第94話 「友達以上」暴行

「え?何いってんの?」

ユリはエマに対して、半分笑いながら言った。


「だから!あの子達が襲われちゃう!」

エマは必死に東一郎に言った。


「え?どういう事?」

ヤマトはエマに聞き返した。


「今、アイツラこの後、やっちゃう!みたいな事いいながらトイレ入っていった!」

エマの真剣な表情の訴えに、ユリとヤマトは思わず息を呑んだ。


「エマ。場所は?そいつらどこ行った?」

東一郎はエマの腕を軽く抑えると、真剣な表情で聞いた。


「分かんないけど、5分後に合図出すって…」

「やばいじゃん!」

ユリは焦った声で言った。


「おい、皆!手分けして探してくれ!見つけたら大声で俺を呼んでくれ!」

東一郎はそういうと部屋を飛び出していった。エマ、ユリ、ヤマトもすぐに続いた。


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「あー、おかえりー!」

唯の友達は部屋に戻った男に言った。


「ただいまー!ちょっと飲みすぎちゃったー!皆飲んでる!」

「イエーーーイ!飲んでる!飲んでる!」

女子生徒たちも酒を飲んでいるようでテンションが高かった。


「唯ちゃーん。あれ?あんま飲んでないじゃん」

「…え、そんな事ないよ…」

「ほらほら。飲んで飲んで!盛り上がろうぜ!」

そういうと男は唯に無理やり酒を飲まそうとした。


「ちょ、嫌!やめて!」

唯は嫌がって思わず後ずさった。


「えー、ちょっと、引かれちゃったーあははは」

男は酒を飲みながらまた笑った。


「ねーねーチューしよう!チュー!」

男は別の女子生徒にキスを迫った。


「ちょ!ちょっと!ちょっと!ムリムリムリーきゃはは」

女子生徒は笑いながらも拒否した。


「ちょっと!やめてよ!やりすぎだよ!」

別の女子生徒が慌てて止めに入った。シーンとした空気が流れた。


「あーあ、やっぱ乗りじゃ無理かぁ」

男はそう言うと、音楽をマックス近いボリュームに上げた。声が全く聞こえなかった。

それと同時に、女子生徒の一人をソファーの上に押し倒した。


「え?ちょっと!」

女子生徒は慌てて押しのけようとしたが、男の力は強く全く動かなかった。


「パーリータイムー!」

別の男がマイクで叫ぶと一斉に男達は唯たちに襲いかかってきた。


「きゃああああ!」

「やだ!ちょっと!誰か!!」

「いやああああ!」

女子生徒たちの悲鳴はカラオケボックスの大きな音量の中でかき消されてしまう。


男達は、女子生徒の服を脱がそうとしてなかなか脱がせられないと、そのまま破り捨てた。

「きゃああ!いやあああ!」

一人の生徒が悲鳴を上げると男は思い切りビンタをした!


「大人しくしてりゃ殴られねーよ!」

男は笑いながら女子生徒の下着に手を伸ばした。


「ちょっと!何やってんのよ!」

その時、部屋の扉が開くとエマが怒鳴り込んできた!


男達はぎょっとした表情を見せたが、エマが一人だったので、エマをすぐに突き飛ばして扉を締めた。


「おいおい、この子誰?」

「誰でもよくね?もうとまんねーぞ!」

「やっちゃえやっちゃえ!かんけーねーだろ!」

男達はエマにも襲いかかってきた。


「きゃああああ!」

エマの悲鳴もまた音楽にかき消された。


エマが必死に逃げようとすると、男はエマを思い切り殴りつけた。

エマは、そのままソファーに倒れ込むと動けなくなった。

「…。」


「じゃあ、俺この子頂いちゃーいまーす!」

そう言ってエマのスカートに手を伸ばした。


女子生徒たちは絶望で、泣きながらその様子を見るしか無かった。


その時だった。

何かが部屋に飛び込んでくると、男がそのまま3メートルくらい離れた壁に突きとばされた。


「!?」

「なんだ!?」

「おい!てめぇ!何しやがる!」

男達が叫んだが、その場に居たのは東一郎だった。


東一郎は殴られて倒れ込んでいるエマを見ていた。

男の一人が飛びかかってきた。


東一郎は掛かってきた男を避けるでもなく、いきなり首を掴むとそのまま床に叩きつけた。男は後頭部から思い切り叩きつけられ動かなくなった。


東一郎はその男はほったらかして、先程突き飛ばした男のところにゆっくりと移動すると。男の膝を横から思い切り踏みつけた。

男は悲鳴を上げたが、東一郎は顔面を思い切り蹴飛ばした。

男の足は本来あるべき方向ではない方に折れ曲がっていた。


男はそのまま意識を失いけかけたが、東一郎はそれを表情一つ変えずに何発も殴り続けた。

残った男は慌ててズボンを履くと、東一郎に覆いかぶさってきたが、東一郎はそれをあっさりと投げ飛ばすと横にあった椅子を思い切り男に振り落とした。何度か顔面めがけて椅子を振り落とした。


男が動かなくなると、先程のエマ殴った男のところに戻ってくるとまた全力で蹴飛ばし始めた。男は顔から血を流し膝から下は完全に別方向に足が曲がり、ピクリともしていなかった。


ヤマトが飛び込んできて、東一郎を抑えこんだ。

「水島!やめろ!やりすぎだ!死んじゃうよ!」


ユリはこの状況を見て思わずその場に座り込んだ。

騒ぎを聞きつけた他の客と店員が駆け込んできて東一郎を抑え込んだ時には、男達はピクリともしなかった。大怪我をしていることは明白であった。


「お、おい、水島…」

ヤマトは東一郎に声をかけたが、東一郎はヤマトを全く見えていなかった。


東一郎はもうとっくに動いていないエマを殴った男を、それでもなお攻撃しようとして暴れていた。

店員と別の客6人がかりでなんとか抑えられるくらい、東一郎は止まらなかった。


その後、店には救急車とパトカーが数台駆けつけた。

男達、女子生徒とエマは救急車で救急搬送された。


東一郎は警察車両に載せられて、警察署に連行されたのだった。東一郎は警察に連行される際に一言も話さず、無表情であった。

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