79話 一か月②
食事が終わり結ちゃんの二か月のお祝いをするところである。
遥さんはケーキと皿をテーブルに配膳してくれている。
俺は買って来たモールを壁にテープで留めて飾る。
主賓はそのキラキラしたものを目でゆっくりと追っている。
「結ちゃん、生まれてから二か月だよ」
「……あー?」
「さぁ、優さん、食べようか」
ロウソクが二本刺さったケーキが机の上に到着する。
俺がライターで火を点けると、静かにその炎が揺れる。
「では、結ちゃん。おめでとうございます」
横にいる遥さんが結ちゃんを持ち上げると二人とも嬉しそうな笑顔でケーキに接近する。
炎にあたっている二人の顔を見ると、やって良かったなと感じる。
「ありがとう。じゃあ、消すよ」
フッと遥さんが小さく息を吐くとロウソクの炎は消える。
遥さんは結ちゃんを置くと拍手をして歓喜を表す。
くす玉も遥さんが楽しそうに割ってくれた。
「ほんと、結が生まれてきてくれて良かった。こんなにも幸せな時間を過ごすことができるなんて。そして優さん。結が二か月ということは、ここに来て一か月になろうとしています。あなたのおかげで私たちはこうして生きていることもできるし、楽しい思い出も作ることができています。ありがとう」
ここに来てから一か月になるのか。
二人が来る前と後では生活は大きく変わったが、楽しさが上回っている。
結ちゃんが大きくなって重くなってきてたり、声が少し出し始めたり、起きている時間が長くなったり。
一歳、二歳と成長していく結ちゃんをこの先も見たい。
遥さんも頼ること、人に甘えることが多くなって、自分一人で抱え込むこともない。
綺麗だし可愛らしい一面もたくさんある。
二人とずっと居たいし、二人と同じ時間を過ごしたい。
このようなことを考えていると遥さんは腕をツンツンとして不思議そうにしている。
「どうしたの? 私のスピーチおかしかった?」
「いや、どういたしまして。俺も楽しいよ」
「じゃあ、食べよっか」
小さなケーキを二人分に切り分けて皿に移す。
フォークでそれを刺して口に運ぶと甘いクリームが口いっぱいに広がる。
イチゴは一人二個ある。
俺は一個食べたが、遥さんは既に二個とも食べてしまったようだ。
「おいしい?」
「おいしいよ。久しぶりだよこんな立派なケーキ」
「そっか。来月もする?」
「いやいや。毎月してたら体がケーキになっちゃうよ。次は半年のときかな? いるよ、私たち。ここに」
「うん」
遥さんはフォークを静かに置きこっちを向いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます