16話 買い物③

 山のように購入した結ちゃんの身の回りのもの両手に持って歩く。


「大事にするね。結の品も」

「うん。俺一回車戻って積んでくるよ。もう少し買い物しないと。もう少しいい? 結ちゃん、もう少し頑張れる?」


 結構な時間を使ってベビー用品店にいたが、ここで終わりにはできない。

 結ちゃんもあまり外にいては落ち着かないし疲れてしまうだろうがもう少し付き合ってもらう。


「私も行く、迷子になったら本当に困る。この年齢で迷子センターは悲しすぎる。しかも子供もいて」


 そういって車に戻り荷物を積んだ。

 後ろの席に荷物を置くと荷物が占領状態だ。

 身軽になって向かったのは、ドラッグストア。


「なんか、日用品を買って。遥さん用のシャンプーやらリンスやらトリートメントやら買って。ボディーソープ派なのか石鹸派なのかわからないけど。なんかあるでしょ、女の人は好みが」

「至れり尽くせりだね。トリートメントとか使ったことほとんどないや。体洗う石鹸は液体派だな」

「じゃあ、気に合うもの買って……何万円もするのはご遠慮いただけると」


 一プッシュ何万円のするものは流石に財布が凍えてしまう。

 遥さんは大笑いで回答をした。


「私もそんなの怖くて使えないよ。こぼしたら泣くよ~、そんなもの」

「じゃあ、好きに買っていいよ」

「本当にありがとう」

「あの家は、二人が出ていくというまでは自分の家のように過ごして構わない。少しでも快適な環境でな」

「うん」

「じゃあ、必要なもの選んでて、あと歯ブラシと歯磨き粉とか……必要なものカゴ入れて」

「わかった」


 俺は彼女たちから一旦離れ、店内を回った。

 普段は車で買い物に行くわけではないからついでに重いものや大きいものを買おうと考えた。


 ティッシュペーパー、トイレットペーパー、トイレの洗剤、お風呂の洗剤……を順にカゴに入れていると、遥さんが追い付いた。

 そこには泣いてしまっている結ちゃんがいた。


「ごめんね。道具選んだからこれお会計お願いします。駐車場のベンチにいるから。寒くしないようにするから」

「うん。ごめんね。時間かかって」


 遥さんの選んだ日用品が入ったカゴを受け取ると、エスカレーターで上へと消えていた。

 会計をしてしまおうと思ったとき、ベビー用品売り場に差し掛かった。

 専門店よりかは規模は小さいがより必須品が置いてある。

 少し覗いてみると、先ほど買ったようなオムツや粉ミルクなどが置いてあり基本的な道具は変えているようで胸をなでおろす。

 少し奥まで入ってみたときに先ほど買ってなかった、赤ちゃん用の洗剤などを見つけた。

 本人たちがいないが使うものだと思い、ためらうこともなく入れることができた。

 ベビー用品を追加で何点かをカゴに入れてレジに向かい、会計を済ませた。

 レシートを受け取りそれを袋に入れて、屋上駐車場へと向かった。

 扉の前の屋内のベンチに座って待っていた二人と合流することができた。


「お待たせしました」

「ごめん、途中で抜けて。結も泣き止んだよ」

「疲れちゃったかな? ごめんね結ちゃん」



 車のドアを開け、荷物を助手席に置いた。

「お買い物、ありがとう」

「うん。知らぬ間にいい時間になってるな。帰ろうか、家に」

「そうだね、お邪魔するね」

「ああ、一日過ごしてみて違うと思ったら買ったもの持って俺の家から次に行っていいからね」

「そしたら、また寒空のなか女と赤子が……」


 下手な演技を挟んだが結構リアルだった。


「わかった、わぁった」

「じゃあ、戻ろ〜。運転ご安全に」


 シートベルトを装着して、家へと車を走らせた。

 俺一人ではない、誰かの命を運んでいると考えると、少し緊張した。

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