153話 焦り
昨日に督促電話があってから対応策を、優に頼らない対応策を考えたが浮かぶことはなかった。
優に相談すれば助けてもらえるのかもしれない、いや絶対に助けてくれる。
彼はそういう人間なのだ
でも、このことは私の責任であるし、私がけじめを付けなければならないことだ。
犯罪すれすれのラインにいることは自覚している。
お金を払えないことを自覚して、それを黙って対応してもらったのだ。
優に説明した話には少しだけ盛った部分がある。
受付に待ってくれと言ったことが違う。
請求書を貰ったのは事実であるが、本当はそれを受け取ったら裏口からそっと出た。
つまり、無断未払いだ。
「どうにかしなきゃ……」
彼が朝早くに家を出た後に私はスーパーに設置されていた求人広告雑誌をめくる。
短期間でたくさんのお金を得なければならない。
時間外の深夜で初診の病院だった。
そもそもその時までろくに検査を受けていなかったからデータもなく初めから検査もして料金が高くついた。
今は優がいるから早朝でも深夜でも結を見てくれるから仕事でお金を稼ぐことができる。
しかしあっという間にページをめくり終えてしまった。
出産費用を稼ぐにはあまりにも時間がない。
チラシの裏に時給と働ける時間を筆算したり、支払う金額を時給で割ったりして、おおよその計算をしているが全然足りない。
「どうしようどうしよう……」
パソコンを立ち上げてインターネットで、もっと短時間で満額を稼げる方法を調べる。
一気に稼げる仕事なんてないのは一番わかっているはずなのに、焦りによって自分を見失ってしまう。
いろいろ調べているあるサイトに目が留まった。
その瞬間結が泣きだし、私も吐き気が止まらなくなった。
でも、今の私に出来ることは限られている。
サイトをクリックしては見て、クリックしては見てを繰り返した。
お店でサービスを提供する、あるいはSNSのようなもので募ること。
吐き気が止まらなくなって、唾が大量に出てくるがそれを飲み込む。
この原因を作ったのは私だ。
今から面接やら採用やらとなったら時間がかかる。
自分で動くしかない。
「……嫌だな……」
自分が一番嫌なことは自分でわかっているのに、これしか方法がないのだろうか。
いや、もう一つある。
近藤優にただ「助けて」と一言だけだ。
でも今回は絶対に使いたくない。
だからそうするしかない。
「優、ごめん。やっぱり私、汚くなるかもしれない」
結をあやすために抱きかかえていると落ち着いたようだ。
インターネットを使っていたら既に夕方になっている。
お風呂が終わるころには優が帰って来るから、そしたら食事にしよう。
いつも通り、日常を送れば気が付かれない。
普段通りの私を装い、彼を騙して、誰のためにもならないことを実行する。
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