#123 Vチューバー新プロジェクト始動!
「──えー、それでは今日までのドラゴンファンタジア特集はいったんおしまい、という事で!
ついに来週発売される新作『ロールプレイング・アドベンチャーワールド』に期待を膨らませつつ、待ちたいなーと思います!
それでは次回も見てくださいね! バイバイ!」
こうして今日も無事にいつも通りのボクの配信活動が終わった。
── ※ ── ※ ──
僕は夏休みに入り勉強に配信活動に毎日充実した日々を送っていた。
しかし大きな変化もあった。
僕たちが住んでいるマンションにシオンとリネットが引っ越してきたことだ。
これによって僕の日常はさらに賑やかなものになっていくのだった。
そんな時に僕たちVチューバーは呼び出されることになったのだ。
「あれ? 木下さんからメール来た」
「ん⋯⋯こっちもね」
姉のスマホにも同時に着信があったので、どうやら一括送信の業務連絡なのだろう。
「んーと、なんだろ?」
見て見るとそこには⋯⋯。
[マネージャー木下:業務連絡です。 マロン、エイミィ、ルーミア、アリスの4名は本社へ来てください。 日時は──]
「呼び出しみたいだね姉さん」
「そ、みたい」
こうして僕たち4人は映子さんの運転する車でヴィアラッテア本社ビルへと向かうのだった。
本社ビルは僕らがよく行くスタジオビルのすぐ隣だった。
「こっちのビルに来るのは初めてだな」
「私も面接の時くらいしか来なかったわね」
姉はVチューバーになる前は、このヴィアラッテアのコンパニオンとしてバイトしていたからな。
「私もこっちに来るのは久しぶりね」
「そうなんだ?」
僕と留美さんはよくレッスンに通うが、それは隣のスタジオビルの方だからな。
「私はよく遊びに来てたわ!」
そう無邪気に言うのはこのビルのオーナーである相川社長の令嬢である映子さんだった。
そのまま駐車場で待っていると木下さんが迎えに来てくれた。
「木下さん、おはようございます」
「おはようアリスケ君」
「ちーす、木下さん」
「うさ⋯⋯木下さん、こんにちは」
「おはようございます、木下さん」
一瞬「宇佐子」と呼びそうになって睨まれる映子さんだった。
「それで木下さん、今日は何の用なの?」
僕らを代表して聞くのは姉さんだ。
「重要会議よ、今からポラリス本社へ行きます」
そして僕らは木下さんに案内されてポラリス本社へと行くのだった。
ポラリスの本社ビルはヴィアラッテアの本社とそう離れていない。
歩いてでも行けるくらいの距離にある。
「でもなんでポラリスの本社に? 私たちヴィアラッテアのVチューバーなのに?」
そう木下さんに疑問を投げかけるのは姉さんだった。
「この企画がウチとポラリス共同案件だからよ」
共同案件? という事はもしかして⋯⋯。
そう思い案内されたポラリスの本社の会議室には──。
「シオン! それにリネットも居る!」
「おっす、あっ君!」
「こんにちは、アリス」
そこにはお馴染みの僕の友達、霧島紫音とリネット・ブルースフィアの2人が居たのだ。
そしてさらに⋯⋯。
「遅れてすみません!」
そう駆け込んできたのは緑川まどかさんだった。
「ポラリスのVチューバーが3人も?」
「そういうそっちだって4人そろってるじゃん」
そう言い合う僕とシオンだった。
「これで全員集まったようだな」
そして現れたのはポラリスのマネージャーの坂上さんと⋯⋯、
エミックスのプロデューサーの干田さんとスフィエアのプロデューサーの坂田さんだった。
「このメンバーが集まっての話というと⋯⋯もしかして新作ゲームの!」
「その通りだアリス君」
そう今日は干からびてはおらず元気そうな干田プロデューサーが答えてくれたのだった。
「今日は今度の企画である『ロールプレイング・アドベンチャーワールド』製品版のテストVチューバー同士の顔合わせといったところだ」
そう坂上さんが説明してくれた。
しかし疑問だった。
「でもなんで姉さんやリネットも?」
「それは私たちも今回から参加するからです!」
そうドヤ顔で誇らしげなリネットだった。
「私と映子もするの? 木下さん?」
「ええ、そういうことよ」
「そうか⋯⋯増員するんですね」
確かにそれはいい案だった。
見る視聴者だっていつも同じVチューバーだと飽きるかもしれないし。
僕、姉さん、映子さん、留美さん、シオン、リネット、みどりさん。
この7人で⋯⋯って、あれ?
