第9話 文系でもわかる(とはあまり思えなくなった)、多元宇宙論

1.お品書き:未読歓迎

 いつもお読みいただき、ありがとうございます。

 前回に引き続き、本話は『夕方屋と透明な夕焼け』関連エッセイです。ショートVer↓。

 https://kakuyomu.jp/works/16817330650434160708

 このエッセイは本編を書くのにあたって、色々調べたところをブッパするお気楽エッセイです。にわかなので間違いがあればお気軽にご指摘くださいませ。

 引き続き自分は文系なので、不正確であっても数式とか無しでわかりやすい説明を試みたいので、の部分は文系の人用の例示だとかショートカットだと思って下さい。それからわかりやすさを重視して、事実と微妙に異なるところと不自然に説明を削ってるとこ、それから無茶な説明も多いです。

 だから理系の人は怒らないで。


2.ビッグバン理論の矛盾

 多元宇宙論とは、簡単に言えば宇宙と言うのは今いるところ以外にも宇宙はいっぱいあるぞという話。なので、わかりにくいので今いる宇宙を『今宇宙』と呼ぶことにするよ。


 本筋に入る前に前回の復習。

 138億年前に高温高密アツアツのプラズマ状態の宇宙が急に冷えて相転移が発生したエネルギー、熱が発生したのがビッグバン、というところまでば宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測結果からも事実とされている多分定説。


 それではその原初のプラズマはどこから来たのかっていう話です。

 車椅子のホーキング博士はとても有名な人だ。70年代に「一般相対性理論(アインシュタインが考えた時間と空間を1つの理論で説明しようとしたやつ)と現在の宇宙を構成する物質を前提に考えれば、ビッグバンは特異点だ」という特異点定理発表した。けれども発表したものの、ホーキング博士的にはこの「特異点」という理論はピンとこなかった。

 そもそもビッグバン理論自体、色々矛盾は多いのだ。

 よく語られるあれ。ビッグバン以前はどうだったのっていう奴。

 矛盾の多くは前回の話の最後に出てきた、原初の宇宙が最初の短い間で爆発的な展開を見せたと唱えるインフレーション理論等で解消された点も多い。けれどもインフレーション理論にも疑問点は色々ある。

 例えば宇宙の始まりは高温高圧アツアツホットな状態といわれているけどなんで熱いのかとか、インフレーションを引き起こす物質は『インフラトン』という名前のかわいい謎物質とされてるけど、そもそもそれがなんなのとか未解決の部分が多い。

 ともあれ宇宙の原初なんて人智の及ばない創世神話的な話なので、様々な基礎理論の上に打ち立てた仮定にすぎない部分も多いのだ。


 そこで無境界仮説です。

 はい、いきなり理解不能なワードがでたぞ!

 結局のところホーキングは、一般相対性理論では宇宙の始まりを説明できないと指摘する。何故なら、時間と空間の発生を一緒に説明しようとする場合、その両方ともが「無限に存在した」か「ある時(?)特異点から突然発生した」かのどちらかだ。

 ビッグバン理論は「もともと何もなかった」ところから話が始まるから、「無限に存在する」という話にはならない。一方で「特異点がある」ところから始めると、無から有を生じさせる理屈がたたないのだ。だって時間がないところから時間を生み出すんだぞ? 時間がないのに。時間というのは流れるからこそ時間なのです。


 けれどもギューギューツメツメの世界は極小の素粒子の世界で、扱う分野は量子力学だ。このサイズだと「トンネル効果」というものがある。何故かドラえもんで聞いたことがあるような記憶があるのだが、簡単に言えば、ものすごく小さい物質は壁があったとしても、それを超えてワープができる。

 これはファンタジーでも空論でもない。トンネル効果は実証されている。そしてトンネルダイオードとかの半導体の回路で使われてる。

 だから科学者たちは虚時間という概念を突っ込んだ。

 ホーキングは「時間と空間は境界はないけど有限だ」という『無境界仮説』を展開して「宇宙は虚数時間で始まり、ある程度の大きさになったところでトンネル効果で実時間になった」という呪文を唱えた。つまり、


 この時点で説明を若干あきらめている自分がいる。

 虚時間というのはだな……考えるな、感じろ。

 いやまあ、ここは深く考えたら負けだ。本当に。これはなんていうかね、理屈の話で多分『ああ、あれね』ってピンとくる奴は誰もいない。

 虚というものは虚しいものである。例えば虚数というものは習ったことがあるだろうけど、定義は「実数ではない数」だ。実数じゃないんだよ。謎の複素数空間というものにある、同じのを2回かけたら実数になるというわけのわからない数。

 まあそれと同じように、宇宙の最初に実態のない虚しい時間が存在したのだ。自分でも何を言ってるのかわからなくなってきた。

 ともあれそういう理屈で、宇宙が突然インフレてビッグバンしても問題なく説明ができるようにした。虚時間が存在する宇宙の最初は素粒子よりも小さくても問題なくて、トンネル効果によってある時突然、虚時間から実時間にピョコンと転移してきてもを問題ない。

 ……考えるな、感じろ!


