第8話 文系でもわかる(といいな)、ビッグバンの話
1.お品書き:未読歓迎
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
本話は『夕方屋と透明な夕焼け』関連エッセイです。ショートVerとロングVerがあるんだけどショートしかもってきていないな。
https://kakuyomu.jp/works/16817330650434160708
ロングもiランドで褒めてもらったからそのうちもってこよう。
このエッセイは本編を書くのにあたって、色々調べたところをブッパするお気楽エッセイです。にわかなので間違いがあればお気軽にご指摘くださいませ。
それから自分は文系なので、不正確であっても数式とか無しでわかりやすい説明を試みたい。そこで傍点の部分は文系の人用の例示だとかショートカットだと思って下さい。それからなわかりやすさを重視して、事実と微妙に異なるところと不自然に説明を削ってるとこ、それから無茶な説明も多いです。
だから理系の人は怒らないで。
2.ファンタジーとSF問題
さて、僕は実はファンタジーよりSFが好き。なぜかというと1つはファンタジーは面倒くさいからで、2つは単純に好きだから。
ファンタジーが面倒くさいはあんまり同意されないんだけどさ、なんで魔法が使えるのかとか、なにもないと凄く気持ち悪いのです。それでファンタジーを書く時に設定を練ろといわれるけど、基盤がないと書きづらい。というか矛盾が怖い。けれどもSFは現代を基盤とその技術の先のファンタジーなので、SFの方が楽なのだ。
そういえばついでに宣伝。
↓はこのエッセイのファンタジー版。
『ファンタジーにおける知識・内政チート考察 ~チートするにも知識が必要』
https://kakuyomu.jp/works/16817330650219211482
↓うちのファンタジー世界の設定集。
『地球世界からの来訪者のためのPhysics et magicaeガイドブック』
https://kakuyomu.jp/works/16817330649654912634』
それでSFというのは原則、この先の続く未来というところで実現可能な世界というところがまたロマンな感じ。僕のSFはだいたいディストピアで人類滅亡なわけだが。
それで物理学というのは難しいイメージがあるけど、宇宙に関する物理学者は間違いなく狂度なロマンチストの集まりだと思う。使う言葉は上級魔術の呪文のようなもので、彼らは世界の形を決め打ちして俺の宇宙が正しいとか言い争うという夢とロマンに生きている。
その前提で話を進めていくので、文系の皆様は魔法を習ってると思ってくださいませ?
3.ビッグバンとは何か
ビッグバンが発生したのは昔々の大昔のことじゃった。
さて、宇宙はビックバンから始まった、というのは一般的な認識だと思うけれど、実際に宇宙がビッグにバンしたのかっていうのはちょっと疑義はある。
簡単に言えば、ビッグバンが起こったといわれる当時、宇宙はとても温度が高くてギューギューでツメツメの高温高圧な状態で、これが氷が溶けるようにどんどん広がっていくことで現在の冷えて広がりのある宇宙になった、と考えられる。
で、どうしてこれがわかるのかっていう話だ。
大昔の超新星爆発を望遠鏡で観測する、という話はたまに聞くけど、ビッグバンはあくまで理論上の話だ。当然ながら誰も観測していない。
ハッブルの法則というのがある。これは観測に基づく理論だ。
光が遠ざかるとき、スペクトルが長波(赤)にずれていくという赤方偏移という現象がおこる。遠ざかる緑ピーマンは赤ピーマンに見えるとでも思ってればいい。
その前提でスペクトルを観測した結果、宇宙は地球からどんどん遠ざかっていて、その速度は均等であることがわかった。ということは、宇宙はいずれかの時点から広がり続けている。逆説的にいうと、もともと広がるスタート地点があったということだ。それがビッグバンが発生したといわれる場所で、ビッグバン理論の根拠になっている。
そしてそれがいつなのかというのを調べるために打ち上げられたのがプランクという人工衛星。これは宇宙マイクロ波背景放射、いわゆるCMBを観測するために打ち上げられたものだけど、これによって膨張の開始が138億年前と計算された。
CMBが何かの説明は正直沼だ。だから少し遠回りをしよう。
宇宙というのは電磁波で満たされている。電磁波というのは光(可視光線、X線、赤外線等)も電波(ラジオ短波、長波等)も含む概念で、CMBも含まれる。すごくライトで質量の軽い奴らだ。これらが働くワールドは『電磁気力』って呼ばれてる。まあつまり電気も磁力も光も同じようなもの。
それで1965年のことだ、ペンジアスおじさんとウィルソンおじさんが、この電磁波が宇宙のどの方向からもやってきてるってことに気が付いた。なおこのおじさんたちは後でノーベル賞を受賞している。
4,世界をつくる4つのもの
唐突に話が飛びます。
世界ってなんでできてると思う?
