第14話 オーバーラップ

「ホムラ? え、何ですか、これ?」

「ソラも驚くよね? うんうん、アタシも驚いてるよ。でもそれ以上にソラにまた会えたことが嬉しいんだ!」

「わ、わたしもです。……けど、これはいったい?」

「そうだよね。アタシも何がなんだかって思うし、この場所だって……」

「この場所? ……あ、この場所って。それに姿も……」


 目の前に居る歯を見せながら笑うホムラに目を見張りながら立ち上がったソラだったが、いま自分が居る場所に気づき戸惑った。

 何故なら彼女たちがいる場所は彼女たちが通っていた小学校の教室だったのだから。

 こちらの世界にはあるはずがない場所。けれどその場所で過ごした日々はソラにとってはかけがえのない思い出。

 そして今の姿もあのときと同じ小学生。懐かしくないわけがない。


「懐かしい、ですね」

「うん、本当に懐かしいね。ソラが、アタシたちが守った世界。それを……ソラにも見せたかったな」

「っ! そ、そうです! ホムラ、あれからどうなったのですか? なんで、なんでホムラはあんな風になったのですか……?」

「……それは、――。――。ん……あー……、そういうことかぁ」


 ソラの質問にホムラは答えようとする。けれど彼女の口はパクパクと動くだけで、何度か繰り返し……何かを理解したようだった。

 その様子を見ていたソラへと申し訳なさそうにホムラは向く。


「ごめんソラ、あのあとアタシたちに何があったのかは……現実のアタシに聞いて」

「今じゃ、無理なんですか?」

「うん、ここに居るアタシじゃムリ」

「わかりました……。でも、ホムラに、フレアに対抗する術がわたしにはありません……」

「大丈夫! アタシがソラの力になるから! というか、このアタシはソラのためにアタシが集めた力みたいなんだよね」

「え?」

「見てて、ソラ。アタシは火祭ホムラであり、ダークフレアであり、ヒールフレアである」


 表情を暗くしたソラへとホムラは笑いかける。

 彼女の言った言葉が理解できないソラはホムラを見ると、彼女の姿が変化した。

 ダークフレアの姿であったり、子供の姿であったり、ヒールフレアとしての姿であったり、何事もなく成長した際の姿、そんな様々なホムラの姿が火に包まれるようにして変化する。

 そして最後に、初めのホムラへと戻った。


「――つまりはフレアが契約した火の精霊サラマの欠片なんだ。だから、本物のホムラじゃなかったんだ。ごめんね」

「サラマ、だったのですか……。けど、わたしの目の前にいるホムラは記憶の中のホムラと何ら変わりありませんよ?」

「まあそうだよね。きっとさ……サラマが気を利かせて、アタシを力の受け渡しの代理人にしてくれたんだと思うよ。だからさ、アタシは火祭ホムラ本人じゃなくて、ソラに力を渡すための存在なんだ」

