#030 スーパーアリスのリアルな麻雀対決!

 いったんボクは配信を中断してリビングに向かう。

 このリビングには引っ越しのさいに姉が購入した全自動麻雀卓がある。

 そこでは既にみんながスタンバイしていた。


 そして準備とは真上から全自動麻雀卓を見下ろす定点カメラのセットであり、またボクらの手牌を映す固定カメラだったりだ。

 全員の顔が映らないように上手く角度を調節してある。


 この後の配信では4人全員のチャンネルが同時に配信する。

 その時真上からの見下ろし卓上カメラは共通で映し出されるが、手牌はそれぞれのチャンネルでのみ公開となる。


 視聴者の皆様は誰か一人の視点から楽しんでもいいし、全員のチャンネルを同時視聴して神目線で楽しんでもいいという趣向だった。


 今回からボクは収益化が通ったので、みんなと同じゲームが出来るようになったから何かしたいと提案したのだった。

 そしてマネージャーの木下さんが企画したのがこのリアルでの麻雀だった。


 幸いボク達全員は麻雀のルールは把握していた。

 こうして4チャンネル同時開催の、スーパーリアルな麻雀対決が始まったのだった。


 ── ※ ── ※ ──


【4チャンネル同時開催の麻雀対決か!】

【みんなは誰で見る?】

【悩む】

【黙って全部w】

【こうやって収益を4倍にする運営の罠w】


「さて皆さまお待ちかねの、仁義なき麻雀対決でーす!」


 そう代表の挨拶をするのは姉だった。

 元々姉はこういった司会進行が得意だからだ。


「それでは本日のメンバー紹介です」


【やっぱりマロンの仕切りはいいな】


「皆様の心のオアシス『喫茶エルフ』のマスターのエイミィです」


【最近はすっかり農家のエルフ来たw】


「ルーミアよ。 今夜も私を見なさいよね」


【見てるよるーたん!】


「アリスです、今夜の主役です」


【誕生日みたいに言うなw】

【まあ誕生日みたいなもんだろ3Dの】


「まあ今夜はアリスの収益化初配信だからね、でも勝負に手を抜かない姉のマロンです」


【マロンは勝負師だからなw】


「「「「今夜は私たち4人で遊びます!」」」」


【おーパチパチパチ】


 こうして勝負は始まった。


 そしてルールの説明である。


「えー、今回の麻雀のルールなんですが⋯⋯まあだいたい普通の麻雀です。 ただ配信にあたりいくつか変更点があります」


【ハウスルールか?】


「まず点数ですが⋯⋯ボクらの中に正確な符割り計算が出来る人が居ませんでした。 なのでざっくりと4飜以上でないと上がれない、という決めです」


【点数計算できないあるあるw】


「その代わり喰いタンあり、後付けあり、イカサマありの、アリアリアリルールです」

「イカサマはバレなければ構いませんが露見した時点で満貫、つまり親12000点、子8000点の支払いになります」


【イカサマありかよw】

【そのためのリアルかよw】


「そしてダラダラと勝負が長引かないように点数は減っても増えません!」

「それぞれ全員の点数は25000点のライフで、これを失ったら罰ゲームです」


【これはエキサイティングな変更か?】

【これ目的は罰ゲーム増やすためだろw】


「罰ゲームの内容ですが、麻雀の定番は脱衣⋯⋯なんですがそれはニコチューブの規約上不可能なので、今回は『着衣麻雀』となります!」


【着衣麻雀www】


「まあ要するに点数をすべて失ったら、コスプレさせられるという事よ!」

「一応0点になってもコスプレしたらまた25000点に戻りますので、そのままゲームは続きます」

「まあこのルールで半荘2回の勝負で何回コスプレさせられるか⋯⋯という勝負です」


「なお、このコスプレ衣装は全てマロンの私物よ」

「マロンさんの趣味が生かされているわね」


【コスプレ大会じゃないかw】

【これは全員負けろw】

【マロンの私物で草w】

【マロンはコスプレ出身だから⋯⋯(コンパニオン)】


 こうして一通りのルール解説が終わった。

 そして席順は⋯⋯。

 マロン、エイミィ、ルーミア、アリス、そしてマロンへと戻る。


「死者の躯を積み上げて遊戯に耽る我らに祝福を⋯⋯、今宵の贄は我が前に並べられている。 それを捌くも食すも我しだい⋯⋯」