アインシュタインは一般相対性理論というもので、この宇宙と世界の理、つまり重力という力によって『時間と空間』が何かを一つの理論で説明しようとした。ファンタジー風に言えば空間魔法の基礎理論を作って世界の全部を把握しようとした。
けれども世の中には重力以外のいろいろな力がある。
それで、それらいろいろな力を一つの理屈でなんとか説明しようっていう夢が統一場理論だ。まだ実現されていない。世界を統べる魔法だもんな。
それで、世界を構成するいろいろな力は今4つあると考えられている。
さっき出てきた電磁気力っていうのが働いているのが光子(フォトン)だ。この他に弱い力がウィークボソン、強い力がグルーオン、重力が重力子(グラビトン)に働いている。
そっと画面を閉じないで。
頑張ってわかりやすく説明を試みる!
でも現象面から説明するのがいいんだろうか。
重力はさすがにイメージわく……はず。重力っていうのは全てのものに働く力。万有引力ってやつ。
万有引力は誤解されてることが多い。リンゴを地球に落とす力と考えている人も多いがちょっと違って、これは全てのものがお互い引きあっているという考えだ。でもリンゴが地球に落ちてくるのは、地球のほうがリンゴより質量(エネルギー)がでかくて強いから。
だからリンゴも地球を引っ張ってる。ちょっとだけね。
で、どうしてお互い近づきあおうとしているのか、その理由は重力子を交換してるからだと考えられている。それで重力子ってのは質量がなくて、無限の彼方まで届いて、どこまでも力を及ぼすと考えられている。
だからリンゴを引っ張るだけではなく、地球とか太陽とか銀河系とか全てのものは互いに引っ張り合い、全ての動きは関連して宇宙を動かしている。案外壮大な話。まあ小さすぎれば誤差なのだけど。
けれども重力子自体は未だ検出ができていない。
何年か前に原始重力波の痕跡がCMBに見つかったっていう発表があったんだが、今は誤報とわかってる。残念。この辺がLongVerの作中でダトゥワイさんがいってた「原子重力波の検出があと一歩」の部分だけど、実際はかなり遠いと思う。
電磁気力はさっき話した通り電気とか磁力が働く場所。人間の生活の中は重力をのぞいたらすべてが電磁気力の働きと考えても過言じゃない。
理科の授業で水分子が水素原子2個と酸素原子1個がくっついてできてるとか、原子核には電子がくっついてるって習った、と思う。この原子同士をくっつけたり、電子を原子核にくっ付けてる力が電磁気力だ。それでこういったものをくっ付けるのが光子だ。この働きは19世紀くらいにはもう解明されていて、4つの力の中でも一番身近なものだ。現代の科学技術の基礎かしら。
簡単にいえば原子核は電子を捕まえている。
次は強い力と弱い力なんだけど、まあなんていうか、「弱い」力と「強い」力ってネーミングどうよとも思うんですよね。でもこの後も出るけど物理学のネーミングってどうなのって思うの結構ある。
この二つは案外単純で「弱い力」は電磁気力よりだんぜん弱いから弱い力。w,z粒子を交換してクォークとレプトンっていうのに働くんだけど、すっごいちっちゃいミクロの世界の話なので気にしなくていいかも。昔話題になったニュートリノとかはここの話。
「強い力」は逆で、電磁気力の100倍くらい強い力。これはグルーオンを交換して陽子とか中性子をくっ付けるもので、この辺は量子色力学とかいうニッチな世界なのでやっぱり気にしなくていい。核融合をしてみたいなら考えたほうがいいかも。
で、重力子以外はすでに観測できてるんだ。
それで電磁気力と弱い力については統一的な理論がすでにできている。で、今の研究はこれに強い力を纏めようっていうのが、大統一理論ってやつで、これはまだできてない。なんていうのかな、無属性魔法を極めようとしている試み?
