いくら騒いでもここには誰も――――」


 なんか、もう、普通に拉致監禁する強姦魔のようなセリフにしか聞こえないんだが!? 

 しかも子供の姿だからジタバタしても逃げられない!

 まずい、このままでは――――




「私の子に何をなさっているのです!!!!!!」



「ッ!?」



「……え?」




 その時だった。

 巨大な十字架のブーメランが飛んできて、イチクノに直撃しそうになった。

 イチクノが慌てて回避しながら、声の方向へ顔を向けると……



「私の子……可愛い坊やに手出しする不届き者には神罰を……あぁ……ハーくぅん♥ まーまの、はーくぅん♥」


「ぬっ、そなた、何故ここに!?」


「う、わ……」



 …………すっごい目が病んでいるシスターがそこに立っていた。

 





――あとがき――


イチクノはムッツリ


『ループした悪役かませ炎使いが真面目に生きたら女勇者パーティー全員が痴女になってしまい世界はピンチ!?』

https://novel18.syosetu.com/n0125ia/



あい、こっちもよろしくお願いしますぅ~~~

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