第6話 誇り高い
屋敷に戻り、そして俺の目の前にはソードとマギナの二人。
奴隷として俺に買われた不幸な二人。
今、二人は何を思っているんだろうか?
(ちっ、やはり歴史通りマギナも購入されたか……まぁ、良い。坊ちゃまは二人同時に奉仕される方が好きだったのは事実……マギナも居ると後々便利ではあるしな)
(それにしても、ご主人様は私を買うか迷っていましたのに、ソードも前回と同じで居たのですね。まぁ、いいでしょう。日常で私たち以外の女の相手をしてご主人様の精力を消費させないよう、きっちりガードしていただく必要がありますからね)
(いずれにせよ、真人間になられたかと思ったが、マギナも買ったあたりやはりスケベ目的であろう! ならばよし! 今宵より、ドスケベライフの開幕だ! 常日頃から不浄の穴まで全て清潔にしておいてよかった♥ 今日はきっと両手を頭に乗せて両足をガニ股に開いての求愛ダンスを無理やり覚えさせてからの無理やり合体♥ 小生振り付けは完璧に身についているが、しばらくは初心者の振りで恥ずかしがったりの演技もしないとな~♥ うぇへへへ♥)
(さあ、まずは昔を思い出して処女喪失も含めて快感に悦びましょう。今日より私の新たなる人生、全てを受け入れての、メスブタライフの幕開けです! まずは心を無にした無表情の私を御主人様はキスされます……私のファーストキス……それを御主人様は舌先で唇の周りを舐め回し、鼻の穴まで舌を捻じ込んで、そして口を懸命に閉じている私を酸欠にさせて耐え切れずに口を開いた瞬間に、舌を口内に……♥ その後は、花びら鑑賞会! ゴロンとベッドで仰向けになって、菊の花も丸見えに♥)
きっと、傷ついているんだろうな。
だけど……
「まず、そこまで畏まる必要はねえよ。奴隷として買っといてどの口がって思うかもしれねえけど、俺はお前らの身体をどうこうする気はねえ」
「「はい、どうぞ召し上がっ……って、うぇ!?」」
「いや、そんなに驚くなよ……あと、だからスカートの裾を下げろ、パンツ見せんな……」
改めて俺は何もしない宣言をするが、こいつらは俺に今から抱かれると思っていたのか、自らスカートを持ち上げて……くそ、ムズムズするけど我慢しろ、俺!
「いや、坊ちゃま、それはどういうことでありましょうか! 小生らの身体に何か不服がありましょうか!?」
「体は綺麗に洗っています! 今すぐにでも私の花畑の鑑賞やら、全穴ダンジョン突入できますよ!? ご主人様、一体どうなさったのです?! まさか本当に頭の打ち所が!?」
むしろノリノリのような……いや、これはきっと俺の反省しきれてねえ願望みたいなもんだ。
俺は誓ったんだ。
「ああ……そうだな。頭を打ったからかもな……いずれにせよ、俺はお前らに奴隷としてじゃなく……その……もっと普通の……」
「「……愛人? 妾? 便器?」」
「ちげーよ! 何でそんな単語出てくるんだよ! とにかく、俺はそういうことしねえ! だからお前らに仕事を押し付けることもしねえ! 首輪もすぐに外すから、自由に生きろよ!」
「「え……ええええええええええええ!?」」
「生活費とかも何とかするから……つっても、所詮は小遣いだし、さっきメチャクチャ使ったから親父にまたおねだりだけど……とにかくそのつもりでいて欲しい。こことは違う場所が行きたければ協力するし、もし学校に行くってならいくらでも協力する……だから……もう自分たちが奴隷とかモノだとかそういうふうに思わないで欲しいし、俺みたいなクソ野郎に心を殺してまで身体を差し出す必要はねえ」
いずれにせよ、こうしてこいつらを手元にしてしまった以上は何としても今後の生活の責任を持たねえとな。
(な、ななな、なんということだ!? 坊ちゃまがこれほどの真人間になってしまうとは?! いや、これはこれで良いのだが……し、しかし、小生が望むのは体の相性抜群の坊ちゃまとのドスケベライフであり、正直それ以外のことはあまり……)
(こ、これは予想外です。私はただ、また坊ちゃまにメスブタ調教していただきたい、奉仕をしたい、いじめられたい……ただそれだけだというのに……これでは私のメスブタライフが……まだ私は正式にブヒとも鳴いていません!)
