84話 長い一日④
「……はっ、なんか夢見たな。最後に夢の中の私はなんて言ったんだろう?」
現実に戻って来ると覚えていられるほど鮮明であった夢の続きが気になるが、眠気が覚めスッキリした。
楽しい夢を見るのは好きだ。
気分がいいし、起きた後の体の軽さが段違いだ。
結の様子を見るとまだ目を閉じて寝ている。
結の額を触ると、軽くなったはずの自分の体がずんと重くなった。
「……えっ、結……」
結の体が熱い。
手のひらに結ジーンとした嫌な熱さが伝わってくる。
熱を出してしまった。
「どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう。ゆい、ゆい。大丈夫?」
結が熱を出すのは初めての経験で何をどうしていいのか全く分からずにパニックになっている。
冷やせばいいのか、それとも暖かくすればいいのか、わからない。
結がつらそうにしているのが目に見えてわかる。
窓を見るとぽつぽつと雨が降ってきている。
私の思考はほとんど停止してしまっている。
「ゆい……。どうすればいいんだろう……、誰か……助けて……」
私の目からも何かが降ってきそうだが、堪える。
そんな時に頭に浮かんだのはいつも私たちのことを考えて、私を助けてくれて、結を助けてくれる人だった。
壁掛け時計を見るが彼の会社の昼休み時間は分からない。
迷惑になるかと一瞬ひるんだがそれどころではない。
私一人では何も出来ないし、してあげられない。
頼れる人、頼っていい人は私たちには近藤優しかいない。
緊張で重くなった体で固定電話までたどり着く。
受話器を持ち上げ彼のスマートフォンの番号を押す。
指が震えて押し間違えて一度受話器を置く。
「落ち着いて、私」
もう一度受話器を上げて番号を押す。
ボタンを押し進めるに連れて彼に近づいている気がする。
プルプルプルという音が鳴り始まり彼が電話を取るのを待つ。
まだ数秒しか経っていないのにもう何時間も待っているかのような長さだ。
「優さん……」
その時受話器から私が今聞きたくて聞きたくて仕方がない声が聞こえた。
『はい。どうした?』
その声が耳に入った瞬間目に溜めてたものが一気に流れ出した。
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