リアルで女声で無口な僕が幻想美少女に!?~美少女Vチューバー達にヴァーチャルワールドでは愛されて困っているボクのゲーム実況録~
#161 1年前へのプロローグ! 十六夜明日菜、世界を創造する魔術師(ウィザード)
#161 1年前へのプロローグ! 十六夜明日菜、世界を創造する魔術師(ウィザード)
こうして私は栗林さんをスカウトし、ようやくVチューバー候補の選出を本格的に行う事になった。
⋯⋯なったのだが。
「木下。 やっぱり素人だけじゃなくて少しはプロフェッショナルも居た方がいいと思うんだ。 我がヴィアラッテアのVチューバーの質の高さも見せつけたい!」
「かしこまりました」
とんだダブスタである。
親しみやすさとか言ったそばからこの発言だ。
しかしこんなことくらいでいちいち腹を立てていてはこの会社のマネージャーは務まらない。
こうして私は何かのクリエイター系のVチューバーの候補を探してみた。
そうして候補に上がったのは『ナージャ』という名のニコチューバ―である。
彼女はプログラマー系の配信者だったのだ。
こうして私は彼女に会うために京都まで足を運ぶ事になる──。
── ※ ── ※ ──
私、
父がゲーム会社の社員で、子供の頃の私にプログラムを教えてくれたおかげや。
そのおかげで私には大抵のゲームがプログラムの文字列に見えてしまうという感覚があるんやで。
そのせいか私にとってはゲームは買うものではなくて自分で創るものだと思ってたんや。
そんな私が高校を卒業し大学に入って将来は父みたいにゲーム会社に就職する⋯⋯そんな人生を夢見とった。
⋯⋯そう、夢やったんや。
父が言うには、いちプログラマーが好きなゲームを作れる時代はとっくに終わってると。
現代のゲーム作りとは、大人数が参加する巨大ビジネスになったから、それに関わるプログラマーは企画されたゲームを作る事しかできんらしい。
さらに作業も細分化されて、ず~とえんえん同じ作業ばっかりやるのが普通らしい。
でも私には「こんなゲームが作りたい!」みたいな夢がいっぱいあるんや!
でもそれを実現しようと思ったらむしろ企画部やスポンサーやクライアントにならんといかんらしい⋯⋯。
つまり今まで学んだプログラミングは役に立たんちゅうことやった。
あ~、軽く絶望やったなあ⋯⋯。
私プログラム以外に得意なことないし⋯⋯大学出たらどないしよ?
いちおう私は進路をゲーム会社に就職するという事にして、大学に通う日々をおくった。
そんな私の唯一の息抜きはニコチューバ―活動やった。
「ほい! ナージャさんのプログラム配信はじめるで~」
私は『ナージャ』という名前で、ニコチューブでゲームを作るという動画を上げてた。
名前の由来は、子供の頃のアニメでやっとった『明日のなっちゃん』の主人公の名前からからや。
明日菜って名前が『明日のなっちゃん』を縮めたみたいで、子供時代は『なっちゃん』とか『ナージャちゃん』とか呼ばれてた名残やで!
まあそう呼んでた友達は当時の事全然覚えとらんかって「なんであんたナージャだっけ?」とか言うし⋯⋯ショックや。
それはさておき⋯⋯こうやって配信するのもみんなにもプログラムの楽しさを、考えたモノをゼロから生み出す楽しさをわかって欲しいと思ったからやった。
⋯⋯まあ将来ゲーム会社に就職したら、こんなお遊びやっとるヒマなんかないやろやし。
最後の思い出作りくらいの気分やったわ!
⋯⋯でもまあ驚いたな~。
しらんまに登録者数が3万人超えてて⋯⋯みんなもプログラムに興味あったんやろか? だとしたらうれしいなあ。
こうやって私は配信で自分のアイデアを語ったり、リスナーさんの意見も聞いたりしながらいくつかのゲームを作り、そのゲームを実際にインディーズで販売もしたりしていた。
お値段はせいぜい500円くらいやで!
⋯⋯ちょっとした小遣い稼ぎくらいの気持ちやったんやけど、登録者数が増えるごとにだんだん作ったゲームが売れるようになってきて焦った。
「⋯⋯これは確定申告が必要なやつや」
そんなめんどくさい事もこなしながら1年くらいが経過した頃やった。
「メール? 芸能プロダクション・ヴィアラッテア?」
あかん⋯⋯私は芸能人とかまったく知らんし⋯⋯。
なんかのスパムメールかと思ったが、なんとなく見てみたら⋯⋯。
[ナージャ様へ。 我がヴィアラッテアからプログラミング系Vチューバーとしてデビューしてみませんか?]
「⋯⋯⋯⋯はい?」
なんつーか、意味不明なメールやった。
そのくらい自分の人生とは無関係な内容だと思った⋯⋯最初は。
しかしだんだんと、そのメールを読み上げる私の心に訴えかけるものがあった。
[我が社のVチューバーとして貴方の創る世界を配信して、世界中の皆に知ってもらいませんか?]