「そう、ですか……。ホムラと再会できたわけじゃなかったんですね……」

「ううん、安心して。ソラは残念だって思っているみたいだけど、ソラが本当のアタシを助けたら……今度こそアタシたちは再会できるよ。だから、頑張ってほしいな」


 言いながらしょんぼり項垂れるソラの頬をホムラは優しく撫でる。

 ほんのりと温かい手の平の熱に目の前の彼女が作りものとは思えないソラの目から涙が零れ落ち、それを見ながらホムラがギュッと抱きしめた。


「ソラは、スカイは、アタシたちをもっと強くしてくれた。だから、今度はアタシたちの力で強くなって。そして、親友たちアタシたちを取り戻して!」

「うっ、っく……は、い。はい……! 絶対――、絶対に、助けます! 取り戻します!! ホムラを! みんなを!!」

「……うん、それじゃあ……アタシを、よろしくね。ソラ親友……」


 ホムラの優しい微笑みをその瞳に刻みながら、ソラの体は火に包まれた。

 直後、彼女は胸の奥に何かが宿るのを感じた。


 ●


『ソラ、ソラ! しっかりするッピ!!』

「ん……エ、アー……?」

『良かった! 目が覚めたッピね? 大丈夫ッピか!?』


 目を覚ますとエアーの焦ったような声が聞こえ、体を起こすと心配する様子が見られた。

 その言葉を聞きながら、彼女自身に違和感がないことを確認するとダークフレアを見る。

 彼女は未だ狂ったように歌い続け、周囲に闇の炎を撒き散らしているが……血走った白目からは血の涙を流し、声も所々掠れてしまっていた。

 とても、見ていられない姿だった。


「エアー、わたしはどうしたのですか?」

『ソラがフレアに触れた瞬間、彼女がキミを弾き飛ばしたんだッピ。だからキミは焼かれずに済んだけど……すこし気を失っていたんだッピ』

「じゃあ、3分も経っていないということ……ですよね?」

『そうだッピ。きっとフレアがソラに死んでほしくないからってこっちまで吹き飛ばしたんだッピ……だから』

「だから逃げろ。ですか? お断りです。わたしはフレアホムラを助けます。エアーがダメだと言ったとしても」

『…………秘策はあるッピか?』

「あります。フレアがくれましたから」

『わかったッピ。だったら、キミが思うがまま行うッピ』

「ありがとうございますエアー。――エレメンタルフュージョン! メタモルフォーーーゼッ!!」


 逃げてほしいと願うエアーであったがソラの意思は揺るがないことを理解し、彼女に委ねることにした。

 そんなエアーに感謝しつつ、ソラはヒールスカイへと変身する。


「癒霊少女ヒールスカイ参上! フレア! ――あなたを、癒します!」

「ァァァァァァアアアアアアアアアア~~~~ッ!!」

「安心してください。絶対に、救ってみせますから……! ――纏え、火の力!!」

『っ!? スカイ、これは……!?』


 スカイの体から発せられた力に対してひとつとなっているエアーから驚きの声が漏れる中、ヒールスカイは手を掲げる。

 すると彼女の掲げられた手から真っ赤な火が立ち上り、彼女の周囲に広がった。

 周りの者が見たらヒールスカイが赤々とした火に囲まれているようにしか見えないが、仕方ないだろう。

 そして彼女はキーワードを口にする。


「ユニゾン! フレアメロディ!!」


 そのキーワードとともに広がっていた火は火力を増し、煌々と燃えながらヒールスカイへと収束した。

 瞬間、収束した余波によって周囲を燃やしていた黒い炎が消え、分断されていたアーススリーもダークフレアとヒールスカイの戦いの様子が見えるようになった。

 当然アーススリーはヒールスカイが赤い火に包まれているようにしか見えない。


『っ!? ヒ、ヒールスカイが燃えてる!?』

『ぅえ!? ちょ、大丈夫なのあれ!?』

『待ってください、あの火は……ダークフレアの出していたものと類似しています!』

『なんだって!?』

『それってどういうこと~?』

『わかりません……けど、彼女なら、ヒールスカイさんなら、何かをするのでしょう』

『そうか……だったら、信じるしかないよな!』

『だったら、二人の邪魔をしないようにウルヴァッド兵と戦うしかないよね~~!!』


 慌てるアーススリーであったが、ブルーアースの言葉に納得をしてウルヴァッド兵との戦いを続けることにした。

 一方でピエロは目の前の現象に戸惑いを見せていた。


『ナ、ナンですかソレは!? 知らない、ワタクシは知らない! 答えなさい、ヒールスカイ! その力は、その力ハ何デスか!? イヤ、その前に倒せばいいだけのこと!! ダークフレア!!』

「ァァァァァァアアアアアアアアアア~~~~ッ!」


 ダークフレアへと命じると狂ったような歌声とともに黒い炎が再び周囲を燃やし、ヒールスカイを燃やすべく向かっていく。

 それを見ながらピエロは笑みを浮かべた……が、すぐに驚愕した。


「来てください、スカイギター!」


 赤い火に包まれたヒールスカイが腕を掲げると、彼女を包んでいた火が青い火へと変化しながら手へと収束していくとギターの形へと変化していく。

 そして収束した青い火を掴むと空色のエレキギターとなり、その直後ヒールスカイの姿は露わとなった。

 露わとなった彼女のコスチュームは変化しており、胸元を包んでいたクロスホルタートップは火の模様が描かれた白色のチューブトップに変化し、白いプリーツスカートが青色のホットパンツに変わっていた。

 羽織っていたオーバーコートは消え、首もとには空色のロングマフラーが巻かれており……そのマフラーの両端は青い火が燃えているようにゆらゆら揺らめいているようになっていた。

 さらに衣装だけではなくヒールスカイの特徴にも変化が起きており、空色一色だった長い髪に赤い火のような赤色が混ざりメッシュに、夕焼けと夜の色だったオッドアイも炎のように真っ赤な赤色へと変化していた。


