#098 悪の女首領マロンVS正義の使者マスクド・ブルーベル
僕がつけたテレビにマロンのチャンネルが映った。
どうやらもうオープニングトークは終わっているようだ。
『それではこれからブルーベルと、アリスの姉の座を賭けた勝負を始めます!』
『負けませんよマロンさん!』
どっちも気合十分だった。
「とこれでセバスチャン?」
「なんだ?」
「ブルーベルというかリネット姫ってゲーム強いんですか?」
一応ウチの姉は一部のゲーム以外はほとんどしなかった素人だ。
でもその得意なゲームを今回の勝負に使う気なのだ。
「私の知る限り殿下は、ほとんどテレビゲームはしないな⋯⋯」
「そうですか」
これは姉の圧勝か?
そう思っていると今回のルール解説が始まったようだ。
『えー、今回のルールを発表します。 マロンとブルーベルがそれぞれ選んだゲームで対戦します』
『もしもそれで引き分けになった場合は、アリスの選んだゲームでの決定戦になるわ』
【マロンが選べるゲーム⋯⋯あるのか?】
【ブルべちゃんゲームほとんどしないんじゃ?】
【これは低レベルで拮抗しそうな予感w】
【むしろアリスの選んだゲームが知りたい】
【絶対クソゲーだなw】
【だなw】
うーん、酷いコメントだった。
「ミスタ―アリス、君は意外とダーティーらしいな」
「練習して効率的になった結果です」
風評被害が酷いなあ⋯⋯。
「ところでアリス。 この勝負、殿下に勝ち目はあるのか?」
「うーん? 姫様の選んだゲーム次第かな? 姉は自分の選んだゲームでは勝ち確定だと思うので⋯⋯」
「つまりやり込んでいると?」
「ズルいと思いますか?」
「いや、そうは思わん。 我々政治に生きる者はみな事前準備が全てだからな」
「なるほど」
「それに私としては殿下がこの勝負で勝とうが負けようがどうでもいい。 悔いを残さず楽しんでいただければな」
⋯⋯さて、どうなるかな?
こうして先行のマロンの選んだゲームの発表になった。
『それではマロンの選んだゲームは、これだ!』
画面にファミステの画面が映った。
『マッスルヒーロー・タッグマッチです!』
これが姉さんの選んだゲームである。
意外にも姉はプロレスのファンだったりする。
その理由はとある漫画のファンだったからだ。
その漫画のゲームが今回姉の選んだ『マッスルヒーロー・タッグマッチ』である。
「これはどういうゲームなんだ?」
「プロレス⋯⋯なのかな? 昔の対戦格ゲーみたいなもんかな?」
「ふむ⋯⋯これは経験の差が出そうだな」
「経験というか、使うキャラの差が⋯⋯ね」
「どういう事だ?」
「キャラ性能に差がありすぎるんですよ、このゲーム」
「つまりそれを知らない殿下に勝ち目はない⋯⋯という事か?」
「まあそう」
だがそんな僕の予想に反して姉は意外にフェアだった。
『えー、マロンはこのゲーム結構やり込んでます。 なのでブルーベル、アンタが先に使うキャラ選んで』
『いいんですか?』
『ハンデよハンデ』
『では遠慮なく先に選びますね』
このゲームの使えるキャラは全部で8人居る、その中で2名選んでのタッグマッチなのだ。
そして先にブルーベルが選んだのは『ロビンアーマー』と『アシュラデビル』だった。
『この青色のキャラ2人を使いますね』
ブルーベルさん自身が青キャラだからか?
「アリス、この殿下の選んだキャラは強いのか?」
「正直使いにくい玄人向けです」
そして姉のキャラ選択になった。
『じゃあマロンは残ったキャラの中から⋯⋯この『ゲルマンジュニア』と『バトルマシーン』を選びます』
【オワタwww】
【マロン容赦ねえw】
【汚い!マロン汚いwww】
「⋯⋯コメントが荒れているな」
「それだけ姉の選んだキャラが強いからです」
「つまりこの時点で殿下の負け⋯⋯か?」
「勝負にならない、かな?」
そして僕らの見ている前で戦いのゴングが鳴った!