(大体普通のと言われても……御父上殿や兄上殿さらには『黄金世代』たちの助力で奴隷の身分から解放され、普通の生活や英雄の生活を体験し、その上でその普通が物足りなくて退屈で……だから小生は坊ちゃまとのドスケベライフが小生の真の幸せだったと気づき、それを望んで前回は追いかけたというのに……とにかく、少しでもスケベを……!)
(いけません……それにこのままでは、ご主人様は私を調教どころか抱く気配も……それでは何のためにループしているのか分かりません! しかし今の様子では……この状況を打破するのであれば……!)
すると、二人は一瞬何か物凄く唸るように考えたように見えたが、すぐに顔を上げ……
「であれば、坊ちゃま。たとえば、小生が自分の意志で坊ちゃまにお仕えする奴隷になりたいというのであればいかがでしょう?」
「私もメスブ……ご主人様の奴隷として、そして貴方様に女として抱かれたいと望んだ場合はいかがでしょうか?」
……あれぇ? このパターンは考えてなかった? え? 俺、好かれている? いやいや、好かれる要素ゼロだし……あ、そうか……
「お前らは誇り高い奴らだからな……だから……何でも世話になるだけの『施し』みたいなのは耐えられないのかもしれねえけど、そんな遠慮はするな」
「「いや、ちがっ!?」」
「それに俺はお前らとそういうことする資格というかつもりはねえ。何だったら、お前らに相応しい相手を俺も協力して――――」
こいつらの誇り高さを知らされて、なおさら俺は自分のかつての小ささや醜さを突き付けられる。
だから俺は……こいつらが身綺麗のまま……あとはあの勇者の野郎に全て託し―――
「父上、少し休まれます? 何だったらお茶でも……僕も久しぶりの実家ですし」
「いや、着替えを取りに戻っただけだ。すぐに宮殿に戻ろうぞ。お前もそうであろう?」
そのとき、玄関から声と気配が聞こえ、それが誰なのかすぐに分かった。
「ッ……親父……兄貴……」
生きている親父と兄貴……
(ふむ、御父上殿と兄上殿か……思えば、お二人が余計なことをして私が坊ちゃまの奴隷から解放されてしまったのだな……この世界では何とかそれを回避せねば……いや、待て、そもそも……)
(あっ……そもそも、お父上様と兄上様が戦争で戦死されたことで、この家は没落し、御主人さまも……あっ、つまり!)
(御父上殿と兄上殿が健在であれば、そもそも坊ちゃまがあんな苦しい末路を贈ることは無かった! 小生らも正気に戻った後は屋敷に戻ってドスケベライフを継続できた!)
(つまり……お二人が死ななければ……そうです! それを防ぐ必要があります! 私のメスブタライフ継続のためにも!)
親父と兄貴の声を聞いて俺は思った。
俺がどんなみじめな末路を送ったとしても、二人が生きていてくれれば、ソードとマギナの生涯を面倒見てくれる。
あの二人は俺に既に失望し、見放し、何よりも戦争やら国のことで忙しくてもう俺に興味もない。
金だけ握らせて、取り返しのつかないことさえしなければ好きにしろというスタンス。
だけど、それでも親父と兄貴の根は真面目だしお人よし。
だからこそ、黄金世代たちにほだされて、ソードとマギナを奴隷身分から解放し、さらに戸籍を持たせた。
もし、二人が生きていてくれたなら、最後の最後にソードとマギナも俺なんかの所に来ることは無かった。
なら、俺のやることは……
(((まずは二人を死なせないように……これは絶対に変えなければいけない歴史!)))
そう思い、俺は本来は親父と兄貴が屋敷に戻ってきても無視してたんだが、気づけば部屋を出ていた。
単純に親父と兄貴を死なせないようにするには、それを意識した立ち回りをする必要があるんだが、そもそもそのために必要なのは……力……
俺は勇者でもなければ奇跡の黄金世代でもないし、魔王軍と戦う軍人でもねえ。将来的にはこんな俺に施しをしてくれた『あの村』にも行って、色々と返したい恩がある。
そのためには、どうしても俺自身がしっかりとした力を持つ必要がある。
前回は、身分に胡坐をかき、身の回りのことや誰かに絡まれそうになったときはソードとマギナが居た。だから俺自身は強くなろうとは思わなかった。
でも、これからはそうも言ってられない。だからこそ、親父と兄貴と向き合って、色々と教えてもらいたい。
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