Menuさん③
次は、バニラアイスクリームだ。
〔 グラニュー糖の分量を〇・七倍で砂糖に置換。レシピスキル『バニラアイスクリーム』の材料の出力を開始。素材スキル『牛乳』と『バニラビーンズ』は、レシピスキル『バニラビーンズ・ホット牛乳(葵)』にて出力します 〕
牛乳とバニラビーンズ以外の材料は、卵黄と砂糖と生クリームだ。ボウルに卵黄と砂糖を入れて『泡立て』スキルで全体が白っぽくなるまでかき混ぜる。
そこにバニラビーンズで香り付けしたホット牛乳を、卵が熱で固まらないように少しずつ投入していった。
コンコン、とドアがノックされる。僕が「どうぞ~」と声をかけると、ウルフさんがたくさんの果物を台車で運んできてくれた。扉はもうそのまま開けておいてもらう。
「なにか手伝うことはあるか?」
「そしたら、イチゴのヘタを取って、ブルーベリーと一緒に、洗っておいていただけますか」
「心得た!」
本当は申し訳ないけど、いまは猫の手も借りたいくらい忙しいので、ありがたくお願いする。ウルフさんは、シャツの袖をまくり上げると、果物類を流しで洗い始めた。
僕は、アイス作りを進めよう。先ほどの卵黄と牛乳で作った液体を鍋に入れ、弱火でとろみをつけていく。
木べらで焦げないようにかき混ぜながら、ゆっくりと火を入れた。コーンスープくらいのとろみがついたら火を止めて、『ろ過』スキルを使用して大きな卵のダマやバニラビーンズを取り除く。
〔 可能です。レシピスキル:『汎用アイスクリーム液(葵)』を新規登録しました 〕
アイスクリーム液を『泡立て』スキルで、さらにモッタリとするまでかき混ぜる。
続いて、別のボウルに生クリームを入れ、『冷却』スキルを使用しながら『泡立て』スキルで生クリームを泡立てた。生クリームをすくいあげた時にできるツノの先端が少しだけ曲がる。
生クリームこの状態で登録をお願いします。
〔 レシピスキル:『アイスクリーム用・生クリーム(葵)』を新規登録しました 〕
生クリームのボウルに、『冷却』スキルで完全に冷やしたアイスクリーム液を三回に分けて投入していく。その都度、泡立て器でよくかき混ぜた。
牛乳アイスを作った時と同じ要領で、「冷却スキルで三十分」を使用し、瞬時にボウルの中のアイスクリームを凍らせると、それを泡立て器でかき混ぜて、アイスクリームに空気を含ませていく。
これを三回ほど繰り返して、バニラアイスクリームは完成した。
僕が顔を上げて、向かいの流しで作業中のウルフさんに声をかけようとしたら、ウルフさんの背後に見覚えのある光の輪がシュルシュルと広がった。その中から手をVの字に掲げて人(熊?)が飛び出してくる。
「ジャーン! アオイ君のピンチを聞きつけて手伝いにきましたぁ~!」
今日は、ピンク色の『I♡COLD』と書かれたTシャツを着たシロクマさんが助けに来てくれた。僕は、来てくれたシロクマさんを満面の笑みで出迎える。
「シロクマさん、僕がそっちに行く約束してたのに、ごめん」
シロクマさんはくるりとバレリーナのように回転し、シュタッと洗い物をしているウルフさんの横の丸椅子に腰かけた。
「気にしないで~。助けに来たって言ったけど、ボクは試食専門デース!」
ちょうど出来上がったばかりのバニラアイスクリームを試食してもらう。
「おいしー!!」
よし! 登録だ。
〔 レシピスキル:『バニラアイスクリーム(葵)』を新規登録しました 〕
さっき登録したアイスクリーム液の出力をお願いします。
〔 アオイ、その前にスコーン生地を寝かせる時間が経ちました 〕
〔 また、シフォンケーキの焼き時間もあと十分ほどで三十分経ちます 〕
全部、並行して作っていると、わけがわからなくなりそうだ。
