第15話 先導者の条件

「ありがとう。君のおかげで研究が進められそうだよ! これでより多くの人が助けられる!」


 ビゼルさんが俺の両手を握り感謝の言葉を伝えて来る。


 そもそもメガル草は沢山あるから、タダであげてもいいくらいだが、前世の記憶がある俺はもったいない病が発動してしまい、売れるなら売りたいと思ってしまった。


「でもメガル草はたった二つしかないのに、超濃厚ポーションが作れるんですか?」


「ああ。錬金術には『錬金水』を複製する錬金術があって、メガル草で錬金水の開発が進めば、複製して使い続ける事ができるのだ!」


「ただ複製する素材の方が高いと話にならないのですけど、今のメガル草なら複製した方が安いという訳ですよ。アルマさん」


 ビゼルさんとミールさんが一緒に説明してくれる。


 ふむふむ。つまり、メガル草が出回ってしまうと、複製するよりはメガル草を使って作った方が安上がりになるのか。


「もしメガル草が必要な時はまた声をかけてください。今しばらく王都にいると思いますので」


「おお! それは心強い! この他にもメガル草を使った錬金も練習したいと思っていたのだ。その時は宜しく頼みます!」


 ビゼルさんと握手を交わす。


 その時。



 ――【才能『先導者』より、導かれた者の人数が1人を越えました。特典が付与されます。】



 ん? 導かれた者? 1人? 特典?


 初めて聞く言葉が続いて、何を意味するのか分からない。


 冷静に現状を確認する。


 『先導者』という才能を考えた時、誰かを導く意味にも繋がる。


 俺が持つ究極スキル『道しるべ』と似た意味を持つ。


 もしかしたら、この究極スキルを持つ事が先導者になれる条件だったりするかもな。


 さて、先導するという意味合いを考えて、ビゼルさんに何かしらを導いた・・・とすると、今回の導かれた人数が増えた事の辻褄が合う。


 ビゼルさんは研究を進めたかったのを、俺の介入によって進めるようになった。


 それによって導いたという判定になったんだな。


 ここで一つこの才能を育てる方法を知る事ができた。


 本来なら才能は、その才能にまつわる事を繰り返すことで進化していく。


 例えば、賢者の場合、魔法を使い続けたり、剣聖の場合、剣術を使い続けることで才能が成長し、最終的に成長し切ると『極』の才能を得る事ができるという。


 『賢者ノ極』みたいな感じになるとそうだ。


 そんな中、せっかく手に入れた才能『先導者』を強くする方法を探っていた。


 それがまさかこんなにも早く条件が見つかるとは思いもしなかった。


 誰かを導く事。それが『先導者』を成長させる方法なんだな。


 さて、今度は獲得した特典という部分だ。


 特典は大抵がスキルだが、中には物理的な物が支給される場合もあるという。


 スキル欄を開いてみたが、特にスキルが増えた感じはしない。


 そもそも特典を獲得したというアナウンスも聞こえてこなかった。


 特典というのは一体どういうことだ?


「アルマさん? どうかしたんですか?」


「いいえ。こちらこそ、おかげで当分の資金が手に入ったので、シャリーの迷惑にならなくてよかったです。ありがとうございます」


 ビゼルさんと挨拶を交わして、工房を後にした。




「アルマくん? さっきの聞いてもいい?」


「ん?」


「アイテムボックスって凄いスキルを持っているんだね?」


「あ~あれは特殊なアイテムボックスでな。何故か分からないけど、植物しか収納できないんだ」


「え!? ミールさん。そういうアイテムボックスってあるんですか?」


 一緒に歩くミールさんが真剣に悩む表情を見せる。


「ううん。聞いたことないわ…………珍しいレアスキルなのかも知れないわね」


 珍しいスキルはレアスキルというのか。


「あ、シャリー、ミールさん。もしよかったら、どこか食事に行きませんか?」


「えっ? いいの?」


「もちろんだよ。二人には凄く助かったし、アイテムボックスの事も・・あるからね。ねえ?」


「ふふっ。アルマさんも油断がありませんね? お言葉に甘えさせていただきます」


「ええ。ぜひ。それに僕もまたこの街の美味しい店を知らないので、それが目当てでもあるんです」


「それなら私にお任せください。シャリーちゃんもそれでいい?」


「はい!」


 行き先はミールさんに任せて俺とシャリーはその後ろを付いて行く。


 隣を歩くシャリーが嬉しそうに鼻歌を歌いながら軽いスキップをする。


 見た目だけなら美少女でさぞモテるだろうけど、どうやら特殊性癖をお持ちのようで、うちの妹に嫌らしい牙を向けていたのがもったいない。


 大通りを進み、少しこじんまりとした小道に入っていくと、ちらほらカップルの姿が見える。


 石の階段を上っていくと、テラス席があるお店にやってきた。


「いらっしゃいません~!」


 元気な声と共にとある女の子が出て来た。


「!?」


 女の子を見た時、俺は思わず驚いてしまった。


「はにゃ? お客様? 私の顔に何か付いてますかにゃ?」


「す、すまない。実はその、人族以外は初めて見るので」


 そう。


 目の前の女の子の頭の上には、可愛らしい猫耳が生えていた。


 …………人族の耳がついている部分はどうなっているのか、少し気になるな。


「猫耳族という獣人族なんです」


「獣人族!? ――――――なんて可愛いんだ!」


「はにゃ!?」「っ!?」


「ふふっ。アルマさんをここに連れて来たのは大正解でした」


「アルマくん。指が嫌らしいよ?」


 おっと。俺とした事が、猫耳を見て興奮してしまったようだ。


【お・に・い・ちゃ・ん?】


「クレア!? ご、ごめん!」


【んも! モフモフは私達以外はダメだからね! ねっ!?】


「わ、分かった!」


 当然のように妹に怒られた。

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