3.多元宇宙

 そしてホーキングの超有名な遺言的論文、多元宇宙についてだ。

 ホーキングはその中で、永久インフレーション(カオスインフレーション)説に理解を示している。

 この永久インフレーションというのは、今宇宙ではインフレーションが終わったけれど、その他の宇宙ではインフレーションが今も続いていて、そこでは新しい宇宙がぽこぽこと生まれ続けているという説だ。インフレの継続する大宇宙の中で濃度によって局所的にあらゆる可能性を持つ泡宇宙が発生し、これが様々な物理定数を持つ多元宇宙を展開する、という理論だと思う(専門外なのでちょっと自信がない)。

 まあつまり、ってこと。


 それからもう一つ多元宇宙の大きな根拠になっているのが『人間原理』。

 これは色々な重さがあるワードで、なんとなく人間賛歌とか神プロダクトな論調に行きやすいんだけど、ようは『人間』が存在するために今宇宙は結構絶妙なバランスでクリエイトされてる。宇宙創生で少しでも原子の組成が違うと今の『人間』は存在し得ない。そんな絶妙な超低い確率バランスが発生しうるということこそ、たくさん宇宙があってその一つがこの現在だっていう考え方。

 簡単に言えば、。なんかこの人間が特別という感じはあまり好きではないというか、ご都合主義過ぎる気はするのだが、結構な根拠として挙げられているのだ。

 さて、そんなつまらない話はここまでにして、どんな多次元宇宙があるという理論があるかを適当に取り上げていきます。


 まあ、たくさんの宇宙があるとして、それがどんな理屈で存在するのかという、妄想の殴り合いのようなものだ(怒られそう)。以下は一応理論的な根拠がありそうな物だけ紹介します。空想ではなく実証できない空想科学。


 ブラックホール理論というのがある。

 ブラックホールは特異点だ。自分らがいる今宇宙もブラックホールの中にあって、これ以上ないほどギュウギュウに詰め込まれて高密度になったのが外宇宙にポーンと反転したのがビッグバンであるという説。

 ブラックホールというのは変な場所でさ、ブラックホールは全てを収縮していくから、理論上は密度が無限大で大きさが無限小という変な話になるんだよね。だからブラックホールは跳ね返って特異点になる。それがビッグバンだという説があって、これは宇宙が永遠に膨張と収縮を繰り返すという説だ。

 ビッグ・バウンスというやつ。じゃあその最初は何なんだろうというとまた無限ループに戻るのだが、とりまそんな考え方で、ブラックホールっていうのは今宇宙にもたくさんあるので、乱暴にいうとその一つ一つが宇宙なんじゃないかという説かな。

 的な。


 それからエキピロティック宇宙論。

 これは個人的に異世界転生に親和性があると思っている。

 今宇宙は4次元(3次元+時間)だけれど、今宇宙はそれより上位の次元(ブレーンワールド)上に存在するものだという話。それでインフレーションは今宇宙と他宇宙が接触したエネルギーで起こったっていう理論だ。

 ええと、自分ら(3次元)が絵(2次元)を上から眺めるような構造で高次元が存在して、自分らと同じようなものが並行していくつも存在するんじゃなかろうかという話だ。

 これも一応理屈はあってだな、超ひも理論というのがある。素粒子は点じゃなくて紐であるという理論。意味がわからないよね。裏付けはないものの統一場理論に1番近いといわれている。前回書いたけど、統一場理論というのは4つの力を1つで説明できる理論で、まだできてない。重力子の説明がつかないけれど、これをクリアするために高次元があると考える理論だ。その理論は11次元あれば理屈がつくらしいけど、そのへんの説明は自分には無理なので割愛。

 ともあれこの余剰次元(ブレーンワールド)上に複数の宇宙(世界?)が存在するという考え方なのだが、今のところ高次元なんて観測しようがないので、夢理論の範疇だ。でも世界が11次元なら10の500乗の数の多次元宇宙が発生していることになるらしい。夢は広がる。

 


 基本的には宇宙論や、特に量子論は理屈の世界で言ったもん勝ちなところは大きいと思ってる。結局のところ高度な科学は魔法に等しく、魔法が使える世界は物理定数が違う異宇宙であったとしてもそれほど違和感がない。

 そもそものホーキングの理屈でも、素粒子になればトンネル効果で異宇宙に行ける気がするから、トラック転生するときにブレーンワールド上にいる神様が素粒子レベルで分解してトンネル効果で膜を超えて異宇宙で再構成するという話で無理やり繋げれば、異世界転生はSFになりうるのではないかと思う。その神様の存在が理屈にあうのかというのと転生の時にビッグバンが起こりそうなことを除いて。

 そもそも宇宙論って結局神と戦う話なのだ。


 で、結局異宇宙ってあるのかよっていう問題だけど、現在観測されていないし、どうも観測できるとは思えないのでやっぱり夢物語なん。

 あるのかないのか検証しようという試みはあるんだ。宇宙は泡のようにたくさんあって、昔膨張するときに何回もぶつかったっていう話については、その衝突跡がCMBで観測できれば多次元宇宙を立証できるかも、という話が以前あったけど、結局のところその衝突跡は小さすぎて見つからないだろうという話になってる。技術が進めばそのうち他宇宙にいけるといいなと思ってる。素粒子になる以外の方法で。


6.おわり

 あんまりまとまりませんが、このエッセイはいつもまとまりません。

 わけのわからない話を2話連続で展開して申し訳ありません(陳謝。

 一応夕方屋の話は追って本編外伝で旅するベスさんと夕方屋の話をしようかなと思っている、そのうち。

 ということで次は文系的な話に戻りたい。リクエストがあれば受け付けるかもしれません。

 ではまた。

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