第7話 「制裁」空手家 神崎東一郎という男
体育館の場所はすぐに分かったが、倉庫の場所がよくわからなかった。
ウロウロしていると、ピアスの男が現れた。
「おい!!みずしまぁああ!こっちだこら!」
東一郎を睨みながら、ピアスの男が呼んだ。
ピアスの男は東一郎以外の人間が来ていないことを確認してから倉庫に入った。
体育倉庫はいうほど広くはないが、中になにもないためちょっとした広さになっていた。
中に入ると例の4人組がそこに居た。
「おい!とりあえず土下座しろ!お前!まじで、これ最後通告な!」
スルスルとピアスの男がやってきた。
甲高い声で東一郎の耳元で騒いだ。
東一郎はニヤニヤとしながら、男たちを見ていた。
「てめえぇ!!調子に乗ってんじゃねーぞ!」
ピアスの男は我慢しきれず、殴りかかった。
超至近距離からのパンチであったが、東一郎はあっさりとそれを避けると、前のめりになったピアスの男の足を払った。
ピアスの男は顔から倉庫のコンクリートに突っ込む形になった。
「あははははは!ダセー!この距離で当てられねーでやんの!」
東一郎は爆笑しながら、ピアスの男を指さして笑った。
「て、、、てめええ、このクソガキがあああ!」
ピアスのところは東一郎にタックルを仕掛けた。
東一郎は避けるどころか、男に歩み寄るとそのまま膝をピアスの男の顔面に突き立てた。
ボキッという鈍い音が聞こえた。
「あらー、鼻いったねー。あははははは」
ピアスの男は顔を抑えながら地面をバタバタとのたうち回った。
「でも安心しろよ。鼻って軟骨だからさ、折れても大して問題じゃないんだってよ。まぁ、ひん曲がっちゃったら治んないけどね。あははは」
東一郎はそう言うとピアスの男を思い切り蹴飛ばした。
「お前!洒落になんねーぞ!」
ワックスで頭を固めた男が東一郎に掴みかかってきた。
東一郎はそのまま相手の親指を捕まえるとくるっと反転させて後ろに手を回した。
「いたたったたた!ちょ、まじで!ちょっと、いてっての、まじで!」
ワックスの男は声にならない声を上げた?
「いや、お前何いってんのわかんねーよ。ちゃんと話せよ。あ!おもしれーから動画撮ろう!」
いつの間にか片手でスマホを持ち出すと男の腕でさらに締め上げた。
「アイタタタ!マジ、チョ!マテ、チョダダダダダ、ヒーー!」
ワックスの男は更に声を上げた。
東一郎はそれを見て笑いながら、更に腕をぐんと振り上げた。
男は一瞬固まったかと思うと、そのままその場に倒れ込んだ。
「肩外したった!ふふふ」
くるりと大男と赤い髪の男の方を振り返ると、笑いをこらえながら言った。
「あ!見ろよ!!コイツ漏らしてる!!」
ワックスの男は痛みのあまりに失禁したようだ。
「うわー!きたねーダセー!!あははははは!動画撮っちゃおー!」
そう言って笑いながら、男をぐるぐると回りながら動画を撮り始めた。
東一郎のあまりのサイコパスぶりに、大男と赤い髪の男は言葉を失っていた。
「お、、お前なんなんだよ!何でこんな事すんだよ!」
大男は明らかに違和感を感じながら東一郎に言った。
「はぁ!?お前らが俺をフクロにしようとしてんだろ?だから逆にやってやってんじゃん。こんな事?勘違いすんな?これからだろ!」
東一郎はそう言うと、急に笑うのをやめて大男に向かっていった。
大男は明らかに怯えつつ、後ずさった。
その時東一郎が大声で言った!
