第101話 「お礼参り」救世主

「誰だてめぇ!?」

黒崎はサラリーマン風の男に向かって叫んだ。


サラリーマン風な男はそれを無視して、どんどん近づいてきた。


「ちょ!ちょっと待て!マジでお前誰だよ!?」

黒崎は得体のしれないサラリーマン風な男に仲間9人がやられたことを認識し、混乱していた。


男は一切答えずに、黒崎の前に来ると躊躇なく前蹴りを放つと黒崎はそのまま背後にある壁まで一気に吹き飛ばされた。

男は慌てる様子もなく、そのまま黒崎の方へと歩いていった。


「ちょ、ちょっと待てよ!東都西の黒崎だ!俺は!お前が誰か知らないけど、俺のバックには、青龍ていうチームが居るんだぞ!分かってんのか!?」

黒崎が言い終わる前に、サラリーマン風の男はそのまま黒崎の顔面へパンチを入れた。


「ぐあ!」

黒崎は後ずさった後うずくまった。そこに男はそのまま蹴りを入れた。


「ぎゃぁ!」

黒崎は、そのまましりもちをつくと頭を抱えてうずくまった。


「ちょ、チョット待って!なぁ!ちょっとまってくれよ!」

黒崎が懇願するかのような表情で、サラリーマン風の男に言ったが、男は顔色一つ変えずにそのまま黒崎が声を発しなくなるまで、ゆっくりと攻撃を加え続けた。


しばらくして黒崎が完全に動かなくなると、ゆっくりとエマの前にやってきた。


「!?だ、誰ですか!?何なんですか!?」

エマはこのサラリーマン風な男の目的がわからない事もあり、怯えた表情で後ずさった。


「君を助けに来た。さあ、行くよ」

男はエマの腕を軽く掴むと、すっと立たせた。

エマは恐怖のあまりガクガクと震えていて立てない状況であった。


男はエマを連れて境内を離れるため、通りにでるとそこに原付きが止めてあった。

が、先程倒したはずの男達が5人武器を手に待ち構えていた。


「しまった…」

サラリーマン風な男は、思わず口にした。

黒崎を倒すのに時間を掛けすぎたことで、倒した相手が復活しているという事に気がついた。


「君は離れて!」

サラリーマン風な男はエマに言うと、5人の男達の方へとゆっくりと歩いていった。


「おい!オッサン!舐めんなよ!」

「殺してやる!」

「ただの怪我ですむと思うなよ!」

いきり立つ男達を前に、サラリーマン風な男はゆっくりと構えを取った。


5人の男達はそれぞれ木刀、バット、ナイフなどの武器を手にしていた。


バットを持った男が、殴りかかってきた。そしてそのすぐ後ろにはナイフを持った男も襲いかかってきた。


サラリーマン風な男は、バットの攻撃をかわすとナイフの男に前蹴りを打って距離を取った。だが、バットの男がそのまま振り回すので、離れるしか無かった。


「っく…」

サラリーマン風な男はそのままジリジリと後退した。


「三上さん!逃げろ!!」

サラリーマン風な男が叫んだ。


だが、エマがその声にハッとして立ち上がろうとしたが、そこには木刀とナイフを持った男がエマの前に身構えていた。


「お前は、大人しくしてろ!」

男はナイフをエマに向けて冷静に言った。


エマは、そのまま震えるながら座り込んでしまった。


サラリーマン風な男は、バットとナイフの男の攻撃を避けるので精一杯でどんどん追い詰められてきていた。


ガン!という男がして、エマがその方向を見るとバットがサラリーマン風な男の腹をまともに捉えてしまったようだった。

サラリーマン風な男は、そのまま膝をついた。


「てめぇ、ゆっくり後悔しろ!」

バットを手に持った男は、そう言ってバットを高く振り上げた。


その時だった。


遠くから原付きが1台走ってくるのが見えた。


その場にいる全員が、その原付きを見ていると、原付きは一切減速せずに、どんどん彼等の方に向かってきた。

道路に面した舗装されていない駐車場にいたので、その原付きの突進はほぼダイレクトに、男達のところに突き進んできた。


「な、何だありゃ!?」

「おいおい、ウソだろ!」

男達は一瞬怯んだ。それを見たサラリーマン風な男はバットの男に蹴りを思い切りはなった。男は数メートルほど後ろに跳ね上がるように飛ばされるとそのまま尻餅をついた。


唖然とした顔で男達がその様子を見ると、今度は原付きがそのままの勢いで突っ込んでくると、ナイフの男にそのまま原付きが突っ込んできた。


「あ、ぶねぇえ!!」

男は寸前のところで、横に避けたが原付きはそのままの勢いで、神社近くにある木に激突した。

だが、それとは別に男が目の前に見たのは、その原付きを運転してきた男だった。


「水島君!」

エマはその男を見て叫んだ。


東一郎は、ナイフの男が尻餅をついている状態で呆然としているところに、フルスイングのケリを打ち込んだ。

パーン!と衝突音が静かな境内に響いた。

男はそのままピクリとも動かなくなった。

東一郎はナイフを拾い上げると森の奥の方へ投げ込んだ。


一瞬呆然とした男達だったが、東一郎に目がけバットと木刀を持った男達が襲いかかってきた。


東一郎はすかさず下にあった拳程度の石を拾い上げると、バットを持った男の顔面に3m位の距離から思いきり投げつけた。

男の眉間の部分に直撃すると、男は意識を失ったようで白目をむいた。そこに東一郎は思い切り顔面パンチを叩きつけた。

男はダメ押しの一撃を受け、完全に意識を断ち切られた。


木刀を持った男は、東一郎に襲いかかろうとしたが、東一郎は倒れた男のバットを持つと、僕との一撃をかわすと膝をバットで思い切り振り抜いた。


グシャリという嫌な男が響くと、男は悲鳴を上げて悶絶し、地面を転げ回った。

東一郎はその男の木刀を拾うとその男のスネ目がけて平然と木刀を降り下ろした。


「ぎゃああああ!」

完全にすねの骨を折ったのだ。更に叫ぶ男の顔面を蹴り飛ばすと男は意識を失った。

残る一人はその凄惨な様子を見て慌てて逃げ出そうとしたが、焦っているせいか足がもつれて倒れ込んだ。


東一郎は後ろから四つん這い状態の男の側頭部を思い切り蹴り上げると男は、そのまま倒れた。そしてその男の顔面を仕上げのようにドンと蹴り上げた。

男はピクリともしなくなった。


東一郎は男達が完全に動かなくなるのを見届けてから、エマの方を向いた。


「あ、ああ…」

座り込んでいたエマは声にならない声で何かを言いながら東一郎に向かって走っていき抱きついた。


「うわあああああ!」

エマは東一郎にしがみついて、声を上げて泣いていた。

東一郎はエマの頭を抱え込むとゆっくりと抱きしめた。

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