第6話 「制裁」4人の不良生徒
ピアスの男、ワックスの男、大男、赤髪の男。
話に聞くとこの学校の生徒にしては、やんちゃをしている4人組らしい。同じ中学出身で少し荒れた中学だったこともあり、彼らは入学当時から少し浮いていた。と言っても勉強が出来ないわけではなく、それなりに成績もよく所謂ファッションヤンキーとでも言う立ち位置らしい。
それだけであれば可愛いものだが、弱い者いじめをするクズであり、しかも徹底的に底辺に落ちていいないという事実が東一郎の逆鱗に触れていた。
東一郎は自身もクズの部類だったために、人間としての底辺をたくさん見てきた。生きる価値のないほど腐った人間をたくさん見てきた。
その中でコイツラは、しっかりと自分の身分を保証しつつ、まるで「ワル」を演じることで悦に入っているような奴らだった事が何より許せなかった。
次の休み時間になった。
先程の四人がまた東一郎の席にやってきた。
「みずしまぁあ!ちゃんとやっただろうな!」
ニヤニヤしながら大声で虚勢を張るピアスの男。
それに合わせるかのような残りの3人もワザワザ出向いてきた。
「ちゃんとやってあるよ。チョット待っててよ」
東一郎は預かったノートを出すふりをした。
そうこうしている間に、4人組は他のクラスメートにちょっかいをかけ始めた。
野球部の生徒にはハゲといい、水泳部の女子生徒にはダークエルフ等とゲラゲラと下品に笑っていた。なので何名かの生徒はそれを嫌って部屋から出ていったのだった。
「おい!!みずまぁああ!!まだかよ!」
ピアスの男はひとしきり他の生徒に絡むとまた東一郎に怒鳴りつけた。
それと同時に近くにあった他の生徒の教科書を東一郎に投げつけた。
東一郎はさっとその教科書をキャッチすると、元の生徒の机にそっとおいた。
「はい。わ・た・し・まーす」
そう言うとニッコリと笑いながら、4つのノートを真っ二つに手で割いたのだった。
「て、、てめえぇ!!何の真似だ!!」
「コロスゾこら!!」
「みずしまぁああああ!!」
東一郎にピアスの男が飛びかかったが、東一郎はさっと身をかわすとピアスの男はつまずいて派手にころんだ。
「て、、てめえええ!」
顔を真赤にしたピアスの男が再度飛びかかった時だった。
「何をしている!!」
男性教師が2名教室に入り込んできた。
顔を真っ赤にして怒りをあらわにする4人に対して、東一郎は教師にこういった。
「別のクラスの人達に宿題をやれって脅されたんです!停学にしてください!」
と、堂々と言い放った。
クラスの生徒達が一瞬で固まり東一郎を見た。
教師は下に散らばっているノートを見て、何かを察したように、4人組を連れて行った。去り際に四人は東一郎を睨みつけながら、覚えていろよと呟いた。
クラスメイトたちは東一郎の言動を理解できずに、静まり返った。
ヤマトでさえ東一郎に声をかけられずに居た。
「なあ、みんな。もう授業始まるよ」
東一郎はまるで他人事のようにクラスメイトに言い放った。
帰りのホームルーム
教師は東一郎に帰りに職員室に来るように伝えた。
東一郎は職員室に行き、事の成り行きの話をした。
教師いわく
「4人は反省して、もう無理な依頼をしたりからかったりしないと言っているが、お前はどうする?」
東一郎に聞いた。
「先生、僕は停学にしてくれと頼みましたが、それは無理なんですか?」
東一郎は至極真っ当という感じで聞いた。
「停学って、そんな大袈裟なもんじゃないだろう。アイツラも反省しているって言うし、、、。な!」
教師は東一郎に軽い感じで言った。
ああ、この教師は要するにアイツラと仲良くやることで、残りの2年半を何事もなく過ごしたいんだな。と理解した。
あの程度のガキにビビる教師か、、、思わず笑い出しそうになった東一郎だったが、その笑顔のままに
「そうですね!なら僕ももう一度彼らと仲直りしたいと思います!」
と満面の笑みで答えた。
クラスに戻ると、クラスメイトは好気と心配、哀れみの目で東一郎を見た。
ヤマトは心配そうにしていた。
するとそこへ、別のクラスの生徒が東一郎のところにやってきた。
「あのさ、三浦君たちが体育館裏の倉庫のところに来いって言ってたよ」
東一郎にその事を伝えると足早に去っていった。
東一郎は思わず笑いだした。
「なあ、ヤマト。聞いたか?体育館裏の倉庫だってよ!いつの時代だよ!はははは!だいたい何で学校内で呼び出すんだよ!バカなんじゃねーか?ふふふふ、、あはははは!」
東一郎は爆笑してしまったため、ヤマトもクラスメイトたちも東一郎が壊れてしまったのかと心配した。
「おい!!水島!もう今日は逃げて帰ろうぜ!明日になりゃもうアイツラも面倒くさがって、何もしてこないかも知れないだろ!」
ヤマトは半分怒り出しながらそういった。
クラスメイトの女子が東一郎のところにやってきた。
「水島くん、そうだよ。行くことなんてないよ!私先生に言ってくるから!」
勇気を出していったのだろう。少し声が震えていた。
「ふーん、君、名前は?」
東一郎は女子生徒に名前を聞いた。
「え?な、名前??今更?山口、、、あかりだけど、、、。」
女子生徒はかなり戸惑いながらそう答えた。
「そうか!ありがとうな!君いい子だね!きっと素敵な女性になるよ!」
そう言って東一郎は、正確には水島瞬が親指を立てて言った。
あかりという女子生徒は顔を真っ赤にして何か言いたげだった。
その場にいる全員が唖然として、この奇妙なポーズに気が付かないほどだった。
水島瞬は見た目美少年だったので、映画のワンシーンのような光景にすら見えた。
「さてと、じゃあ、体育館裏の倉庫にいこうかなぁ!あははは」
東一郎はそう言うとまた吹き出した。
「まじでやめとけって!下手すりゃ怪我するぞ!まじで!」
ヤマトは東一郎の前に立ちふさがるようにしていった。
「なぁ、ヤマト。水島瞬ってどんな男だった?」
東一郎はヤマトに聞いた。
「は!?お前まじでもういいよ!昨日から!そんな冗談言ってる場合かよ!?」
つばを飛ばしながら小柄な少年は声を張り上げた。
「水島瞬ってさ、細いし、なんか優男じゃん。で、多分あんまり主張とかしなかったんだろ?だけどコイツさ、裏では結構ムカついてたぽいよ。コイツラに!」
東一郎はそう言うと、腕をまくりあげると細いように見える腕から信じられないような力こぶを作って見せた。
「そもそも俺は喧嘩しに行くわけじゃない。そして怪我をするつもりもない!ただ話をつけに行くだけだよ。そこんとこ宜しくな」
東一郎はヤマトと後ろにいるあかり達にウインクして颯爽と去っていった。
ヤマトはあかり達数名の女子生徒と顔を合わせてこういった。
「あれ・・・だれ??」
もう東一郎を追うものは誰も居なかった。
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