#154 嵐を呼ぶ妖精の登場!
ミニ四君のイベントは無事に終わった⋯⋯まあ負けたけどな!
それよりも大変なのはこれからのアイ達だろう。
イベントが終わった後すぐに緊急特番を組んで、アイの正体がAIだと発表することになったようだ。
どうやら藍野さんや坂上さんもいずれは発表するつもりだったらしいが⋯⋯まさか今日になるとは思っておらず、てんやわんやの大騒ぎになるのだった。
まあそんな感じだったので僕たちホロガーデン・アルタイルのメンバーは、一足先に帰らせてもらうことになった。
シオン達、虹幻ズの皆は後の特番に出るから残ったが。
「いや~驚いたわね、こんなことになるなんて」
「僕のせいかな?」
アイが急にファンに正体を告白したくなった理由は僕に認められたからだった。
僕に認められて、それでファンにも言いたくなったらしい⋯⋯。
エゴサした結果では、今のところは批判的な意見は見当たらず⋯⋯ホッとしている。
まあそんな帰宅だった。
映子さんが運転する車でタワーマンションに帰宅するとそこには、1人の女の子が待っていた。
なんかすごく背の低い⋯⋯中学生くらいの女の子だった。
でもその女の子は可愛い外見を台無しにするような形相で僕たち⋯⋯というか、姉さんに近づいてきた。
「ま~き~な~!」
「あれ? 来てたんだ」
「当たり前でしょ! この私の華麗なる復活祭だったハズなんだから!」
⋯⋯どうやら姉さんの知り合いらしい。
「誰、この人? 姉さんの知り合い?」
「この子が揚羽ちゃんよ」
そう謎の少女と取っ組み合いになっている姉さんの代わりに映子さんが教えてくれた。
「この人が揚羽さん!?」
「20歳くらいのハズじゃ?」
初対面の僕と留美さんはすごく驚いた!
そのくらい揚羽さんの外見は子供っぽかったからだ。
「その声はアリス!? 真樹奈自慢の妹の!」
「⋯⋯僕のこと知ってるの、揚羽さん?」
「昔、真樹奈がさんざん『妹がカワイイ』って自慢してて耳タコだったし~」
「姉さん⋯⋯何言ってんだよ?」
「いや、出会ったばかりの仲間との交流の為の潤滑剤として、家族の事を⋯⋯ちょっとね」
「⋯⋯ちょっと、だったかしら?」
そう映子さんもボヤくほど姉さんは昔の仲間に僕の事を話していたようだ。
「まあ立ち話もなんだし、中に入りましょう」
そう言って僕たちは揚羽さんと一緒にマンションに入る事にする。
その途中で揚羽さんは僕を⋯⋯というか僕の胸元をチラッと見て「勝った」とか言ってる。
なにが勝ったんだろうな、このお子様体形の20歳児は?
あとで男だとバレたらめんどくさそう⋯⋯。
なお部屋に戻り、明るい場所でようやく僕が男だと気づいた揚羽さんは思いっきり凹んでいたのだった。
「それで揚羽は、なんでここに居るのよ?」
「決まっているでしょ! 今日が私の復活祭になるはずだったからよ!」
つまり揚羽さんは今回のミニ四君イベントで勝ち上がって、そのまま僕たちと共演するつもりでここまで来ていたようだった。
「⋯⋯あんなただ煽られてるようなメールに乗ったんですか? 揚羽さんは?」
「そうよ! 勢いでね!」
どうやら揚羽さんは、あんまり深く考えずに行動するタイプのようだった。
「⋯⋯でも、後でちゃんとわかったわよ。 真樹奈が私の事を誘ってくれたんだって⋯⋯嬉しかった」
「うん、ちゃんと私の真意を汲んでくれて嬉しいよ、揚羽」
あんなのでよく伝わったな⋯⋯すごい信頼関係というべきか?