マロンの操作する『ゲルマンジュニア』とブルーベルの操作する『ロビンアーマー』の戦いが始まった。
試合は一進一退のパンチの応酬だった。
しかし⋯⋯試合の流れを大きく変える者が現れる。
それが『ミット君』である。
このリング外からミット君の投げる『命の玉』が勝敗を分ける大きな要因だ。
「お⋯⋯ミット君が来ましたね」
「あの子供か? なんなんだ?」
「あの子が投げる球を取ると一定時間、必殺技が使えるようになるんです」
「なるほど」
しかし意外にも、その命の玉をマロンはスルーした。
最初に命の玉を取ったのはブルーベルだった。
ピカピカ光り襲い掛かる『ロビンアーマー』を姉の操作する『ゲルマンジュニア』が巧みなロープワークで寄せ付けない。
やがてロビンアーマーの必殺技タイムは終わった。
『はい残念でした』
『うー、近づけなかったです』
【マロン上手い】
【マロンがゲーム上手いだと!?】
【マロン貴様!このゲームやり込んでいるな!】
【そらそうだろw】
「⋯⋯今のは?」
「姫の使っているキャラの必殺技は相手の背後に回らないと使えないので、姉が寄せ付けなかったんです」
「なるほど⋯⋯」
そう僕が解説していると今度は姉が命の玉を取った。
それを見て距離を取るブルーベルだったが⋯⋯もう遅い。
『くらえー! 毒ガスブレス!』
『えー!?』
なんと姉の操作するキャラの必殺技は飛び道具なのだ。
距離をとっても避けられないブルーベルのキャラはダウンする。
『でもダメージはそれほどでもない、立て直せば⋯⋯』
『追加攻撃!』
再びダウンするブルーベルのキャラ。
それが延々とループする。
カンカンカンッ!
ゴングが鳴り決着がついた。
『ナンバーワ──ン!』
姉の圧倒的勝利宣言である。
『えー!? 何なんですか、今のは!』
負けたブルーベルは納得いかないようだった。
「⋯⋯アリス、今のは?」
「このゲーム最強の必殺技です」
かつてのちびっ子たちの間で『ゲルマン禁止』とまで言われた超必殺技だった。
「卑怯ではないのか?」
「卑怯ですね」
勝つために手段を択ばない、それが姉だった。
【なにも知らん初心者にゲルマンは酷いwww】
そういうコメントも出始める。
『とまあ練習はこのくらいでいいでしょう、次が本番で』
『え? ⋯⋯いいんですか?』
『いいのいいの。 こんなキャラ性能だけで勝ったと思われたくないし』
どうやら勝負は仕切り直しらしい。
これは余裕こいても勝てると判断したな姉は⋯⋯。
「ただの卑怯者ではないようだな、お前の姉は」
「⋯⋯そうですね」
ただの卑怯者です。
こうして再びキャラ選択から再開した。
『さっきマロンが使ったキャラは禁止で』
『わかりました』
こうして本番の戦いが始まる。
姉が選んだのは『マッスルヒーロー』と『ホーンバイソン』の牛肉コンビだ。
一方ブルーベルが選んだのは『カンフーヌードル』と『アメリカンスター』の、ラーメンライスコンビだった。
「今度の戦力差はどうなんだ?」
「まずまずです」
その僕の言う通り今度の戦いはおとなしく地味に進んだ。
姉は舐めプとまで言わないが、ただ一方的に勝とうとはせず試合を盛り上げるように立ち回っている印象だった。
そして試合終盤にお互いライフが減った状態で最後の命の玉を取ったのは⋯⋯マロンだった。
『くらえー! マッスルドライバー!』
『あー! 負けたああー!?』
カンカンカンッ!
試合終了!
最後に勝ったのはアリスの真の姉、マロンだった。
【ズルくないw】
【明らかにやり込んでる動きで草w】
【マロンにもできるゲームがあったのかw】
などなどコメント欄も盛り上がっていた。
『はい! まずはマロンの1勝です!』
『あわわ! 後がありません! でもここから逆転するのが真のヒーローです!』
どうやらブルーベルの心はまだ折れてはいないようだった。
そしてこの姉対決の命運を賭けた、2つ目のブルーベルの選んだゲームが発表される!
『それでは私が選んだゲームは──』
はたしてこの熾烈な勝負の行方はどうなるのだろうか?
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