スタートライン
129話 再スタート
俺にとっては長いような短いような二か月だった。
遥にとってはどうだっただろうか。
結にとってはどうだっただろうか。
でも今まで過ごした時間はもう過去のことだ。
今まで積み上げた信頼はそう簡単に崩れることはないほどに強固なものであると確信している。
その互いの信頼さえあればこれから、地に足をつけて三人で生きていくには十分だ。
いばらの道を通ってここまで来た女性である遥は配偶者となる。
母親としての彼女の姿を見ていると彼女以上に結の母親にふさわしい人物はいないと感じる。
遥は母親である以前に女性であり、俺に本質的な女性として見て欲しいという。
最初に出会ったときはそんな風には絶対見られなかったし、見てはいけないと思った。
それが彼女が俺に対する安心と信頼につながるから。
共に過ごしていくうちに彼女のことを少しずつ異性と認識して惹かれた。
そして、結婚することになる。
遥を死ぬまで幸せにし続けなければならない。
その遥には一人娘がいた。
そして俺の娘となる。
俺と血は繋がっていないが、本当の娘として見守る。
零歳の結が成人するまであと十八年。
首がすわったり、歯が生えたり、歩き始めたりとより人間らしく成長し、幼稚園、小学校、中学校と教育を受けて社会に出るために学び始める。
でも、それはわずか十八年で終わってしまう。
結には、やりたいことはやらせたいし、そのために必要なものは鉛筆一本でも買い与える。
つらい思いや悲しい思いはさせないように俺ができることはするし、俺ができないこともする。
まだ二十一歳、もうすぐ二十二歳の俺が、急に親になったからとはいえ偉そうなことは言えないが、これだけは言える。
結には幸せになってもらわないといけない。
遥も同じようなことを考えているだろう。
俺は遥と結のことをより理解と共感ができるようにして、これからの生活がより豊かなものにする。
周りの人が変わったわけでも、社会が急に変わったわけでもないが、今日から再スタートとなることは間違いない。
ようやく三人が揃ってスタートラインに立つことができた。
ゆっくりと、ゆっくりとその道を歩んでいくことになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます