134話 やっと寝る?

 私たちはいつものように三人で寝る。

 昨日までとそう変わらない景色であるが、やっぱり嬉しい。

 結と私を想ってくれる人をお父さん、夫にできるのだ。

 テンションは上がるに決まっている。

 眠気も何だか吹っ飛んだ。

 自分の布団から優の布団に入って手を握った


「どうした? どうした?」

「手を繋ぎたい。繋いで寝よ?」

「いいよ」

「やった」


 彼は優しく私の手を握ってくれた。

 やっぱり彼の手は安心するし、いつまでも握っていられる。

 せっかく握ってくれたけれど少し遊びたくなって一度外し、手の甲や指先を触る。

 彼の片手の五本の爪を一本ずつ触りながら質問してみる。


「爪短いね」

「ん? そうだね。ネイルとかしないし……結と触れ合ったりするからね。傷つけたら嫌でしょ。ちゃんとヤスリもしてるよ」

「そっか」


 爪一つでも結の事を考えている彼のことが本当に大好きだ。

 結のほうを見ると心地よさそうに眠っている。

 夜泣きはひどいほうではないから彼とのこういう時間も作れる。

 こうして二人でくっついていると本当に欲しかった幸せを手に入れることが出来たことを実感する。

 優のこと……愛している。

 だからこそ少し申し訳ない気持ちもある。

 彼の人生を奪ってしまったのではないかと。

 きっと私以上にいい女性と巡り合う事なんて造作もないことだ。

 優も私と一緒にいたいと言ってくれた。

 それはとっても嬉しいことだが結のことも含めてだと思う。

 本来通るべき恋愛のプロセスをすっ飛ばして、その経験を奪ってしまったのではないかと思ってしまう。

 本当に私でいいのだろうか。

 彼の体に抱き着き、確認しておく。


「ねぇ、優?」

「ん」

「後悔してないの? 今からでもやめられるよ」

「何を?」

「バツイチで子供も……生まれて間もない赤ちゃんがいてさ……お金もない、親にも頼れない、何もできない私と一緒になって」

「それがダメなことなの?」

「だってさ、あんまりさ遊べないしさ……二人きりになれないし。恋愛的なことしなくていいの? 私と一緒になったらそういう経験一生できなくなるんだよ」

「まぁ、いいんじゃない? 恋愛的……デートとかってことかな。二人きりになりたいっていうのは……なかなか難しいけれど、結と遥と一緒に思い出作れたらそれでいいよ」


 優しい顔を見せてくれた。

 やっぱり彼しかいないということを実感する。

 それでも私は既に一回結婚して子供もいる。

 私の体は既に他の男に触られている。

 優は嫌じゃないのかな?

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