第2話 継承
どうしてこうなった。
いや、何となく予想できていた事でもある。
そもそも朱雀ノ卵というからには、朱雀の子供だったんだ。つまり目の前に
俺はどうやら転生を果たしたらしいが、その理由は知らない。しかし、目の前に佇む巨大な鳥はこの世界はファンタジーな世界であると告げている。
そもそも朱雀という鳥は日本では存在していないし、赤と白で美しく調和された毛並みの鳥なんて見たこともない。
なにより――――肌で感じるソレの気配は圧倒的な強者であると感じられる程だ。
これが威圧感というモノだろうな。
お母さんと思われる巨大な鳥さんも驚いたような表情で見下ろしている。
「は、初めまして? お、お母さんです……よね?」
そう話すと、ますます驚きを見せる巨大な鳥は、すぐに全身で俺を押しつぶしにきた。
突如の出来事に反応できずに、そのまま巨大鳥に押しつぶされた。
しかし、潰されたと思ったのに、ものすごく――――――暖かい。
肌を包み込む巨大鳥の羽根の暖かさは、どこか緊張に駆られていた自分の心を癒すかのようだ。
それと一つ分かったのは、巨大鳥の羽根の中では自由に動く事ができる。
海の中で泳ぐかのように、俺の身体は巨大鳥から離れる事はできずに、羽根の中をゆっくりと歩いて少しずつ鳥の頭の方向に向かう。
暫く歩いて、目の前に頭が現れた。
【初めまして】
それは人の言葉とは少し違う。
空気を伝わってきた
感覚からして、鳥のさえずりを聞いて何を話しているのか分かるような感覚だ。
思い返すと、卵の中から進化した時に究極スキル『神語対話』ってスキルを獲得したっけ。
「初めまして! お母さんであってますよね?」
そう聞くと、とても優しい笑顔を浮かべる。
丸くて綺麗な宝石とも思える瞳が笑う目に変わる。
【ええ。私はエインフェリア。貴方が生まれる日を待ち望んでいたわ】
お母さんの言葉に前世では暫く忘れていた愛情が沢山伝わってくる。
それもそうだ。俺に母さんはいなかったし、父さんと養母は常に俺を煙たがっていたからな。
人間の姿ではないにしろ、彼女が俺のお母さんである事は間違いなくて、仮に姿が違えど、しっかり愛情を注いでくれる素晴らしいお母さんである事は間違いない。
「お母さん? もしかして、俺を守ってくれるためにすぐに羽根の中に
【もちろんよ。驚いてしまって、離してしまったけど、生まれたばかりだとすぐに
く、喰われる!?
【それにしても驚いたわ。貴方。
「えっと~こことは違う世界の記憶を持っています」
【そう……やはりね…………その姿。元は人族だったのかしら?】
前世の記憶を持っている事は普通にあるのだろうか?
「はい。実は卵の中で、できれば人族がいいな~なんて祈っていたら、こういう姿になりました。種族は半神半人というみたいです」
【そう…………私の子供から半神半人が生まれるとは思いもしなかったけれど、これもまた運命なのでしょう。これから貴方に名前を与えるけれど、付けて欲しい名前はあるかしら?】
いくら前世の記憶があっても今の俺はお母さんの子供だ。
「いえ! お母さんが付けてくれる名前が良いです!」
【ふふっ。分かったわ。これから貴方は――――――アルマ。その名は原始の神と等しい名を与えましょう】
お母さんの全身から目に見える光の粒がどんどん溢れて、俺の身体の中に入って来る。
【っ…………】
両目を瞑るお母さんが辛そうに見えた。
「お母さん!?」
【だ、大丈夫よ。これしき…………】
お母さんの中にある何かが俺の中に移ってくる。
「!? もういい! 来なくていい!」
俺の叫びも空しく、その光はどんどん俺の中に入ってきた。
数分にも渡り、俺はただ光の粒がやってくるのを少し罪悪感を覚えながら受け入れるしかできなかった。
――【神『エインフェリア』より、半神半人アルマに力が継承されました。】
【ふふっ。本当に察しが良い子ね。でも心配しなくていいわ。私は神鳥朱雀。私達の力はやがて子供に引き継がれていくのだから】
「っ!? そ、それって!?」
【…………アルマがいた世界の事を教えてくれる?】
お母さんは少しだけ寂しい表情を浮かべて、俺が知っている前世の事を知りたいようで、俺はただそれに答えるしかできなかった。
俺が生まれたばかりで目の前の巨大な姿から感じられた大きな気配は、今はその影も形もなくなるほどに小さくなっている。
きっと、お母さんの力を俺が受け継ぎ過ぎてしまったせいだろうなと察しが付く。
それから数時間にも及ぶ前世の事をお母さんに話し続けた。
喉が枯れる事なく、ただ暖かいお母さんの羽根の中で、俺はずっと前世の事を出来る限り鮮明に伝えていく。
表情豊かに驚く彼女は、この世界の基本的な事を交えながら、俺の前世の事と比較して色々教えてくれた。
眠くなりその場で眠る。
お母さんの羽根は不思議で俺の身体を離すことなく、ずっとくっついていられた。
朝になって目が覚めて、またお母さんと会話を重ねていく。
食事や水を取らなくてもお腹が空く事もなく、喉が枯れる事もなく、ずっとずっとお母さんと会話を楽しんでいく。
そうやって、数日が経過した。
その時、お母さんの腹の下で温めていた卵から
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