「⋯⋯私の世界を」
この十六夜明日菜には夢がある。
自分が思い描く
しかし大昔のゲーム業界ならともかく現代ではそれはほぼ無理ゲーやった。
もちろん個人のインディーズとしてなら出来るけど、それだとロクな宣伝もないし誰にも知ってもらえんからな。
「もしもVチューバーとして人気が出たら、世界中の人達に私のゲームを遊んでもらえる⋯⋯かも!?」
それはまるでゲームの裏技みたいな進路やった。
気がついたら私はその担当者に「会いたい、話したい」と返事のメールを送信した後やった。
その後冷静になって「やってもうた~」と思ったが⋯⋯その担当者と会う日になると、なんか開き直っていた。
こうして私はその担当者、木下さんと会うことになった。
「初めまして、マネージャーの木下です」
「そのご丁寧に。 ウチは⋯⋯いや私がナージャです、本名は十六夜明日菜18歳です!」
「ウチ? 京都の方言かしら? それにしても若いわね」
「あわわ! そのすんません! 興奮すると子供の頃みたいに『ウチ』って言うてしまうんですよ!」
今ではだいぶ『私』に矯正出来たんやけどな⋯⋯。
「⋯⋯方言キャラか? これは個性かもね」
「それってVチューバーとしてのですか?」
「ええ、そうよ」
やっぱバリバリウチをデビューさせる気でこの木下さん来たんやな⋯⋯。
「あの木下さん?」
「なにかしら?」
「私の夢は『自分のゲームを作る事』なんです」
「それがなにか?」
「え? いや、こんな私がVチューバーっていうのはおかしいかな⋯⋯と?」
この質問に木下さんはちゃんと答えてくれた。
「ナージャさんの配信を全部見ました」
「⋯⋯見たんですか、全部!?」
「私はプログラム技術に関してはさっぱりわからない素人ですが⋯⋯ナージャさんとリスナーの方々が楽しそうにやり取りを重ねてゲームを作る工程を見てきました」
「は、はあ⋯⋯」
「時にはワザとゲームをバグらせて笑いを取ったりなど、きちんとリスナーとの対話やエンタメも出来る方だと思いました。 だからナージャさんを選んだんです」
⋯⋯めっちゃ評価してもらえてる? ウチが!
「でも私なんかがVチューバーでやっていけるのか⋯⋯」
「⋯⋯正直に言いましょう。 運営である我々ヴィアラッテアとしても、このVチューバービジネスは始まったばかりで手探り状態で何もわからないんです」
「無茶やっとるんやな⋯⋯そっちも」
「ええ、まあ⋯⋯」
ちょっとだけこの木下さんの疲れたような感じが垣間見えたわ⋯⋯苦労してそうやな。
「とにかく個人Vチューバーならともかく、企業Vチューバーはまだ黎明期です。 なんでもやってみる、そんな時期ですので」
⋯⋯なんでもやってみる時期!
かつてのゲーム作りはせいぜい10人くらいが集まって大学のサークル活動の延長みたいなノリでやってたらしい。
このヴィアラッテアさんも、きっとそんな時期なんだろうな⋯⋯。
「⋯⋯やってみたいです、私も」
「明日菜さん。 よろしくお願いします」
「こちらこそ木下さん!」
それから細かい事も話し合った。
気がついたら喫茶店で3時間も喋っとったわ。
ウチが作ったゲームの権利はウチのもんらしい、これは嬉しい権利やった。
しかしウチひとりで作れる範囲のゲームだと簡単なものだけやろう。
もっと凝ったものを作る時は、音楽とかイラストなんかを外注することになるだろうけど、そこは大企業のヴィアラッテアさんが手配してくれるらしい。
⋯⋯まあきっちり仲介手数料取られるとか、共同開発者になるとかいろんなパターンになるけど。
そんなゲーム作りを通したエンタメを提供するのがVチューバー・ナージャの活動という事になった。
なんつーか都合よすぎて夢みたいな話やった。
そんなウチに木下さんが⋯⋯。
「明日菜さんにはVチューバーのシステム関連でなにかの依頼をする事もあるかもしれませんが、いいですか?」
「ん? Vチューバーシステムに関する調整とかかな? まあ出来る範囲ならやったるで~!」
──後に、ウチの仲間たちが使うVチューバーシステムはけっこう私が手を入れたものが使われるようになり、みんなからの評判もよかった。
そして最後に⋯⋯。
「あの木下さん?」
「なんですか?」
「ウチの言葉使い⋯⋯直した方がええかな?」
「いえ、そのままで結構です。 それも貴方の個性にしましょう、だって魅力的ですもの」
何となくウチはこの時に、この人とならやっていけると確信したんや。
「はい! お願いします、木下さん!」
ウチの名は十六夜明日菜、特技はプログラムや。
優れたプログラマーは
だったらウチのこれからの夢は、ヴァーチャルワールド初のプログラマーVチューバーや!
こうして『ナージャ』というVチューバーの
そして現代。
「あ、マロンさん! ウチが今回作った試作ゲームのデバック配信してもらえんかな?」
「え~なになに! やらせてやらせてナージャちゃん! ⋯⋯で、コレどんなゲームなの?」
「スライムを落として共食いさせて成長させる。 最後には大きく育ったスライム同士ぶつけて対消滅させるゲームや!」
「⋯⋯なにそれ? 意味わかんない???」
「まあやってみて、マロンさんでも出来る超シンプルなゲームやから!」
こうしてマロンさんを始めとする仲間のVチューバー達にデバック配信してもらったゲームは一躍大人気となり⋯⋯。
インディーズでの販売開始と同時にとんでもないダウンロード数を記録するのだった。
「⋯⋯ウチ、億万長者や⋯⋯どないしよ?」
こんど東京でみんなと会った時には高い焼肉でも奢らんと申し訳なさすぎるな⋯⋯コレは⋯⋯。
そしてウチはその莫大な収入をどう使って次の
「ウチの
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