第15話 「パーティーを組むんだよ?」

 招集状。

 これはギルドが冒険者を呼び出す際に使われる。

 内容としては緊急性の高いクエスト、身分の高い人間からの指名、トラブルが起きた際の事情聴取など様々だ。

 が、俺は毎日のようにギルドには顔を出している。

 加えて繋がりのある職員もいるだけに緊急性の高いクエストなら呼び止められる。または家に直接伝えに来るだろう。

 トラブルの事情聴取に関しては、俺がトラブルを起こした覚えもなければ、巻き込まれた覚えもないだけに可能性は低い。

 となると誰かしらにクエストで指名を受けたか。

 そう思いつつギルドに訪れると、受付嬢のひとりに応接室へ通された。


「お、来たな旦那」


 出迎えたのはお偉いさんや貴族ではなく、受付嬢のリナだった。

 こういう時はアイネが説明役の場合が多い。

 とはいえ。

 リナは言葉遣いこそ綺麗ではないが、親しくもない相手には受付嬢らしく喋る。素を見せるのは知り合いまたは機嫌が悪くなった時だけ。能力的にもアイネに次ぐレベルなのは間違いない。

 なのでアイネに別の仕事がある際はリナに担当が回される。またはリナがアイネから仕事を引き継ぐ。そういうこともあるだろう。

 というか、これまでにも何度かあった。

 それだけにこの場にリナが居るのは気にすることではない。

 問題なのは……


「クロウ、久しぶり~」

「こんにちは、クロウさん」

『クロウ、ようやく会えた。今日こそ逃がさない。逃げるの禁止』


 カーミヤ、リクス、エルドナ。

 今日までにクエストとして交流のあった訳アリさん達も出迎えてきたからだ。

 俺と同じAランクであり、他所で活動していたエルドナだけなら彼女も指名されて招集が掛かった。そういう予想も出来る。

 しかし、カーミヤやリクスはBランク。

 Cランクになれば冒険者としては一人前。それだけにBランクにもなれば、指名されてクエストを行うこともあるだろう。

 だが今回の場合、俺やギルドという存在を介さないとこのメンバーに繋がりというものは存在しない。

 いや俺の知らない時間で交流があった。または前から顔馴染みだった。その可能性は否定できない。

 けど、だからといって……

 このメンバーが同じクエストに指名される。そんな可能性がいったいどれくらい存在するだろうか。


「さてと……役者も揃ったわけだし。さっそく説明を始めるか」


 ぜひ、そうしてくれ。

 ギルドから説明を受けるのが、最もこの場の謎を解明する近道。


『ようやくクエストが終わって帰って来れた』

『でもクエストに行く前からクロウとは顔を合わせてない』

『だから今日はその分も合わせていっぱいお話する』

『クロウ、聞いてる?』


 ……だから、うん。

 俺は、目の前に次々と浮かんでくる文字とか気にしない。

 すごく構ってアピールをされているけど、全力で無視してリナの話を聞くぞ。

 と思ったのだが……


『えぇい、鬱陶しい! 黙って話を聞け!』


 人の視界を塞ぐように大量に飛んでくるものだから。

 それに対する苛立ちと反撃の意味も込めて、文字魔法で銀髪エルフの顔面に言葉を叩きつけてやった。

 すると無表情だった顔が少しばかりムスッとしたものに変化。

 バカみたいに文字魔法を飛ばしてくる可能性も考え、対応できる準備を密かに行ったものの……結果的に言えば、銀髪エルフは意識を俺からリナへと向けた。

 自分が冒険者であり、この場に何のために呼ばれたのか。

 それくらいの自覚は持っていたらしい。だったら最初からそうしてくれ。


「今日このメンツに集まってもらった理由なんだけどよ。簡潔に言うと、このメンツ

でパーティーを組んでもらいたいんだわ」


 このメンツで?

 パーティー?

 え、何で?


