神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
神鳥朱雀の子供編
第1話 転生
世界は理不尽だ。
毎日会社に通い、上司のうるさい小言を聞きながらせっせと働いても、渡される一枚の紙に数字が書かれていて、その数字が色んなしがらみによってどんどん減っていき、自分の手の中に残るのはごくわずかである。
俺は
外見はそう悪いモノではなく、社内でも何人かの女子同僚からアプローチを受けるくらいには、顔は悪くないと思うんだ。
でもそういうモノに敏感な上司から嫌がらせが続いて嫌になってしまって、アプローチは全て断ってたりする。
そんな俺が一番心が休まるのは――――――
「着いたあああああああ!」
広い空! 周りの木々と岩の自然! 気持ちよい風が俺を通り過ぎていく。
目の前に広がる景色に胸を躍らせる。そう。俺の趣味は山登りである。
しかし、その趣味も今日を持って終わる事となった。
まさか、山頂で叫んだと同時に足を捻ってしまって、石に躓いてそのまま転げ落ちてしまったのだ。
◆
あ……れ…………?
俺ってどうなったんだろう…………大好きな山に登るまでは……覚えている……のだが……。
目の前は真っ暗で、身体は水に浮かんでいる感じだけど全く動けない。
どういう状況が分からないうちに、
【汝、名を告げよ】
えっ……? 僕の名前は…………神楽湊です。
ひとまず、素直に従っておこう。
【汝、世界の理を告げよ】
世界の理? この人って難しい事を聞くものだな。理と聞かれても全く分からない。
そもそも理が何かすら分からないから答えようがないけど、自由――――そうだ! 鳥! 鳥のように空を自由に羽ばたく事こそが世界の理だと思います!
【汝、頂を告げよ】
いただき? そりゃ会社で上り詰めて上司を追い出してやりたいとか色々考えた事はあるんだけど…………俺がやりたかった事ってそういう事じゃないよな。
最近は山に登る事が楽しくなって、世界中の高い山を登ってみたいなと思ってるけど、それだと全ての国に行く必要があるよね。そういう意味でなら、目標は――――全世界を見て回る事かな!
【汝、未練を告げよ】
未練…………ん~特にはないかな。俺は実家から追い出された身だし、家族もいないし、恋人もいないし…………あ~! 投資した俺のお金! それがちょっともったいないな…………。
【汝の全て、異世界にて叶えるがよい】
えっ? 異世界? は?
身体は相変わらず動かないけど、意識は段々とはっきりしてきた。
そもそも俺って山頂から落ちたよね? って事はもしかして俺って死んだのか!?
そもそも異世界って何!? ファンタジーのあれじゃあるまいし!
お~い! 神様? 神様ですよね? 異世界ってどうい――――――
急に意識が薄れてゆき、真っ暗な世界がぐるぐると回り始め、俺は意識を失った。
◆
ここ……は……?
どうやら目が開けられない。でも身体は動かせる。
当たりを手で触ってみると硬い壁の感触伝わってくる。壁は不思議な材質で硬いんだけど、すべすべで触り心地がよい。
自由に動けるけど、俺が入っているのは球体の何かのようで、動いていると全体で転がる気がする。
しかし、転がった所で宙に浮いて、どこかに運ばれるのが中でも分かる。
その時。
――【種族『朱雀ノ卵』に確定しました。】
ん? 質問してくれた声とは違う雰囲気の女の声が聞こえる。
種族? 朱雀ノ卵? 確定?
疑問はいくつかあるけど、俺が入っているのが球体なのを考えると、これってもしかして卵だったりする?
目が開けられないけど、自由に動かせるので自分の身体を触ってみる。
…………ええええ!?
触った感触はぷにぷにして、まん丸い身体をしている。
それに手だと思っていた部分も普通の手ではない。どちらかというと広い――――羽根?
転がって戻るって事は、鳥の雛に生まれた!?
そもそも俺って死んだのか!?
最後の記憶は…………山頂で転げ落ちたっけ。
たしかにあれじゃ生きるのは無理だよな…………。
現状を整理すると、俺は死んで朱雀という鳥に生まれ直して、今は卵の中の雛と。
でも種族が『朱雀ノ卵』って聞こえたんだけど、普通なら『朱雀ノ雛』なんじゃないのか?
――【種族『朱雀ノ卵』から進化先が選択可能です。種族『朱雀ノ子』、種族『
はいはい! 半神半人でお願いします! 半分は神だけど、半分は人間なんだよね? 新しく生まれ直した事に考えて、前世と同じ人間の方が色々都合が良いと思うし、よく分からない鳥になるよりは人の姿を手に入れたい!
――【種族『半神半人』に確定しました。】
やったああああ!
喜んでいると身体の中から不思議な力が溢れ出て、俺を包んでいた卵をも包み始めた。
――【進化特典として、究極スキル『神語対話』を獲得しました。】
また頭に不思議な女の声が響く。
それと同時に俺を包んでいた不思議な力に意識が吸い込まれていく。
少しずつ自分の手や足の感覚を伝わって来て、本来の人間としての感覚が目覚めていく。
何も聞こえてこなかったはずの音が少しずつ聞こえはじめ、身体を優しくなでる風の感覚も少しずつ感じられる。
そして、俺はゆっくりと目を開けた。
世界を照らす眩しい光が俺の両目に一斉に降り注ぎ、思わず腕で光を遮るが悪い気はしない。
やがて視界が開けて、周囲を確認する。
立っている場所はどこかの木の上で、周囲は真っ青な空が広がっている。
後ろから何者かの気配を感じたので、ゆっくり後ろを向くと赤白色が混在している壁があった。ただこの壁……動いている?
壁の正体を確認するべく、視界を少しずつ上げていく。
首が痛くなるんじゃないかと思えるくらい見上げたそこには――――――
「ええええ!? と、鳥!?」
美しい毛並みが赤白色で調和して華やかな鳥が一羽佇んで、俺をじーっと見つめていた。
一羽と呼べない程に巨大な鳥が。
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