「フォームチェンジ! 癒霊少女ヒールスカイ、フレアフォーーム!」


 彼女の掛け声とともにギャイィィィィィンッ!とギターが鳴らされた。

 すると鳴らされたギターの音が響くと共に周囲に青い火が奔り、黒い炎を散らしていく。

 そんな新たなヒールスカイの姿にピエロはさらに戸惑う。


『な、ナナ!? ななななっ!? ダークフレアの力をかき消した!? 何故!? ナゼ!?』

「この力は、フレアがわたしにくれたもの……。ピエロ、あなたに汚されたフレアの怒りの力です!! フレア、貴女を助けます。だから、聴いてください! わたしの歌を!! わたしのメロディを!!」


 声高らかにヒールスカイはダークフレアに向けて宣言するとギターを弾きはじめる。

 周囲に響き始めたメロディ、それは曲調は違うけれどもヒールスカイが歌っていたスカイソングであり、彼女の周囲に青い火が上がると青い火から燃える音符が出現し始めた。

 燃える音符が指向性を持っているかのように空中を漂い、ダークフレアの黒い炎に接触すると勢い良く燃えていた黒い炎はみるみるうちに萎み、静かに消えていく。

 さらに周囲に広がっていく燃える音符にウルヴァッド兵に接触すると……青い火がウルヴァッド兵の体を包み、包まれた火が消えると……精神が正気に戻ったらしく、これまで自分が行ってきたことを悔いるかのようにその場でしゃがみこむと膝を抱えて泣き始める。

 その様子を見たウルヴァッド兵は音符をどうにかして消そうとする者、音符から逃げるように動き出す者に分かれたがすこし遅れるだけでその殆どが火に焼かれて、自らの行いを悔いはじめた。

 ヒールスカイの火はまるで浄化の火であり、汚れた周囲の者たちを浄化しているかのようであった。そんな火がついた音符はアーススリーたちの元へも近づいてくる。


「~~♫ ~~~~♪ ~~~~~~♬ ~~♩」

『――って、俺たちにも来てる!?』

『浄化対象が定まっていないのでしょうか? それとも少しでも邪な心を持った者たちに向かっていく?』

『うぇ!? あ、あたしたちヨコシマな心なんて持っていないよ~!?』


 近づいてくる燃える音符を見ながら三人は叫び、どうするべきか戸惑う。

 けれどヒールスカイのことを信頼しているため、彼らは逃げなかった。

 燃える音符が彼らのスーツの表面に当たった瞬間、アーススリーの体が燃える。

 そして火は全身を包み、全身を燃やした火が沈下した直後――彼らは体に力が漲るのを感じた。


『う――うおおおおおっ!? な、なんだこれ!?』

『これは、パワーが回復しています!』

『何かやる気が漲ってきた~~!!』


 体の底から溢れてくるパワーを抑えることなくアーススリーは雄たけびを上げ、どうにかして音符を消そうとヒールスカイを銃で狙うウルヴァッド兵へと突撃。


『ウォラッ!!』

『『ウルヴァッドッ!?』』

(すげぇ、パワーが漲ってくる!! というか、あの時以上に力が溢れてくる!!)


 レッドアースが銃を構えたウルヴァッド兵を殴りつけるとドゴッと激しい音が響き、ウルヴァッド兵が吹き飛び、さらに奥にいたウルヴァッド兵を巻きこんでいく。

 そのパワーに驚きを見せるレッドアースだが、それ以上に溢れてくるパワーを抑えることが出来ずにいた。


『ウルヴァ~~……』

『そこです! アースショット!!』

『ウルヴァ!?』

(ここまで精密な射撃、僕の精神がかなり集中できているようですね)


 コソコソとヒールスカイを狙おうとしていたウルヴァッド兵だったが、それに気づいたブルーアースがハンドガン型の武器を構えるとビームを撃ち出す。

 撃ち出されたビームは放たれようとしていた銃のバレルに入ると撃ち出されようとしていた銃弾を銃の中で破裂させる。その衝撃に巻き込まれたウルヴァッド兵は悲鳴とともに吹き飛んだ。

 そしてそれを行ったブルーアースは精密射撃を行えたという事実に驚きつつも冷静に分析を行っていた。


『『『ウルヴァ~~ッド!!』』』

『行かせないよ~~!! とりゃ~~っ!!』

『『『ウルヴァ……ウ――ウルヴァッド!? ウヴァ――!』』』

『う、うわ~……、これ修理は大丈夫かな? 請求こないよね~?』

(というか軽く砕こうと思っただけなのに、ポッカリ穴開いちゃってる……)