「まあギルドに呼び出されて、急にパーティーを組めとか言われたら驚くのも無理はねぇ。だからギルドが何でそういう判断を下したのか。それを簡単に説明するな。まずはこいつを見てくれ」


 リナが俺達に配ったのは、高ランクモンスターによる被害件数や被害場所。それがギルドのクエストとして登録され、どれほどの割合で消化されているのか。それらに関するデータが書かれている資料だった。


「それを見たら分かるだろうが、大陸のあちこちで危険度の高いモンスターの目撃情報が増えてる。それに伴って被害件数も比例して増加。幸いこのへんはまだその地域には該当してねぇんだが……」


 資料を見る限り、遠からずこの周辺にも同じ現象が起きるだろう。


「何かが起きてから対策を練るわけにもいかねぇ……が、そっちも体感的に分かってるとは思うが現状のままだと高ランクのクエストが増加した場合、それを消化できる冒険者の数が不足してる。一人前扱いされるCランクやBランク、ここまでならそこそこいるがAランク以上ともなれば極端に減る」


 確かにCランクやBランクならこの街を拠点にしている冒険者という括りでも3桁は確実に超えてくる。

 が、Aランクともなると数十人……いや、他所からの指名やクエストで長期的に遠征している者を考えれば、この街に常駐していると言えるAランク以上は10数人といったところだろう。

 その中に人外レベルの力を持つSランクオーバーの冒険者が居るなら慌てる必要もないわけだが。

 そんな冒険者は大陸全土で考えて数十人存在しているかどうか。

 この街にもかつては該当者が居たわけだが、リナから先日遠い国で邪竜を討伐したという話を聞いたばかり。この街を出てからどこを拠点にして活動しているのか不明なだけにこの街の冒険者としてカウントすることは出来ない。


「だからギルドはAランク以上の冒険者に伸びしろのありそうなBランクの冒険者の面倒を見てもらい、高ランククエストをこなせる人材の育成を頼むことにした」


 なるほど。

 俺の記憶が正しければ、カーミヤはパーティー規模ではあるがAランク間近と評価されていた。一緒にクエストもこなしたため、ちゃんと努力をすればAランクでもやっていける腕前があるのは分かっている。

 リクスに関してはわずか2年で駆け出しからBランクまで上り詰めたエリート。クエストで関わったのは日常的な部分だけだが、立ち振る舞いから相応の実力があるのは見当が付く。

 エルドナの戦闘力はSランクに匹敵するため、護衛兼指導役の冒険者は彼女ひとりでも良いのかもしれない。

 が、エルドナの体質やコミュニケーション方法によるトラブルはどう頑張っても起こり得る可能性がある。

 それを少しでも低くするために俺が補助でつけられたというところか。


「どういう経緯でこのメンツになったかというと……ぶっちゃけ訳アリで固めただけだな」


 マジでぶっちゃけたな!


「まあでも、カーミヤさんやリクスさんのマッチング相手の希望はランクが自分と同等。もしくはそれ以上……可能ならクエストで交流したクロウの旦那」


 おいお前ら。

 さらっと俺のことをマッチング相手として希望してやがったのか。

 お前らにはお前らみたいな訳アリさんの相手をしないといけないからパーティーを組んだりするのは無理。

 そういう解釈のできる話をしていたはずだよな。なのに何でこういうことになってるんだよ。

 酒癖最悪ゲロ女、何を今更とぼけた顔をしているんだ。

 おっぱいの付いたイケメン、お前は堂々とこっちに笑顔を向けるな。

 少しは悪びれろ。俺に対して申し訳ないことをしました。反省していますってアピールをしろ。


「エルドナさんに至っては……パーティーを組むならクロウの旦那としか組まない。旦那が関わらないパーティーは断固お断り。そんな熱い想いをギルドには語っていたわけだし、理由はどうあれ不満はないと思うんだが」


 あるよ! 不満大ありだよ!


「あたしは別に良いですよ。女の子同士ってのは気が楽ですし、Aランクを最短で目指せるチャンスですから!」

「ボクも構いません。女の子だけなら大丈夫な気がしますし」

『わたしも大丈夫。クロウが居るなら問題なし。後輩の育成も先輩の務め』


 だろうね!

 お前らは自分が望んでいた条件でパーティーを組めるんだもんな。

 でも俺は?

 そのパーティーを組むうえで俺側の意見が一切聞かれていないんですが?

