第30話:拍子抜け
「多分……いえ。憶測で考えを言うのも余計な事なんだよ」
憶測で固定観念を決めてしまう危険性か。
まぁ分からないでもないが、可能性は考慮すべきじゃねぇか?
「いや、聞かせてくれよ。お前の分析は俺の中では及第点だからな」
美琴は「及第点とか酷いんだよ!」と憤りつつ、説明を続ける。
「まずは猪ちゃん。これは戦極様が
「動き? つまり体捌きとかそういうのか?」
「そう。だから次の鹿ちゃんの攻撃を躱した時、おかしな視線で見られたんだよ?」
確かにそうだった。黒ブタ野郎の突進力……あれは自分の大ぶりの攻撃に対する、俺の反応を見ていた。
次に黒シカ野郎だが、周りが池のために左右から脱出出来ないことを利用した、変則的な大ぶりの攻撃に対する回避を見ていた感じか。
「なるほどねぇ。つぅ事は、猪豚野郎の目的は同じだったと言う事か?」
「そうなんだよ。そして黒蝶ちゃんも同じ……いえ、もっと悪いんだよ」
ため息一つ。その後、美琴はポツリと可能性を話す。
「あれは……あの複眼で、〝全ての角度から見ていた〟としか思えないんだよ」
言われてみれば確かにそうだ。攻撃主体の本体と別に、上下左右……いや、完全に死角がないほど単体の黒蝶野郎に囲まれていた。
だがそいつらも積極的な行動はせずに、俺を囲んでいただけだ。
「さらに群体で猪鹿ちゃんの攻撃を真似て、しかもその時の戦極様の行動を、リアルタイム中継していたとしか思えないんだよ。ほら、あれを見るんだよ」
美琴が悲恋から半透明な腕を伸ばし、その方向へと指をさす。
みれば英数字混じりの咒印が、黒蝶の羽に浮かび上がり消えていくのが見えた。
その個体をよく見ればまだ息があり、どうやら現在も情報を送っているらしい。
「チッ、盗撮されているみてぇで気分が悪い」
「まっかせるワンよ~」
次々と凍らせ粉砕し、ものの十三秒程で俺の肩へとよじ登る。
「足の裏に黒蝶野郎の汁とかついてねぇだろうな?」
「失礼だワンねぇ~ほれぇ、キレイなんだワンよ」
そう言いながら左頬へと、ぷにぷにの肉球を押し当ててくる。
いや、見えないんだが? と思いながら、美琴の話を思い出す。
先程も思ったが、どうやらこの三種の黒いやつ。〝猪鹿蝶〟は俺達を観察していたという事か。
だが何故そんな事を? そう思い口を開く。
「……理由は何だと思う?」
「ここに来る前に遭遇した泥田坊のレプリカ。そして猪鹿蝶の行動。どう見ても情報を集めていたとしか思えないんだよ。ただその理由は不明だけど、集めていたという事は……」
「そうだな、俺達の情報を何かに使うんだろうな。だが、あんなに弱い奴らを当てて何か分かるつぅのか?」
そう疑問を口にした時、階段の上から声がした。
見れば黒子には不釣り合いな、体の大きい男が憎らしげに声を出す。
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