で、肝心の重力もいれちゃえっていうのが超大統一理論(やっつけっぽい名前)。これができれば、つまり「4つの力が解析できればビッグバンがおこせる、かも」。
なんとなく三銃士みたいだ。
無属性と空間属性を掛け合わせて次元魔法を作ろうとしているのではないかという無茶振りな印象操作をしてみる。
5.ビッグバンの前に起こったこと
ビッグバンが起こったのは今は多分定説になっている。
ただしビッグバン以前がどうだったのかってのは、色々だ。
とりあえず以下の説明はそれ以前がどうかとかは考えず、ある時宇宙が発生して、そっからビッグバンが始まったという前提の話だ。
高温高密のビッグバン以前の状態。そこはプラズマの世界。
プラズマ状態のものというと、太陽、オーロラ、それから雷とかはプラズマといえる。
温度が高いと液体は気体になる。
さらに気体の温度を上げると分子がバラけて原子になる。それでも温度があがると、原子核の周りにふよふよ漂ってる電子が原子から離れて+イオンと電子に分かれる。これは電離というのだけど、電離で生じた気体をプラズマっていう。
それで高温高密のビッグバン以前の宇宙の最初の状態はプラズマだ。この状態をクオークスープともいわれる。原初のスープと言うやつ。
いろんなものがぐちゃぐちゃに混ざってて、さっきの4つの力も混然一体としていた。それが宇宙が始まってから10(-43乗)秒までの世界。この時点で最初に重力が分離した。
この時点で既に単位が意味わからないよね。ようするに、めっちゃ短い間。
で、そっから同じくらいめっちゃ短い時間にインフレーションというのが起こる。
このめっちゃ短い時間に宇宙はめちゃめちゃでかくなった。そこで断熱膨張という現象が起きたんだ。
断熱膨張というはペットボトルロケットがわかりやすい。
ペットボトルにお水をちょっと入れて空気入れでシュコシュコ空気をいれるんだ。そうするとペットボトルの中の圧力がどんどん増えて、中の温度が上がる。で、ピョーンと飛んでくと急激に中の圧力が下がって、ペットボトルの中が急激に冷えて水滴ができたり雲ができたりする。
これと同じことが我が宇宙で起こった。
宇宙の外側がペットボトルの容器と考えよう。なお、宇宙の外側が何とかは次回の話にまわします。宇宙の内側がめっちゃ熱くてギューギューだったのに、膨らんで飛んでって、中身が広がって急にめっちゃ冷えたのです(あくまで例だから、理系の人おこらないで)。
こういう急激な変化を相転移っていう。
そうすると潜熱が放出される。うーん、大分違うけれど、気化熱の逆Verと考えるとひょっとしたらわかりやすいかもしれない。気化熱は夏に打水するときに涼しくなる現象。水を水蒸気にするときに熱が奪われる現象だから全然違うけれども、物の性状が大きく変わるときは熱も動く。で、相転移によってものすごい熱が発生した、それがビッグバン。まあかなり適当なことを言っている自覚はある。
なお、本編では物理法則と物理定数(ようするに、世界の前提条件)が異なる二つの世界がぶつかって穴が開いてまじりあうことで、大きな差異が生じて相転移が発生したという裏設定にしてある。どちらがめっちゃ熱くてどちらがめっちゃ寒かったのかはわからないけど温度というものは相対的なものだろう、きっと。
で、ここまでは本当なのかどうだか見解が分かれる話だけど、ここから後はわりと共通見解的な考えになる。
6.ビッグバン後の世界