 酒癖が超絶悪い奴。

 恋愛絡みでトラブルが多発していた奴。

 暴力を振るうことに快感を覚える奴。

 そんな奴らの面倒を見ろと言われている俺の感情は考慮してもらえないんですか!


「良かったな旦那。今日からハーレムだぞ」

「まったく良くない」

「何でだよ? みんな美人で両手に華じゃねぇか。そのへん歩くだけで羨ましがられるぞ」


 そんなことは望んでないんだよ。

 俺はな「ハーレム王になる!」みたいな夢は一切抱いたことがない。

 仮に俺がこいつらの訳アリ要素を知らなかったとしよう。今日会うのが初めてで外見くらいしか判断の材料がない状態だとしよう。

 それならパーティーを組むことについては素直に納得しただろうよ。

 高ランクのクエストをこなすための後輩育成、みたいな話でもあるから。

 でも現実はそうじゃない。そうじゃないんだよ。


「何でもクソもあるか。俺はすでにギルドから長期的に行うクエストを受けてる身だぞ。それと同時並行でこいつらと高ランクのクエストをこなせって言うのか?」

「いや、さすがにそうは言わねぇよ。パーティーを組んでもらうとは言ったが、基本はそっちの3人で旦那は臨時とか補欠みたいな……別件があれば別件、暇な時はこのパーティーでクエスト。そんな感じで考えてくれ」


 まあ……それなら今の状態と変わらないと言えば変わらないが。

 でもさ、俺は……

 カーミヤからは絡み酒された挙句、ゲロをぶちまけられている。

 リクスからはあれこれ理由を付けられて買い物に付き合わされた。隠れファンに目を付けられていそうでちょっと怖い。

 エルドナは文字ではなく声で会話したくてずっと付いて回る。下手したら家にまで押しかけそうな勢い。無下に扱って逆ギレされたら戦闘力的に勝ち目がない。

 といったように3人とは色々とあったわけだよ。

 ひとりでも精神的に負荷が掛かっていたのに3人同時なんて……考えただけでもストレスを感じてしまう。


「……だとしてももう少しパーティーのバランスをだな」

「カーミヤさんは大剣使いでタンク経験有り。リクスさんが刀を用いる物理アタッカー。エルドナさんは高威力の魔法が撃てて、旦那は魔法剣士だからどのポジションでもやれる。物理や魔法のバランスで言えば問題ねぇと思うんだが?」


 そういう説明をすれば問題はなさそうに聞こえる。

 しかし、現実はそんな簡単な話ではない。

 まずカーミヤが前衛でタンクなのは問題ない。

 盾持ちではないので防御面で心配なところはあるが、火力寄りのタンクで活躍している冒険者は存在している。ヘイト管理さえミスがなければ、タンクとして十分に機能するだろう。

 リクスがアタッカーを務めるのも問題ない。

 実際に戦っている姿は見たことがないが、装備や目を通した資料によればスピードを活かした遊撃枠としてこれまでのパーティーでは活躍していたはず。物理アタッカーとして大いに期待できる。

 なので問題なのは……


『クロウ、どうかした?』


 俺の感情が分からず小首を傾げていらっしゃるエルドナさんだ。

 ギルド側はエルドナを高威力の魔法が使えることもあって魔法使いと考えているようだ。

 が、実際はまず最初に身体強化を行って体術で物理的に戦うバリバリの前衛アタッカー。攻撃魔法を使用するのは物理耐性がある時くらいだろう。

 大剣使い、侍、魔法拳士。そこに魔法剣士。

 これで基本的な陣形を考えると、訳アリ共が俺より全て前。俺が全員のフォローをしなければならないポジションになる。

 俺のサポート系統の魔法は、効果的に見れば一流には及ばない。

 二流の効果を一流に近づける技術は努力の末に身に付けてはいるが、それはバフやデバフだけであって回復系統は応急手当程度。もしもの時の命綱として考えるには不十分な性能だ。


