143話 お買い物③
「舞さん、助かりました」
舞さんの付き添いもあって無事にスマートフォンを購入することができた。
当時どうすればいいか分からなくて携帯ショップに駆け込んで番号保管してもらっていたから番号自体は使えるらしい。
そのまま料金を延滞したら今後の信用に影響する思ったのだ。
「よかったね。契約できて」
「はい。一緒に話聞いてくれてありがとうございます」
私の手には今買った白色のスマートフォンがあり、久しぶりの感覚だ。
オモチャを買って貰った子供のような気分である。
「他に何か買うものある? オムツとか缶ミルクとか重いもの車で手伝うよ。帰りも送っていてあげるからまとめ買いしなさいな」
「本当ですか。お願いします。毎回仕事帰りに買ってきてもらうんですけど、大変そうで」
日中、私も買い物にスーパーは行くけど結もいるからもてる量には限界があるし、優に買ってきてもらうにも徒歩であるから大変だ。
車で運んでくれるということでとてもありがたい。
「……」
「結?」
結が少し落ち着きが無くなっていることに気が付いた。
「時間もあるしそこでお茶でも飲みましょうか?」
「はい。私は紅茶で。結のオムツを替えてきます。これお金……」
「お金は後でいいから。慌てないでね」
彼女の好意に甘えてお手洗いに行ってベビーベッドに寝かせて新しいものと取り替える。
私も上手になったものだと感じながら慌てずに手順を踏む。
「さて、結。いいかな?」
「あっ。あっ」
結も満足そうにしているので一件落着である。
「お待たせしました」
「大丈夫。これ、遥ちゃんの紅茶ね」
「ありがとうございます」
舞さんはとても濃いホットのブラックコーヒーを平然と飲んでいる。
私は砂糖を入れた冷たい紅茶で、こんなところでも舞さんの大人びた様子を感じることができる。
一息つきながら次の買い物についての話となる。
「あと、夜寝るときに着る寝間着を買います」
「パジャマ?」
「はい。伸びきって古びたTシャツを着ていたんですけど、優にそろそろ買い替えるように指示を受けました」
「何でそんなの着てたの?」
「結がお腹にいたときに引き延ばしたものしか手に持っていなかったので。まぁ使えるしいいかと」
「でも、衣食住の衣よ。ちゃんとしたもの着て欲しいのよ、彼は」
「はい。三枚ぐらい買って来いと。雨降ったら乾かないからって」
彼女は大笑しながら会話を楽しんでいる。
舞さんは私よりも前に彼の人柄を理解しているからこど楽しめているのだろう。
その逆で仕事場の彼の姿を知らないけれど家での様子は私しか知らないのである。
少しだけ優越感を覚え、残りの紅茶を飲み口の中に入った氷をガリガリとかみ砕いた。
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