「全部で7人? でもこのゲームって4人パーティーだから⋯⋯」
そう僕が言いかけた時だった。
「失礼します」
そう静かな声の女性が入室してきた。
「遅いぞ、藍野マネージャー」
「申し訳ありません。 少々連絡事項がありまして」
「まあいい、それでは皆様席についてください」
そしてこの会議室に総勢12人が集まるのだった。
この会議の司会進行役は坂上さんだった。
「本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます」
そうキビキビと話す坂上さんだった。
うーん最近けっこう親しみを感じていたけど、こうして仕事モードだとやっぱりエリートオーラがあるよなあ坂上さん。
そんなどうでもいい感想を持つ僕だった。
「今回のポラリスとヴィアラッテアの共同企画である『ロールプレイング・アドベンチャーワールド』のテストVチューバーの顔合わせをしたいと思います。 それでは皆様、順番に自己紹介をお願いします」
そして僕たちは順番に自己紹介をする。
まずは僕たちヴィアラッテア側からだった。
「えー、ヴィアラッテア所属のVチューバー・マロンです、皆様初めまして。 本名は栗林真樹奈です」
うーん、姉にしては無難な自己紹介だった。
「Vチューバー・エイミィこと相川英子と申します」
こうして見ると映子さんはまるで社長令嬢のようだった。
「同じくヴィアラッテア所属のVチューバー・ルーミアをさせて頂いている、芹沢留美と申します。 よろしくお願いします」
うんうん、やっぱり留美さんは丁寧でいいね!
あ⋯⋯僕の番か。
あれ? どっちで自己紹介しようか?
アリスとして? それとも有介として?
⋯⋯よく考えると秘密にする必要もない、みんな知ってるメンバーだった。
「ボクはVチューバー・アリスを演じさせて頂いている栗林有介と申します。 そちらの栗林真樹奈の弟です、姉弟ともどもよろしくお願いしますね」
そうおもいっきり地声で堂々と自己紹介する僕だった。
まあ全員知っていると思い込んでいたから⋯⋯。
「え⋯⋯君がアリスなの?」
そう目をまん丸にして驚くのはスフィエアのプロデューサーの坂田さんだった。
⋯⋯しまった、この人とは今回初めての面識だった。
そのとき⋯⋯。
ガタッ! ⋯⋯と、音を立てて崩れ落ちた人も居た。
坂上マネージャーの隣の女性の人だ。
今日初めて会う美人の人だった。
「⋯⋯大丈夫か藍野?」
「申し訳ありません坂上マネージャー。 ⋯⋯私としたことが」
⋯⋯油断してた。
こうも業界の人ばっかりだと僕の声をバカにするような人は居ないと思い込んでいたから。
「アリスが男⋯⋯アリスが男⋯⋯」
そう何度もつぶやくその藍野さんとやらはかなり動揺しているようだった。
一方、坂田プロデューサーの方は「びっくりしたなあ⋯⋯」という程度で、なかなか肝の据わったお方らしい。
そう僕だけが爪痕を残してヴィアラッテア側の自己紹介は終わった。
次はポラリス側の自己紹介の番だった。
「皆様初めまして、私はポラリスのVチューバーとして活動させて頂いているネーベル・ラ・グリム・紫音と申します。 本名は霧島紫音です、どうかよろしくお願いします」
そうしっかり丁寧に自己紹介をして、お辞儀も完璧なあの美少女は誰なんだろう?
少なくとも僕の知っているシオンは、あんな外面のよい子ではない。
あとで思いっきりからかってやろう。
「初めまして、ポラリスのVチューバー・風巻みどりを担当させて頂いている緑川まどかと申します」
うーん、さすがこっちは見た目通りの印象の自己紹介のみどりさんだった。
こうして僕は2人の本性を知っているから違和感大爆発なんだが2人とも先輩Vチューバーであり、業界歴も僕より長いからこの挨拶は当然なのかもしれないな。
「皆様、お初にお目にかけます。 Vチューバー・ブルーベルと申します。 ですが、私はヒーローなので正体はヒミツ⋯⋯と言いたいのですが、ただのリネットと呼んでいただければ幸いです」
うーん、リネットは途中まで完璧なお姫様モードだったのに最後は悪ふざけしたな。
でもこれもリネットなりの配慮なのかもしれない。
まさか王族だとか言うわけにもいかないとか考えたんだろうな、きっと。
これで全員だった。
やっぱり7人だった。
そう僕が思いかけたその時だった。
坂上マネージャーの隣に座っていた藍野さんが立ちあがった。
「私はポラリス所属のVチューバー・アイの代理人の藍野と申します。 本日ここには来られないアイの代わりに出席させて頂きます」
それが8人目だった。
アイ⋯⋯謎のVチューバー。
今まで誰も会ったことのない正体も不明なVチューバー。
アリス、マロン、エイミィ、ルーミア。
ネーベル、みどり、ブルーベル、そしてアイ。
このメンバーで始まるのだ、正式な『ネオ・レジェンド・プロジェクト』が⋯⋯。
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