「攻撃面のバランスに関しては問題ないとは思う。が、サポート面で言えば高ランクを専門的にこなしていくと考えると不安は残るぞ」

「そこは旦那とエルドナさんで」

「俺は基本的に効果は二流、エルドナに関しては確か攻撃系統しか使えなかったはずだ」

「……マジで?」

『マジかと聞かれるとマジ。回復系統は無理。わたしの魔法適性は攻撃特化』


 それを聞いてリナは少し頭を抱える。

 まあSランクと同等の魔法火力を出せるAランク冒険者と聞けば、ある程度補助や回復もこなせると考えてしまうのは無理もない。

 俺も資料に目を通したり、エルドナと話す機会がなければサポート能力にも期待していたことだろう。


「となると……あとひとりくらい。サポート能力の高い冒険者も加えた方が良いってことだよな」

「基本的にBランク、時折Aランクでカーミヤやリクスに経験を積ませてふたりのランクをAに昇格させる。それからは独り立ちさせて後輩の育成も……みたいな長期間で考えていたならどうにかなるとは思うが」

「そんな悠長な時間があるなら今この場で、このメンツにパーティーを組めなんてギルド側から言わねぇんだよな。近いうちに高ランククエストを安定的かつ迅速にこなせるパーティーを作るのが目的なわけだし」


 だよな。

 現場に行ってみたら対象モンスターが変異種で、本来の危険度は数段階上でした。なんてこともある世界だ。

 下手をすれば遭遇した時点で誰かが負傷、最悪は死亡。

 無事だったとしても作戦どころか事前準備からやり直す必要が出てくる可能性だってある。ただし、そうなれば必然的にそのモンスターによる被害は拡大するだろう。

 その場で対処するためには、パーティー内の能力が高くなければならない。

 このメンツで考えれば、火力面に関してはその条件を満たしている。

 が、他の部分を考えた場合……やはりサポートの専門家がいなければ不足していると言わざるを得ないだろう。

 過去に俺は単独でのAランククエストを行う羽目になり、それをやり遂げた経験はある。

 しかし、ひとつでもミスしていれば死んでいた。命懸けで挑んだ結果、どうにか生きて帰ることが出来たというだけの話。

 毎回のように命懸けでクエストに挑むのは愚かすぎる。それでは命がいくつあっても足りない。


「そっちの意向を組みつつ、それを現実的にするためにはBランク以上のサポート能力が高い冒険者を加入させる。俺が別件で一緒に行動できない可能性を考慮すれば、それがベストだと考えるが?」

「……だな。アタシらみたいな人間は現場でのことを資料でしか知らねぇわけだし、冒険者の安全やら考えるとそこまできちんと考えるべきだった。すまねぇ」

「謝る必要はないだろ」


 まだ事が起きたわけじゃない。

 今は近いうちに起こるかもしれない被害に向けた対策期間。猶予がある間にどこまで現実的で効果的な準備が出来るか。重要なのはその一点に尽きる。


「それに……そっちは上から急な政策が来たりもするんだろ? そのときに必要な人材が常に存在している。そんな上手い話、大規模なところでもない限り早々ないことだ」

「それはそうなんだけどよ……いや、今はそれよりも人材の確保が先だよな。旦那たちだけじゃなく、他のパーティーも見直さねぇと……」


 リナはそそくさと資料を回収すると、やるべきことを忘れないようにメモを取り出してまとめ始まる。


「とりあえず、冒険者の補充に関してはギルドが責任持って行う。ただ求める能力的にフリーの奴を見つけるにしろ、他所から引っ張ってくるにしろ少し時間が掛かるはずだ。だからそっちは今居るメンバーで出来ることに取り込んでてくれ」


