雨と灯屋とソウルライク
あまぎ(sab)
くず拾いのワルキューレ1
手に持ったランタンが僅かに揺れる。
かなりの速度が出ているのか、足をかすめた雑草が小気味よく散っていく。
このエリアは明かりがないと何も見えないほど暗闇が続いている。
どれだけ早く走っていても自分が光の中心から出ないようランタンの揺れをコントロールしながら、慎重に駆け抜けていく。
接敵だけは、戦闘だけはしたくない。
自分は所詮、マップ探索者。
こんなダンジョンの深い階層で、戦闘なんてやっていられない。
ランタンの環の縁。
周りの景色と混ざり橙色にゆらめく位置で、何かが動いた。
気づかれないよう減速し、身を低くしながら敵の様子を探る。
このエリアにいるモンスターは、光に飛びついてくるか、そもそも目が見えないかのどちらかだ。
この距離なら、後者の音の敏感なタイプだろう。
大きさからして中級。
3mはある黒い影が蠢いている。
探索用の魔法を使うまでもない。図鑑に登録されているモンスターの一種だ。
確か巨体で怪力、ゴーレムのような頑丈さで、体の何処かにある弱点を攻撃すると、ねとっとした粘土状に崩れる。核に当てれば全体が崩壊する。
私が発見し、冒険者が討伐したことで図録に詳細が追加されたモンスターの一種。
倒せないこともない。
しかし、それでも。
襲ってこない限り交戦は避けたい。
ランタンに魔力を流し、地面に置いて軽くしゃがみ込む。
隠蔽魔法が発動し、ランタンの光が紫色に変化する。この光域内で動かなければ、自分は見つからない。
退屈そうに歩き回る巨体とすれ違うのを待って、再び駆け出した。
ゲームみたいな世界に転生してしまった。
それもファンタジーやRPGではなく、おそらくソウルライクの。
雨と灯屋とソウルライク あまぎ(sab) @yurineko0317_levy
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