135話 経験
「私……そういう経験、しちゃってるしさ」
「ん? 何を?」
変な人と思われるかもしれないけれど私は彼の体により強く自分の体を押し付けた。
時々、あの人に触られていた体が嫌になる。
自分をいいと言ってくれている優に本当に申し訳ない。
「結が存在する以上わかると思うけど、もう私の中にさ……別の男のがさ……」
「そういうことか」
口調から彼も私が伝えたい意味が理解できたようだ。
「そういうの……嫌じゃないの。バージン? 処女? みたいなのが好きなんでしょ、男の人って」
「創作に影響され過ぎ。気にしてない」
「そうなの?」
「世の中にはいろんなひとがいるから。世の中の子連れ再婚の人たちはそういうこと考えてないでしょ、きっと」
「うん……そういってくれると安心する」
彼は本心で言ってくれているのだろうが、嘘でもそうやって言ってくれたほうが自分を許すことができそうだ。
「私、自分の体が嫌。折角さ、あなたと一緒になれるのに、前の人にたくさんされたから。他の女とかそういうお店とした体で。たまに自分が汚された感覚になって。それで優と触れ合ったりするのは本当に申し訳ないよ。そんな私に何の魅力があるんだろうなって」
「大丈夫。遥は綺麗だよ。霞まないよ」
「本当に? ドキドキする?」
「するよ。自分で思っているより遥は可愛いし綺麗。心もね」
凄く嬉しい言葉だ。
私も女だから可愛いとか綺麗とか言われたら気分も上がる。
体を押し付けたまま彼に聞く。
「私にドキドキするの?」
「まぁ、そうだね」
「異性だってちゃんと思ってる?」
「うん」
私の悩みがスッと引いた感覚になる。
私が感じている以上に優は惚れてくれている。
その証拠に彼の顔が赤くなっている。
抱きつきながら彼を半回転させて覆いかぶさるような体勢となる。
「何してんの?」
「本当にドキドキしてくれてんのかなって。優を全身で感じてみようかな」
優が布団の上で仰向けとなってその上に私の体が密着している。
お互いの体温が混じり合いとても温かい。
私の全体重を彼が支えてくれていると思うと包まれたような安心感がある。
そして彼はそのままの体勢で両手を背中に回して抱きしめてくれた。
「遥の事が大好きだから」
「優、私の事を選んでくれてありがとう」
私も人間だから重く、優も少し大変そう。
体重だけではなく人としても重い方だ。
でも、その重さ全てを支えてくれている優を愛している。
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