126話 大好き③

 遥さんの心からの言葉に俺の心も温かくなり彼女が投げた直球が心に響く。


「だから、私と結婚して」

「え? 結婚前提で結のお父さんにって話をしているのだと。遥さんも新婚さんみたいなことができないとかいってたから結婚が前提の上での話だと思ってた」


 今までの関係でも心構えさえ変えれば結の父親として活動することはできるだろうけれど、どうしても制限は出るというのもある。

 遥さんと結婚することでできることが増えるだろう、より近くで二人を支えることが可能になる。

 意味ありげにニコニコしながら腕を指でツンツンと突かれる。


「そこまで考えてくれるくらいには私のこと好きなんだね。可愛くて美しくて優しい私に惚れちゃった?」

「一か月しか経ってないけど……好きだよ。遥さんのいいところも悪いところも受け入れることができるのは俺しかいない……って感じです」

「そっか。じゃあ優さんから言って欲しい」


 即興で愛の告白をしなければならないが、抱えている結と目の前で今か今かと期待している顔を見ると言葉はスッと浮かんでくる。

 結を驚かせないように立って、遥さんの前に移動した。


「遥さん。絶対に幸せにする。結婚しよう」


 短いかもしれないけれど、これが俺の言葉だ。

 遥さんはツーっと涙を流している。

 出会ってから彼女はたくさん泣いた。

 今日も泣いていた。

 それでも枯渇することがなかった彼女の涙のタンクを空にする勢いで溢れている。


「ううう、嬉しいよ。もう罰が当たりそうなくらい幸せだよ。もっともっと幸せになろうね、三人で」

「泣かないで。鼻水出てるって」

「本当に嬉しいから。忘れられない一日になったよ。勇気だして良かった。あっ、ねぇねぇ?」

「どうした?」


 何かに気が付いたようで左手で俺の手を持ち上げてそっと重ねた。

 泣いたり嬉しかったりしたからか彼女の手はホカホカに温まっている。

 綺麗な顔も火照っていて暑そうだ。


「後日、指輪をお願いします。憧れているから。ダイヤモンドが付いたのがいいな~」

「約束する。一緒に見に行こう」

「うん。お願いね。さぁ、結も寝ちゃってるから、帰ろう。私たちの愛の巣に」

「愛の巣って、二人きりじゃないから違うでしょ。結もいるからあの家はいいんだよ」

「いいじゃん。細かいことは気にしないで。新婚っぽい感じも出したかったんだよ。愛の巣って言葉、少しアダルトな響きでドキドキするよね?」

「テンション高いな~」

「えへへ、嬉しいからね」


 公園を出た後もお互いの手が離れることはなかった。

 結は外の暖かくなってきた空気が心地よかったのか、大人の話に疲れて寝てしまっている。

 家までの道中で遥さんはすっきりとした顔で話しかけてきた。

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