#018 新生活の危機!? ストーカーが現れた!

 僕らと留美さんが一緒に暮し始めてもう1週間がたった。

 最初はぎこちなかったけど留美さんはどうやら姉さんとの距離感を掴んだらしく、今ではまるで本物の姉妹のようだった。


 僕とはどうなのかって? ⋯⋯まあ普通だろう、たぶん。

 学校ではほとんど会話をしない、これは別に秘密を隠す為じゃなくて僕がほとんど喋らないだけだ。

 でも家では普通に会話もするしラインのやり取りも頻繁である。


 [アリスケ:今夜、何食べたい?]

 [るみるみ:ビーフシチューがいい]


 まあこんな感じで気軽にやり取りできる関係には成れたのかな?


 そして僕と留美さんは一緒に帰宅はしない。

 あえて別行動を取る為に僕が帰りに買い物に行くときは留美さんは先に家に帰って掃除をする。

 またはその逆をする⋯⋯というのが定着したのだ。


 姉はそのローテーションには含まれてはいない、ズボラだからではなくて戦力外通告というやつだった。

 掃除は雑だし買い物は予定にない変なものを多く買うし⋯⋯。


 そして今日の僕は買い物の当番だった。

 手早く目的の物だけを買って帰宅する⋯⋯はずだった。


 に僕が気づいたのは偶然だった。


 ⋯⋯つけられている?


 行きつけのスーパーを出た時から一人の女性がピッタリと後をついてくる⋯⋯。

 これだけだと単なる偶然かもしれない、僕は特に用事もないがコンビニに寄った。

 するとその女性もコンビニに入ってきた。


 ⋯⋯まだだ。

 まだ確定じゃない。


 僕は商品を物色する振りをしながらその女性をそれとなく観察する。

 帽子とサングラスで顔を隠している⋯⋯。

 とても怪しかった。


 僕は隙を見て何も商品を買わずに走ってコンビニを出た!

 するとその女性も焦って僕を追ってコンビニを出たのだった。


 これで確定だ。

 僕は陰に隠れてその女性の姿をスマホで撮影する。

 僕がすぐに隠れたためその女性は僕を見失い、辺りをキョロキョロしていた。


 その後、僕は用心するために少し遠回りでマンションに向かったのだった。


 そしたらマンションの手前にその帽子の女が居た⋯⋯。

 このまま家に戻る訳にはいかないな⋯⋯。

 僕は留美さんに電話した。


『はい? アリスケ君、なに?』


 こうして留美さんの声だけ聴くと時々ルーミアだって思える時がある、「なに?」のイントネーションが心地よい。


「いま僕はマンションの前に居るんだけど⋯⋯ストーカーらしい人に見張られている」

『⋯⋯え?』


 留美さんの戸惑いもわかる。

 でも僕らはある意味普通人ではない。

 ネットでは有名人であり、こうして自宅を突き止めようとする過激なファンが居てもおかしくはないのだ。


「姉さんもそこに居る?」

『ええ、真樹奈さんなら──』

『──どうしたのアリスケ?』


 どうやら姉さんが留美さんのスマホを借りたらしい。


「マンションの前にストーカーが居る」

『⋯⋯ほう』


 その姉の言い方に戦闘スイッチが入ったのを感じた。


『アンタの事だから途中でまいたらマンションに先回りされていた⋯⋯ってとこでしょ?』

「正解」


 さすが姉さん、話が早い。


『なら挟み撃ちね、今から私が出るからタイミングを合わせてアリスケ』

「危険じゃないかな?」

『ヤバそうな相手なの?』

「見たとこ普通の女の人」

『女? ⋯⋯ならいけるでしょ』


 若干不安だったがあまりこっちとしても大事にはしたくないしな⋯⋯。


『留美は離れていつでも警察呼べるように待機ね』


 こうして僕らのミッションが始まった。

 スマホで僕と姉がタイミングを計りつつ──僕がその女に声をかけた。


「なにか用ですか?」

「ふぎゃ!?」


 その不審な女はじっとマンションを見つめていて、背後を取られる事は想定外だったのだろう驚いたようだった。


「僕の事、つけてましたよね?」

「アンタは! アンタがっ!」


 そう言ってその女は僕に掴みかかってきた!?

 とはいえ僕は男で相手は女⋯⋯力の差は歴然。

 相手の両手首を僕は掴んで落ち着かせようとした。


 すると姉が走って乱入してきた──ゴルフクラブを持って!?