とりあえず、アイスクリームよりも先に、スコーンの準備を始めよう。幸いオーブンはもう一台ある。オーブンから天板を取り出して、バターを薄く塗る。
それから、簡易冷蔵庫からスコーン生地を取り出し、調理台を布巾でキレイに拭いて打ち粉をした。生地をめん棒で厚さ二センチくらいになるように伸ばすと、直径五センチくらいの丸い型で型抜きをしていく。
丸く型を抜いたスコーン生地を天板に並べていき、最後に焼き上がり時にツヤが出るように表面に牛乳をハケで塗った。
〔 『オーブン』百八十度・二五分で開始。二十分後にタイマーを設定します 〕
〔 シフォンケーキ、オーブン焼き時間、三十分経過しました 〕
僕は手にミトンをはめて、スコーンの乗った天板をオーブンに入れた後で、今度はシフォンケーキを焼いているオーブンの扉を開ける。
しっかりと、生地が膨らんでいるのを確認して、シフォンケーキをオーブンから取り出した。スポンジが縮まないように、調理台に型ごとひっくり返して冷ます。
「アオイ、ブルーベリーとイチゴの下準備できたぞ」
「ありがとうございます」
ウルフさんからブルーベリーとイチゴを受け取ると、
あとシロクマさんは、ひっくり返しているシフォンケーキの型を物珍しそうに眺めているので、見ていてとても癒される。
彼がシフォンケーキの型を指で触ろうとしたので「まだ熱いから危ないよ」というと、シュッと手を引っ込めた。相変わらず可愛い。
僕は、二つの鍋の中にそれぞれアイスクリーム液を入れると、ウルフさんが準備してくれたブルーベリーとイチゴを別々の鍋に入れてフタをした。
〔 可能です。調理製造スキル『粉砕』と『泡立て』を合成し『ミキサー』の作成を開始 〕
〔 成功しました 〕
『ミキサー』スキルを使用すると、鍋の中でそれぞれブルーベリーアイスの素と、ストロベリーアイスの素に変化した。
先ほどのバニラアイスと同様に、泡立てた生クリームと混ぜ合わせる。そして、『冷凍』スキルを使用しながら、かき混ぜる工程を繰り返した。
「シロクマさん、ブルーベリーとイチゴのアイスクリームの試食お願いします」
「ガッテン承知の助!」
スプーンを持ったシロクマさんが、パクパクとアイスクリームを食べていってくれる。
「おいしー!」
〔 レシピスキル:『ブルーベリーアイスクリーム(葵)』『ストロベリーアイスクリーム(葵)』を新規登録しました 〕
〔 スコーン、オーブン焼き時間二十分経過しました 〕
僕はまたミトンを手にはめると、スコーンのオーブンを開けて天板を出す。やはり少し焼きムラがあるので、天板を回転して後方だった側が手前にくるようにオーブンへ再び投入した。あと八分くらいこのまま焼いて。
〔 オーブン焼き時間、予定より三分延長します 〕
その間に、トッピングの準備をする。ブルーベリージャムにイチゴジャムはオーケーだ。リンゴジャムは、まだ冷蔵庫で寝かせよう。
パンケーキ用の生クリームをボウルの中に出力すると、『泡立て』スキルを使ってもう少し生クリームを固めにする。バターのように塗れる固さにしてから、スコーン用として登録してもらった。
〔 レシピスキル:『スコーン用生クリーム(葵)』を新規登録しました 〕
〔 スコーン、オーブン焼き時間二十八分経過しました 〕
スコーンを冷ますためにケーキクーラーを用意すると、オーブンを開けて天板を取り出した。天板ごとケーキクーラーの上でしばらく冷ます。
そして、その横で冷ましていたシフォンケーキの粗熱が取れたか確認をする。ほんのり温かいが、この熱さなら『冷却』スキルを使っても大丈夫そうだ。
よし! スコーン、紅茶のシフォンケーキ、アイスクリーム三種類までクリア!
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