「おい!!てめぇ。どこ行くつもりだ?赤頭!」
後ろに居たはずの赤い髪の男は気がつけば、入口近くに移動していた。
その様子を見るに明らかにこの場から逃げ出そうとしている姿だった。
東一郎は目の前にいる大男をパン!とビンタした次の瞬間に金的を思い切りカチ上げた。
ほんの一瞬で、大男は大きく口を広くとよだれを垂らしながらゆっくりと座り込んだ。
「おい、てめぇ。逃げようとしたな」
東一郎は赤い髪の男を睨みつけながら言った。
「ち、チゲー!お前何なんだよ!俺たちが何したってんだよ!?」
赤い髪の男は高い声でそういった。
先程までのニヤニヤした余裕はもはやどこにもなかった。
東一郎はその言葉を無視して言い放った。
「おい。お前、このピアスのガキが、俺に何したか言え」
東一郎は苦しんでいる涙とよだれにまみれたピアスの男を指さしていった。
「・・・」
赤い髪の男は何も言えずにその場に立っていると、東一郎は赤い髪の男に近づき、いきなり強烈なビンタをした。
「アダ!!」
赤い髪の男は悲鳴を上げた。
「おい!聞こえなかったか?コイツが俺にしたことを言え」
東一郎はそう聞いた次の瞬間にいきなり男を殴った。
男はそのまま尻もちをついて座り込んだ。
「おい、わかんねーガキだな。もう一回聞くぞ?このピアスが俺にしたことを言え」
そう言って拳を上げると男は涙を流しながら言った。
「や、やめてくれ!ずっと前にお前の靴を隠した!!」
赤い頭の男は思わず話した。
「あ、そう。靴な」
そう言うと東一郎はピアスの男の前に行き思い切り足を蹴飛ばした!
ピアスの男は声にならない声で悲鳴を上げた。
その上でもう一度思い切り足を蹴り飛ばした。
そうするとそのまま、赤い髪の男の前に来た。
「で、ほかは?」
じろりと睨んだ。
「・・・」
自分の発言で仲間がやられたことで言葉に詰まったのだろう。
間髪入れずに東一郎は顔面にパンチを叩き込んだ。
「あぷぶぅぶ!!」
赤い髪の男は、声にならない声を上げて鼻血が大量に出た。
「で、他には?」
表情を変えない東一郎は、相手にとって死神にも見えたのかも知れない。
結局この拷問のようなやり取りは合計5回行われた。
赤い髪の男はもはや血まみれになっており、座り込んでいた。
肩をハズされたワックスの男は、息荒く悶ている。
金的をされた男はいつの間にか、嘔吐して具合が悪そうだ。
東一郎は今度は大男の前に行った。
「おい、お前吐いたのか?キタねぇな!じゃあ、質問な。あいつは俺に何をした?」
東一郎は今度は赤い髪の男を指さして、大男に聞いた。
大男は何も答えない。
いや答えられないでいたら容赦ないパンチが東一郎から放たれた。
「これはいいな。たしかにここなら人は来ないし、好きなだけ居られるな」
東一郎はそう言って笑いながら、横たわる四人を眺めていった。
かれこれこの場所に3時間は居ただろうか。
赤い髪の男と大男はやや回復してきたようだが、ピアスの男は相変わらず痛がっており、ワックスの男も立ち上がれずに居た。
「おい!お前ら!とりあえず今日が一回目だ!これからずっと相手してやるからよ。よろしく頼むわ!お前らが水島瞬にしたこと100倍にして返してやるからよ」
「手なんて抜かねーし、てめーらが死にたくなるくらいまで追い込んでやるよ」
というと、にやりと笑った。
「た、助けて。ゆ、ゆるして、、、」
赤い髪の男は涙ながらにそういった。
「てめーらのした事、全部聞けてねーからな!覚悟しておけ!」
東一郎は4人に告げた。
「あー、そうだ。忘れてたわ。赤頭とピアスが喧嘩した。ワックスと大男が止めに入ったが一緒に喧嘩になった。気がついたらこうなった。ってことで口裏合わせとけ!一言たりとも間違えるなよ!」
東一郎は4人にそう告げた。
「明日からまたよろしくな!あはは」
東一郎は笑いながら倉庫を出るとすっかり外は暗くなっていた。
神崎東一郎は水島瞬の体を借りて、6年前のこの時代に生きている。
彼は喧嘩無敗、プロ格闘家であった過去を持つ空手家だ。
その強さは水島瞬の体を持ってしても変わらなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます