Menuさん④
ウルフさんとシロクマさんは、スコーンと紅茶のシフォンケーキの味見をしてくれると、仕事に戻ると言って帰っていった。本当にありがたい。
僕一人じゃ、とても試食してられない量だ。僕は、丸椅子に腰かけると、フゥと大きく息を吐いた。少し休憩しよう。
〔 レシピスキル:『スコーン(葵)』『紅茶のシフォンケーキ(葵)』を新規登録しました 〕
喉が渇いたので、冷たい牛乳を飲みながら
〔 『取得条件:クッキーとスコーンを作る』をクリア。素材スキル『全粒粉』が解放されました 〕
〔 『取得条件:オーブンを使ったお菓子を三つ作る』をクリア。調理製造スキル『ばいせん』が解放されました 〕
〔 『取得条件:十個お菓子を作る』をクリア。調理製造スキル『分離』がエキストラ進化し『遠心分離』が解放されました 〕
なんだか、最強そうなスキルが解放されたようだ!
〔 調理製造スキル『遠心分離』を取得したことにより、素材スキル『クロテッドクリーム』の作成が可能となりました。作成を開始しますか? 〕
クロテッドクリームが作れるなら、スコーンのトッピングに加えられるし、パンケーキにトッピングしてもいいし、味のバリエーションが広がるのでありがたい。
〔 素材スキル『クロテッドクリーム』の取得に成功しました 〕
〔 ……承知しました 〕
ちょっと不服げな
丸椅子から立ち上がり、ウルフさんからもらった果物を確認すると、箱からバナナとオレンジを取り出した。『ボイル』スキルで湯を作ると、砂糖を入れてシロップを作る。オレンジの皮をむいて、薄皮や種も除去してから、シロップの中に漬け込む。
続いて、オーブンから天板を取り出すと、バターを薄く塗ってから強力粉をはたき、天板の中にレシピスキル『ロールケーキ用ビスキュイ生地(葵)』を使用して、ロールケーキの生地を流し込んだ。
一度、天板を持ち上げると、勢いよく調理台に落とす。気泡が生地の上に浮かんできて、不要な生地の中の空気が抜けたことを確認する。
〔 『オーブン』百八十度・二十分で開始。十分後にタイマーを設定します 〕
さてさて、止まっている時間はない。
次はバナナのパウンドケーキ。
〔 グラニュー糖の分量を〇・七倍で砂糖に置換。レシピスキル『バナナのパウンドケーキ』の材料の出力を開始します 〕
薄力粉、ベーキングパウダー、牛乳、砂糖、サラダ油、全卵。パウンドケーキの型にバターを薄く塗って、強力粉をはたく。バナナは三本むいて、二本は潰して、残り一本は包丁で輪切りにして飾り用にする。
それから、ボウルに全卵を入れると泡立て器で解きほぐした。そこに砂糖、牛乳、潰したバナナ、サラダ油の順に投入し、よく混ぜる。良く混ざったところで、上からふるいで薄力粉とベーキングパウダーを一緒にして振るい入れた。
ゴムベラで切るように混ぜ合わせていく。上手く混じったところで、型に流し込んで、こちらも一度型を持ち上げてから勢いよく調理台に落として、生地の中の余計な空気を抜いた。
オーブン百六十度、五十分で。四十五分後に、一度お知らせをお願いします。
〔 『オーブン』一六十度・五十分で開始。四十五分後にタイマーを設定します 〕
〔 もうすぐロールケーキのビスキュイ生地、十分経過します 〕
ミトンを手にしてロールケーキのオーブンを開けると、また天板を回転して後方だった側が手前にくるようにオーブンへ再び投入する。あと五分ってとこかな。
〔 五分後にタイマーを設定します 〕
待っている時間で、僕はプリン・ア・ラ・モードに着手する。果物を切ったり、生クリームを盛ったりするだけなので、気楽に作成できた。
そういえば、プリン・ア・ラ・モードは、取得条件の作ったお菓子にカウントしてもらえるのだろうか?
〔 カウントされません。盛り付けのカテゴリーになります 〕
ですよねー。多少ガッカリすつつも僕は黙々と、その後も作業を続けた。
焼きあがったロールケーキ用スポンジケーキを、乾いた清潔で大きいな布巾の上に置く。そして、端をケーキナイフで切り落とし、巻きやすくした。
八分立ての生クリームを作ると、生クリームをスポンジケーキに塗っていく。先ほどシロップに漬け込んでいたオレンジと、ウルフさんに下準備してもらったイチゴを中に並べ、布巾を上手く使って端から巻いていった。
そのまま布巾で包み込んで、ギュッと抑えると、形が完成するまで簡易冷蔵庫へ入れて冷やす。
〔 もうすぐバナナパウンドケーキ、四十五分経過します 〕
オーブンを開けて、ケーキに竹串で刺して火が通っているか確認した。
焼き上がったケーキをオーブンから取り出すと、型ごとケーキを持ち上げて焼き縮み防止のために、少し高めの位置から調理台へ型を落とした。それから、型からケーキを取り出し、ケーキクーラーの上で粗熱をとる。
時計を見上げると、もう十九時を回ろうとしていた。さすがに、疲れ果ててきたので、今日はここまでにしよう。
僕は、バスルームの扉に念のため『入ってます』と張り紙を貼って、シャワーを浴びた。
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