144話 お買い物④
レディース服を扱う店舗に到着し選ぶ場面になっている。
色とりどり、種類も豊富で様々な選択肢がある。
ボタンで留める一般的なパジャマもありだが折角だからオシャレな要素があるものを選びたい。
「舞さんは夜寝るときどうしていますか?」
年上のお姉さんに夜の衣類事情を聞くと彼女は手に持っているピンク色のボタン付きパジャマを元に戻しながら答えようとする。
「私? 私は、のー……コメントよ」
「ノーブラノーパン、真っ裸ですか?」
「大きな声で言わないで。そうだけど」
普段堂々としている舞さんも流石に顔を赤らめて恥ずかしそうにしている。
かっこいい面が強いがこのような可愛い部分もあることのギャップにますますこの人が好きになる。
彼女は同性としての憧れの人物だからいろいろなことを吸収したいと思っている。
「すいません……でも意外です」
「そう?」
「オシャレでキリっとしてるからしわ一つないパジャマで寝ているのかと。でも流石に私はそれはできません」
「意外と心地良いよ?」
「……できません」
舞さんの言うような姿で寝ている自分を思い浮かべてみるがちょっと挑戦するには勇気が必要だ。
舞さんは私の肩をツンツンとして結を渡すようにジェスチャーする。
結を渡すと身軽になりより集中して品物に目を通すことができそうだ。
「で、どんなのにするの?」
「少しオシャレな感じがいいですけど……ワンポイントで何か柄が入っているのとかですかね」
「いやいや。折角だから冒険しましょうよ。近藤君を魅了するチャンスよ」
「そ、そうですね。背伸びしてみます」
彼の家に来た時から着古したTシャツで寝ることが主でそれが当たり前となっていてまるで熟年の夫婦のようなお色気のなさであった。
確かに今まではそれで良しとしていたが今はそうではない。
彼により私と言う女を意識してもらうために、新婚カップル感を出すために少しお色気要素があるものをチョイスしてもよいかもしれない。
「じゃあ、ネグリジェとか」
「ネ、ネ。だ、駄目ですよそんなの」
「遥ちゃん。変な想像してるでしょ」
「はい。エロいものかと」
「マンガとかの創作に影響されやすいのね。別にお色気な商品ばかりじゃないよ。むしろ一般的な部屋着、寝間着よ」
「ホントだ。これ可愛いですね」
私が広げたのは真っ白な長袖で胸元が少し広いキャミソール型のもので、胸元に植物の刺繍が施されている。
今まで着たことも買ったこともないもので一目で欲しくなった。
適度な色気もあるが上品さがそれを上回っていて美麗な私がより美麗になりそうだ。
「いいんじゃない。でも、それ袖ないけど寒くない?」
「大丈夫です。暑がりなんで。寒かったら軽く何か羽織ればいいので」
「そうなの? じゃあいいんじゃないの。カップも取れるし、胸元も広めで結ちゃんにおっぱいあげるときも支障ないね。長く使えるね」
舞さん目線は広く深く見てくれている。
そんなこと考えていなかったが確かに今はまだ生後三か月に近い結がいる身だ。
そんな身でも私はオシャレしたい欲もあるし、優に綺麗だと思われていたいし優も綺麗な私の方がいいはずだ。
でも、私は私のためにこの服を買おうと思う。
「そうですね。買いです」
「大きさそれでいいの?」
「はい。大丈夫です。私の勘ですけどこれです。授乳が終わったらこの大きさに落ち着くと思うのでこれにします。私の勘、当たります」
サイズをもう一度確認して舞さんに微笑むと結を抱える彼女は何故か羨ましそうな顔をしていた。
それを持ちレジに向かい会計をする。
今日の夜からこれを着ると思うとまた一つ優との暮らしが改めて楽しみになるのとともにスタートラインに立ったと思える。
スマートフォンも白、寝間着も白。
何色にもなっていない真っ白な近藤遥としての人生の始まりの準備が整いつつある。
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