128話 絶対に幸せになろうね
優がいなければ私と結はどうなっていたのかな。
優がここまで優しくしてくれていなければどうなっていたのかな。
あの時、優が扉から出てくれていなければ私たちはどうなっていたのかな。
一日来るのがずれていたら、一時間遅かったら、一時間早かったら、もしかしたらあなたには巡り合うことができていないかもしれない。
だからあの時でよかった。
優はどうして結のことを想ってくれるの?
優はどうして私のことを想ってくれるの?
それはただの自己満足じゃないよ。
優の心があったかいからだよ。
買って貰った手袋は一生バラバラになることはない。
私たちが優から離れることはない。
この冬の一つ一つの出来事は私と結、そして優を結び付けてくれたものだから。
毎冬、手袋を見るときに思い出す。
お腹が大きくなってもう少しで会えるって思ったこと。
年末に結が生まれてきたこと。
カラオケで過ごしたこと。
ピンポンダッシュしたこと。
公園で一夜過ごしたこと。
そして、優に出会えたこと。
お風呂を用意してくれたこと。
私のために必要な言葉を掛けてくれたこと。
三人で川の字寝たこと。
手袋を買ってくれたこと。
沢山お喋りしたこと。
結のためにお酒を飲まなかったこと。
泣いている私の背中をさすってくれたこと。
初めて結を抱いてくれたこと。
一緒に恋バナしたこと。
結のためにケーキを買ってくれたこと。
熱を出している結のために雨の中帰ってきてくれたこと。
結が熱を出して病院に連れて行ってくれたこと。
一緒の布団に入って不安を吐露したときに一緒になって考えてくれたこと。
そして結のお父さんになってくれたこと。
私と結婚してくれること。
キスしたこと。
たくさん幸せだった、絶対絶対忘れない。
そして、これから先の未来もたくさんの幸せが訪れると思う。
もちろん楽しい思い出だけじゃないかもしれない。
それが一つ、また一つと積み重なり私たちの幸せになる。
あのとき押したインターホンを軽く触りながら目を閉じ、「あの時のお願い叶ったよ」と誰にも聞こえないように呟いてから家に入った。
「寒いね、結。ごめんね、すぐに選ぶから。どこの家にしようか……この家はどう?」
「ギャーギャー」
「嫌だ? この辺をちょっと歩くからどの家がいいか結が決めてよ」
「ギャーギャー……キャッキャッ」
「ここ? この家がいいの? 分かった、ここにしよう」
――ピンポーン
「お願いします。結を、私たちを幸せに導いてください」
――絶対に幸せになろうね。
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