 最近姉は近くの打ちっぱなしのゴルフにハマっていたからな⋯⋯。


「アリスケになにすんのよっ!」


 正直僕は目の前の不審な女よりも、その時の姉の方が怖かった。

 そしてそれは謎の女も同じだったに違いない。


「待って真樹奈! 私っ! 私よ!」


 姉のフルスイングしたゴルフクラブがその女の顔面数センチ手前の所で寸止めされた。


「⋯⋯⋯⋯映子?」

「そう! 私よ真樹奈!」


 すると帽子がハラリと落ちてた。

 そしてその女はあわててサングラスも取る。

 ⋯⋯美人だった、姉と同い年くらいの。


「⋯⋯なにやってんの映子?」

「真樹奈に会いに⋯⋯」

「こんなコソコソと?」

「う⋯⋯ううぅ⋯⋯」


 泣き出してしまった⋯⋯こんな大の大人の女性が⋯⋯。


「はあ⋯⋯仕方ない、とりあえず来なさい映子」


 するとパッと泣き止んだのだった。


「うん! 真樹奈!」


 スマホを構えたままの留美さんが僕に近づいてきた。


「通報⋯⋯しなくていいの?」

「どうやら姉さんの知り合いみたいだし⋯⋯」


 結局そのストーカー女は姉さんに連行されて僕らの部屋まで案内されたのだった。

 姉さんに抱きつくそのストーカー女は幸せそうだった⋯⋯。




 そしてマンションの中で僕ら4人が向き合う。


「真樹奈! この男は誰よ!」


 そう僕を指さす。


「私の弟のアリスケよ」


 そう短く姉は説明した。


「弟!? 真樹奈って弟居たの? 妹以外に!」


 そう今度は留美さんを指さした。

 どうも留美さんを姉さんの妹だと勘違いしているらしい⋯⋯。


「真樹奈さん、この人誰なんですか?」


 そう留美さんが訊ねる。

 すると──。


「貴方アリスじゃない!? 誰よ貴方は!」


 と⋯⋯またわめき始めたのだった。


「おちつけ映子!」

「はいっ!」


 そう姉に言われてシュンっとなるストーカー女だった。


「まず私に妹は居ない⋯⋯アレは嘘よ」

「⋯⋯え?」

「でこの子が私の弟で⋯⋯こっちが同居人の子よ」

「⋯⋯弟? 同居人?」

「そうよ」

「浮気相手じゃないの?」

「浮気って何よ?」


 その姉の声はちょっと冷たかった。


「だって真樹奈、最近会ってくれなくなったし、コラボもしてくれないし⋯⋯」

「はあ⋯⋯最近はいろいろ立て込んでて引っ越しの後だったし、そろそろ呼ぼうとは思っていたわよ映子の事は」

「本当?」

「私が映子に嘘ついたことある?」


 ⋯⋯さっきシレっと嘘をついているって言ってたよな?

 でも黙っとこう⋯⋯。


「で⋯⋯姉さん、誰なのその人?」

「私の友達よ! 同僚でもあるけど」

「同僚?」

「て事は同じ事務所の?」


 どうやら留美さんは知らない人らしい。


「ほら映子、自己紹介して」

「⋯⋯うん。 相川映子です、真樹奈の同僚です⋯⋯あと私が、真樹奈の彼女なんです!」


「「⋯⋯は?」」


 僕と留美さんは同じようにポカンとする⋯⋯。


「姉さんレズだったの?」

「失礼ね! 男に縁が無いだけよ!」

「私は真剣に真樹奈と愛し合っているわ!」


 どうやらこのストーカーのターゲットは姉さんらしい、という事だけは判明したな。


「ふふ⋯⋯映子の愛はちょっと重いな」

「それだけ真樹奈を愛しているって事よ⋯⋯」


 どうしよう⋯⋯この状況を?


「やっぱり通報する?」


 そんな留美さんだけがこの場では冷静だったのかもしれない。


◇◆◇◆ ◇◆◇◆ ◇◆◇◆ ◇◆◇◆


エイミィで~す⋯⋯。

ねー聞いてよ、お客様ぁ!

最近マロンがコラボしてくれないのよ~!

ど・ぼ・じ・で~~!? 私なにかしたっけ?


⋯⋯え? 最近マロンの妹がデビューした?

ちょっとそれ詳しく!


コイツのせいでマロンが! 私のマロンがぁ!?


⋯⋯とりあえずこのアリスのチャンネル登録はしておくわ。

敵をまず知るところから始めないとね⋯⋯。


マロンにフラれて傷心の私のチャンネルのフォローと☆☆☆への高評価をお願いします。

いいでしょ! ☆☆☆くらいくれたってさ~! (台バンッ!)


https://kakuyomu.jp/works/16817330649840178082/reviews

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