「だから今日まで頑張ったわよ! 全財産課金してまであのクソゲーに費やしてね! おかげで帰る電車賃も無いわよ!」
「はははっ! アホが居る! ここにアホが居るぞ、映子!」
「あいかわらずね、揚羽ちゃんは!」
「やかましい! このレズカップルが!」
この3人はそんなに長い付き合いじゃないだろうに、すごく自然な間柄に見える不思議だった。
「電車賃も無いって⋯⋯どうする気だったんです、揚羽さん?」
「決まってるでしょアリス⋯⋯君、 今夜華麗に復活した私は、その場で契約金を貰って帰れる⋯⋯という計画だったのよ!」
「なんて無茶な計画を⋯⋯」
「契約金なんて即金でもらえるのかしら?」
僕と留美さんは呆れてしまった。
「ま⋯⋯こういう奴なのよ、揚羽は」
それが姉さんの説明の全てだった。
「それでどうするんですか、揚羽さんは?」
「⋯⋯とりあえず泊めてください、お願いします」
「まあいいけど。 隣の映子の部屋、あまってるよね?」
「⋯⋯まあね」
なんか映子さんは嫌そうだった。
というか姉さんは映子さんの部屋に行ったことがないから知らないな、いつも映子さんの方から遊びに来るし。
映子さんの部屋の間取りはこっちと同じである、まあ隣の部屋だし当然だ。
それを映子さん1人で独占しているのだが⋯⋯楽器部屋や漫画部屋とかなり狭くなっているのが現状だったのだ。
なぜ僕がそれを知っているのかって?
そんなの僕が定期的に掃除しに行ってるからに決まっているだろ。
ウチの女性陣で自分の部屋を自分で掃除するのは留美さんだけだよ。
⋯⋯やっぱ嫌なんだろうか、僕が部屋に入るのは?
留美さんに嫌われているわけではないと思うが、その辺はやはり年頃の女の子なんだろう、絶対にそうに違いない!
「あれ? 真樹奈と映子は一緒に住んでるんじゃなかったっけ? 隣の部屋なの映子は?」
「まあ色々あってね」
「ふーん、どうでもいいわ」
「しばらく泊めるのはいいけど⋯⋯どうする気、揚羽?」
「とりあえず親に頼んで送金してもらうまで泊めてください」
嫌そうな映子さんに頭を下げる揚羽さんだった。
「なるほど⋯⋯ならいいバイト紹介してあげるわよ」
「バイト? なにそれ?」
「3日間突っ立てるだけで10万円くらい稼げる短期集中のワリのいいバイトよ」
「ホントに! ありがと真樹奈! やっぱり友達よね!」
この時ほんの少しだけ悪そうな笑みを浮かべる姉だった。
⋯⋯絶対ダメなバイトだ、これ。
「それで揚羽ちゃんはこれからどうするの?」
そう映子さんが聞く。
「⋯⋯Vチューバーを引退して1年、心底思い知ったわ。 私って『愛されていないと生きていけない女』だってことを!」
「どうゆう意味?」
「私は! チヤホヤされたいのよ! Vチューバーでもアイドルでも何でもいい! 注目されたい! 愛されたい! カワイイって言われたいのよ!」
⋯⋯こじらせてる人だなあ。
承認欲求の固まりみたいな人だった。
「今回Vチューバーとして復活できると思ったら居ても立っても居られなかった。 だから何としてでも私はVチューバーに復帰する! これは決定事項よ!」
⋯⋯すごい人だな揚羽さんは。
「まあ頑張ってね、揚羽」
「今の時代は個人勢のVチューバーも居るし」
辛辣な姉と映子さんだった。
「協力してよ~! 友達でしょ! 仲間でしょ!」
「え~どうしよっかな~」
絶対楽しんでる姉だった。
これはもう決定事項なんだろうな、姉さんが揚羽さんの復活を助けるのは。
なら僕もなにか力になれないか考えた方がいいだろう。
あとで無理やり巻き込まれるよりはラクだろうから⋯⋯。
こうしてしばらくの間この揚羽さんと僕たちは一緒に暮らすことになる。
この揚羽さんがVチューバーとして復帰できるかどうかの物語はもう少し後のお話だ。
やがて僕はこの揚羽さんという嵐に巻き込まれて行くことになる。
それはまだ見ぬホロガーデンの仲間たちとの出会いの物語なのだった。
「⋯⋯ところであんたルーミアよね? なんでここに居るのよ?」
「えっと、それは⋯⋯」
留美さんも揚羽さんも完全に初対面で面識ないからな。
上手くやっていけるだろうか?
こうしてアイ達が世界中に大きな騒動になっていくその裏で、僕たちはひっそりと揚羽さん復活という
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