【でたwルーミアの謎ポエムwww】

【牌は骨で出来ている設定だからかw】


 最初のゲームの親は姉からだった。


「じゃサイコロ振るわよ! うりゃ!」


 若干インチキ臭い転がり方で賽は転がったが、まだイカサマだと言えるほどではない。

 まあ姉に自由にサイコロ振る技術があるとは思えないし⋯⋯。


「2・2の4!」

「ふむ⋯⋯ボクの山からの配牌ですね」


 そして僕の前の山から牌がどんどん無くなっていく⋯⋯。


 だがこの時ボクは違和感を感じていた。

 ⋯⋯姉の前の山が手つかずで残る事に。

 ⋯⋯一応警戒しておくか。


 ボクは8牌まで取った時に、そのうち2牌を素早く姉の山の端っことすり替える!

 ⋯⋯よし! 姉は自分の12牌目を取る為に夢中で気づかなかったな?


【今アリスなんかやったw】

【すり替えたなw】

【このタイミングで?】


 その視聴者たちの疑問はすぐに解ける⋯⋯。


 姉は親のため14牌取る⋯⋯正確には自模がどれかわからなくなるからルール違反なのだが⋯⋯この時は全員理牌に夢中でそこまで気が回らない。

 影響があるのは天和になった時だけだし。


 しかし姉の手が素早く動いた!?

 パタン スッ クイッ カチャッ!?

 僅か3秒の早業⋯⋯姉の奥義『燕返し』が、いきなりさく裂したのだった!


【マロンやりたがったwww】

【これがリアルでやる理由w】

【上手い!】

【早い!】


「おや~? なんか上がってるねえ~」


 そう言って姉は自分の手配を全て開いて見せたのだった。


【しらじらしいw】


 そして姉の手配は──、

 [一九①⑨ⅠⅨ東南西北白發發 白]

 ⋯⋯だった。


「いやそろってないじゃん」

「アレ!? なんで?」


 姉はまったく気づいていなかったので軽くパニックだった。


 ボクの手牌の中にさっき姉の山からかすめた2牌は⋯⋯『中と五』だった。

 つまり白か發が余計に送り込まれた訳だ⋯⋯ボクの機転によって。


「マロンあなた⋯⋯」

「積み込み⋯⋯ですね」


 この時点でエイミィもルーミアも姉の悪事に気がついたようだった。


 そもそも不自然だったのだ。

 全自動卓なのにオープニングゲームがすでに積まれている山から配牌するのが。

 全自動卓での積み込みなんてプロでも厳しい⋯⋯しかし開幕のこの一戦に限り姉でも出来るのだ。


「マロンお姉さま。 オープンリーチの言い間違えですか?」


【アリス煽ってる煽ってるw】

【アリスが阻止したw】

【マロンせこいなw】


「っく、アリス⋯⋯。 言い間違いよ! オープンリーチ!」


 こうして姉は『白』を切ってリーチをかけた。

 これで姉の待ちは『国士無双・中待ち』になった。


「まったく言い間違えるなんて、ねえさんそそっかしいんだからー」

「っく、人をササエみたいに言うな! このカシオが──! いいわね! オープンに振り込んだら役満払いだからね!」


「そもそも国士で役満じゃないの?」

「それってダブル役満になるんですか?」

「このルールだと、振り込んだ人がどちらにしろ飛ぶので意味ないですね」


 このルールだとライフポイントの25000点は役満に振り込んだ時点でコスプレ行確定だからな。


【あれ? もしかしてこれマロンが上がってたら⋯⋯】

【天和国士無双13面だとしたら⋯⋯】

【全員飛ばす気だったのかマロンはw】

【コスプレが無駄になったwww】

【ルーミアのコスプレ見たかった】

【エイミィの破廉恥な衣装見たい⋯⋯】

【アリスも見たい】

【マロンのは⋯⋯まあいいやw】


「ふーんだ! こっから自模ったらいいだけだもん!」


 そう姉は負け惜しみを言うが⋯⋯まあ事実だ。

 残りの山はそっくり残ってるし⋯⋯。


 ボクの手牌に姉の待ちの『中』がある、ほか3枚は誰かが持ってるかもしれないが今は所在不明だった。


「じゃあ自模るけど、いいよね?」


 そう言ってエイミィが山に手を伸ばす──。

 こうして崖っぷちの『着衣麻雀』対決が始まったのだった!

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