そもそもがかなり端折った説明なので、うん、まあ……いいか。
それで宇宙が誕生してから1秒経過するまでに、少し前にニュースになってたヒッグス粒子がどうとかハドロンがどうとか難しい話が出ている間に、他の3つの力もいろいろ分離(端折る)する。
ようするにこの短い期間にいろんな力や原理が独立して、そのなかでも強い力とかが色々働いて、陽子とか中性子とかができて、1秒経過したころから20分後くらいにかけて、原子核が合成されるようになって、重水素とかヘリウムとかリチウムができた。
で、そっから38万年たった。急に単位がでかくなったな。
このころに「宇宙の晴れ上がり」がおこる。ネーミング!
晴れる前は曇りというのが適切なのかもしれない。
プラズマは、ようは電子が自由にふよふよしている状態なわけだ。それで電磁力のところでも書いたけど、電子と光は同じようなものだ。電子がうろうろしてると光はまっすぐ動けない。いっぱいいて、すぐにぶつかるから。
凄い大人数でドッジボールしてて、外野から内野にボール(光)返したいんだけど、敵チーム(電子)が間でふよふよ動いてるから直線でボール返せないみたいな。
ところが原子核というのは電子を捕まえる。電子を捕まえて原子になる。
ビッグバン以降、たくさんの水素やヘリウムの原子核が作られるうちにどんどん電子が捕まっていく。ケードロみたいだな。
そうすると自由にふよふよしてる電子が減る。それでようやく光はまっすぐ進めるようになった。ドッジボールだと敵の内野が減ってボール返しやすくなった状態?
つまり宇宙は晴れて光が差し込めるようになった。これが「晴れ上がり」だ。
それで、晴れ上がった直後から動き始めた光は今も動き続けているんだけど、宇宙って膨張してるからさ、波長はどんどん伸びてって、この時の光は今はマイクロ波という波長が長いものになってる。
ようするにこれがCMBだ、遠回り長かった。
それでこれは138億年も前から宇宙を走り回ってるわけだから全方向からやってくる。
それで晴れ上がる前の宇宙は「暗黒時代」と呼ばれてる。光が進めないからな。
それで晴れ上がって宇宙が『透明』になったと表現されてることがある。
だから、夕方屋のつめた瓶は透明だったりするのだけれど、さすがに説明を作中で展開する予定はないんだけど。だれか気づいてウケてくれたら楽しいな的な希望。
6.おわり
あんまりまとまりませんが、このエッセイはいつもまとまりません。
そういえば関連する話をゆっくり連載中の「君と歩いた、ぼくらの怪談」の5章と6章で展開視する予定です(未UP)。
https://kakuyomu.jp/works/16817330649666532797
『ベスさんは地球が存在する宇宙αの境界でタキオン粒子による超高速航法から顕在化する際、重なり合う多元宇宙から同様に顕在化しようとした「何か」にぶつかり、それまで不顕在だった物理法則及び物理定数の異なるの2つの宇宙の外縁が顕在化し、その接触により二つの世界間で相転移が開始され、これによって宇宙αの外縁に波及する小規模なビッグバンが開始したが新谷坂の超時空的なアレであっという間に収束し、事なきを得た』という裏設定になっております。
ということで次はこの続きの多次元宇宙論の話です。リクエストがあれば受け付けるかもしれません。
ではまた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます