第93話 「友達以上」告白

カラオケルームに入ってから2時間が経っていた。

東一郎たちは久しぶりに来たカラオケを楽しんでいた。


「ちょっとトイレ行ってくるわ!」

東一郎はそう言って、部屋を出るとトイレに向かっていった。

すっかり上機嫌と言う感じで出ていった。


「あ、アタシも行ってくるー」

エマも少し遅れてトイレに向かった。


「ねぇ、水島君!」

エマは追いつくと東一郎に声をかけた。


「お、エマ!どうした?さっきも行ってなかったかトイレ?ジュース飲みすぎじゃね?よく飲めるなそんなに!?」

東一郎は笑っていった。


「そんな訳無いでしょ!?あははは」

エマは東一郎の本気か冗談かつかない言葉を聞いて笑った。


「ねぇ、大丈夫?無理してない?あの子のこと?」

エマとしては少し複雑な思いはあったのだがエマは東一郎に素直に聞いた。


「ああ、ありがとな。エマ。でも、俺は唯さんの彼氏でもないし、俺にどうこういう権利なんて無いしな」

「でも、気になるんでしょ?」

「ああ、気にはなるな」

「ねぇ。好きなの?あの子のこと?」

「ん!?」

「茶化さなくていいよ。あの子のこと好きなんでしょ?」

エマは真剣な表情で東一郎に言った。


「好きだよ。大好きだ」

「…。そっか…」

エマは泣きそうな顔をして下を向いた。


「なぁ、エマ。もしも俺が未来から来たって言ったら信じる?」

「は?ちょっと!何いってんの!?もう!」

エマは怒ったような表情で言った。


「まぁ、信じられないと思うけど、俺は本当はこの世界の人間じゃなくて、お前らよりもずっと大人っつーかオッサンで、俺はお前らとそもそも釣り合ってなんて無いんだよ…」

「ちょっと…水島君…意味分かんない」

「だから、俺が誰かを好きになるとか、誰かに好かれるとか。そんな次元の話じゃないんだよ。俺はここに居ちゃいけない人間なんだよ」

「だから俺は誰も好きになんてならないし、誰から好かれるわけにも行かない」

「なにそれ?信じられるはずないでしょ!からかってんの?」

エマはほとんど怒った声で東一郎に言った。


「唯さんは、俺の知り合いだったんだよ。元の世界の。もちろん彼女は俺のことを知らない。俺は彼女が好きだよ。だけど、それは未来の彼女だ。高校生の唯さんじゃない。俺はこの時代の唯さんを知らない」

「ちょ、何言って…」

「俺は唯さんが幸せになってくれれば良い。俺は別に彼女を好きだけど、それは彼女を愛してるってのとはちょっと違うと思う」

「…。」

「あー、なんつーかな。親が自分の娘を思う気持ちってのに近いんだと思うよ。あの子は本当に良い子なんだ。だから彼女は傷ついてほしくないし、幸せでいて欲しい。それ以上を求めてないし、それ以上を望まない」

「そんなの…信じられるはずないじゃん…」

エマは思わず泣き出した。


「エマ。俺はこっちの世界に来たってこと誰にも言ったこと無いんだ。だから最初に話したのはお前だ。嘘だと思ってもらっても構わない。だけど、俺のせいでお前たちの人生を狂わせたくないんだよ」

「どういう意味?」

「まぁ、なんつーか…例えば俺とお前が付き合うとか!?」

東一郎は少し照れた顔で言った。


「え?」

エマは突然の話に思わずドキリとした。


「あー、なんつーか。エマって凄いカワイイつーか、きれいつーか。でも、俺はお前には釣り合わない。ただのオッサンで…」

東一郎は曖昧な言い方をした。


「わかんない!水島君わかんない!バカ!」

エマはそう言って東一郎をバンと叩いた!


「ちょ、なんだよ!?いてーな!」

東一郎はいきなり本気で叩かれたので、思わず後ずさった。


「うるさい!アタシの気持ちも知らないくせに!」

エマはそういうと女子トイレに駆け込んでいった。


「な、なんだよ…」

東一郎は若い女の子の考えは理解できないのか、一人でブツブツと呟いて部屋に戻っていった。


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「なんなの…一体…」

エマは全く理解出てきていなかったが、トイレから出てくるのに、30分近く経っていた。ユリにはちょっと電話してくるから遅くなると伝えてあったので、恐らく皆心配はしていないだろう。


「あー、どういう顔で会えば良いんだろう…」

エマは東一郎と顔を合わすことを想像すると、頭がぐるぐるとしているように感じた。


「ふー、そろそろ戻るかぁ…」

エマはトイレの個室を出ると、部屋に戻って戻りかけた。


戻り際に男が3人トイレに向かって歩いていったのを見かけた。

「なぁ、俺髪の長い子」

「俺はじゃあ、ショートの子だな」

「じゃあ、俺は唯って子だな!」

男達は何やら話をしていた。エマは気づかれないように、少し離れたところで聞き耳を立てた。


「じゃあ、もどって5分くらいして俺が合図したら、行くぞ!」

「おっしゃ!燃えるね!」

「写真撮っておけよ!」

「OKOK!」

「俺にもちゃんと回せよ!」

「テンションアゲアゲで行こうぜ!」

男達は酒を飲んでいるのが分かった。


男達はトイレに入っていた。

エマは急いで部屋に戻った。


「ねぇ!大変!あの子達やばいかも!」

エマの突然の発言に、東一郎、ユリ、ヤマトは歌うのをやめてエマをぼけっと見ているしか無かった。

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