 言い切るとリナは俺達の返事を待たずに出て行ってしまった。

 俺達だけならともかく、他にも同じようなパーティーが居てそれも含めて見直しが必要となれば忙しくなるのは当然。なので文句はない。

 ないのだが……


「クロウ、急に頭を抱え始めてどうかした?」

「これから先の展開を考えてるんじゃないかな? 話を聞いてた限り、早めに動き出しておく必要がありそうだし」

「なるほど。確かにクロウはあたし達よりも経験豊富だもんな。先のこともあたし達よりも具体的に見えてるはずか」


 それはそう……なんだけど。

 俺が本当に悩んでいるのは、これから起こるかもしれない高ランクのクエストラッシュとかではなくて。

 どうにかお前らみたいな訳アリ達とパーティーを組まないで済むように。

 そんな考えて話していたはずなのに。

 気が付いたらこのメンバーでパーティーを組む前提で、このパーティーでやっていくうえで必要なことを話していた自分自身に対する葛藤というか。

 あぁ……俺って仕事人間なんだな。

 文句を言っても結局は仕事となると最善を尽くそうとしちゃうんだ。

 そんな自己嫌悪で頭を抱えているだけなんだよね。


「けど……あたし達ってこの後どうしたら良いのかな? 出来ることしといてくれって言われたけど」

「パーティーを組む方向性で決まっているのは確かだし、まずは情報交換とかするべきなんじゃないかな。クロウさんはボクらのこと知ってるだろうけど、他はお互いのこと何も知らないに等しいし」

「なら情報交換も兼ねて今からご飯に行こうよ。時間も時間だし、パーティーを組むなら交流を深めるのは大事だよね。えっと……エルドナさん? もそれで良いかな?」

『問題ない。ご飯は大切。それにご飯はひとりよりもみんなで食べる方が楽しい』

「確かに。じゃあ決まりってことでさっそくご飯を食べに行こう!」


 何故こういう時に俺の意思は確認されないのだろう。

 ギルドもこいつらも俺なら何も言わずに分かってくれる。従ってくれると思っているのだろうか。

 何も言わずに察するのも気遣いではあるが、言葉にしてくれないと分からないこともある。だから言葉にするのは大事だと思います。

 まあ……パーティーを組むって方向で決まった以上、食事に行って交流を深めつつ情報交換することに文句はないんだけどね。

 見た感じエルドナやリクスは、文字魔法で会話しているエルドナに対して嫌な感情を見せていない。性格的に考えても事情を説明すれば理解はしてくれるだろう。

 そう考えると訳アリ冒険者達にとっては、今回の話は悪い話ではない。

 むしろ次に進むためのチャンスになりえるものかもしれない。


「色々と長引いたら夜はお酒でも飲みに」

「それには俺は絶対に参加しない」

「何で!?」


 何でもクソもあるか。

 お前の酒癖が超が付くレベルで最悪なのを知っているからだよ。

 お前は俺に胃に入れたものをぶちまけたの忘れたのか?


「パーティーを組むんだよ? なら仲良くなって損はないし、仲良くなるためにはお酒の席が1番じゃん!」

「それは否定しない」

「なら」

「分かった。お前が酒を飲まないなら参加してやる」

「みんなは飲むのにあたしだけ飲めないとか拷問では!?」


 いやいやいや。

 お前に酒を飲ませるとさ。

 俺達が怒鳴られて、泣かれて、ゲロぶちまけれて。

 最後にはお前の面倒を見た挙句、次に顔を合わせた時には何事もなかったような態度をされるわけだよ。

 拷問を受けることになるのは俺達の方じゃん。


「なら俺は参加せん。お前達だけで交流を深めろ」

「初対面のメンツだけで酒の席は緊張すると思うんだけど。あたし達全員と交流のあるクロウという存在は必要だと思います!」

「じゃあお前は酒を飲むな。それが俺が酒の席に参加する絶対条件だ」

「そんなぁぁ……お酒はあたしの数少ない楽しみなのに」


 お前、俺よりも若いだろ。

 Bランクの冒険者なら散財してない限り、それなりの金だって持ってるだろ。

 何で酒に逃げるような生活してんだ?

 そう思いはしたもののそれを口にすると話が長引きそうだったので「酒以外の趣味でも作れ」と言って移動を開始した。

 それを見たリクスとエルドナは素直にあとを付いてくる。

 カーミヤはというと……


「ちょっ置いてかないでよ!? 食事の発案者はあたしなんだけど。というか、趣味を作れて簡単に言うけど、そう簡単に趣味が出来……だから置いてかないでってば~!」


 ブーブー文句は言っていたが、足を速めると一生懸命追いかけてきた。

 さて……

 俺は訳アリ冒険者とパーティーを組むことになったわけだが。

 これから先どうなっていくのか。

 それは未来の俺しか分からない。



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訳アリ冒険者とパーティーを組むことになった件 夜神 @yagami-kuroto

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