 遠距離からの攻撃は難しいと判断した数名のウルヴァッド兵は一斉にヒールスカイへと駆けていく。というか、歌を止めさせればどうにでもなると考えているからだ。

 そんなウルヴァッド兵たちへとバズーカ型の武器を両手で持ちながらイエローアースは立ち塞がると、ハンマーのように武器を地面に叩きつける。

 するとズズンッと前方、ウルヴァッド兵たちが居る辺りが揺れて地面に穴が開き、ポカンとしていたウルヴァッド兵たちが一斉に落ちていった。

 ポッカリと空いた大穴を見ながらイエローアースはマスクの中で苦笑する。


『~~~~っ! ナンですかコレは! 何なのデスか!?』


 次々と倒れていくアーススリー妨害用に連れてきたウルヴァッド兵を見ながらピエロは怒りの声を漏らし、ギリギリと拳を握りしめる。

 そんなピエロをあざ笑うかのように、アーススリーは叫ぶ。


『さあ、ウルヴァッド兵! 来るなら来やがれ!』

『どんなに来ようと僕たちが倒してみせます!』

『だね。ドッカンドッカン倒しちゃうよ~!』


『『『だから――頑張れ、ヒールスカイ!!』』』


「~~~~♪」

(……ありがとうございます。アーススリー、リクくん、カイくん、ハナちゃん!)


 ギターを弾き、歌を歌いながら心の中で彼らに感謝するヒールスカイソラ

 そして彼女は親友を助けるために歌い、奏でる。すると黒い炎を段々と蒼く燃える音符は打ち負かしはじめていた。


『フッ、フフフッ、ヒールスカイはダークフレアの相手に夢中……デシタラ、アーススリーを潰してあげれば、この煩わしい歌も消えマスよねぇ?』

『ピエロ! 何をするつもりだ!!』


 目の前の光景に苛立ちながらピエロは呟く。

 その呟きを聞き、レッドアースが声高らかに言うとピエロは仮面を笑顔に変えると何時か見たジャグリングボールを取り出す。


『ナニって、決まっているじゃありまセンか! ストレスを抱えたウルヴァッド兵! アーススリーを倒すために力を貸しなサイ!!』

『『『『ウルヴァッド!?』』』』


 未だ音符から逃げていたウルヴァッド兵だったが、ピエロの声に反応し上を見た直後――ピエロが取り出したジャグリングボールが落とされる。

 そしてジャグリングボールは地上で軽くバウンドし、四方に黒い鞭を伸ばしてウルヴァッド兵たちを捕らえた。

 伸ばされた鞭に驚きの声をあげるウルヴァッド兵たちであったが何が起きたのかを理解する前に、ウルヴァッド兵たちは黒いジャグリングボールに集められて黒い液体に呑みこまれた。


『これってまさか……』

『どうやら、ウルサイナーが出るようですね……』

『だったら、戦うまでだ! 来い、マグマアー――!?』


 現れようとするウルサイナーに若干の怯えを見せるイエローアースとブルーアース。

 それに対してレッドアースはマグマアースを呼び出そうとする。

 しかしストレス空間が発生し、周囲の空間から彼らは隔離された。


『くそっ! これじゃあ、マグマアースが来ない!?』

『ハハハ! 馬鹿正直に巨大マシンを呼び出させるワケがありませんよネェ! サア、ウルサイナー! 現れなサイ!!』

『『『『ウルサイナーーーーッ!!』』』』


 黒い液体がグニグニと動き、形が創られ……無数の顔を持ったウルサイナーが姿を現し、産声を上げた。

 黒い体にいくつもの顔が付いたその姿は、なんというか不気味で恐怖が感じられた。


『どうデスか? これがアナタがたの最後の相手デスよ。さあ、行きなさいウルサイナー!!』

『『『『ウルサイナー!!』』』』


 ピエロの命令を受けてウルサイナーは地上にいるアーススリーを踏み潰すべく歩きだす。

 それから逃げるようにしてアーススリーは走り、時折銃タイプの武器で攻撃を行うが決定打とはならない。


『チクショウ! せめてチキュウオーに合体させてイーブンな戦いさせろよ!』

『それは無理でしょう! どう考えてもあのピエロ、偏屈ですから!』

『だよね~! どう考えても恋人なんていない上に根暗だろうし~~!』

『余計なお世話デスよ! 無駄口を吐く余裕があるようデスねぇ!! ウルサイナー、はやくしなサイ!!』

『『『『ウルサイナー!!』』』』


 アーススリーの文句に苛立ちを見せるピエロがウルサイナーに命令するとウルサイナーは高らかと返事をし、歩くスピードを速める。

 それに対しアーススリーはなんとか逃れるが、徐々に距離は詰められていく。


(くそっ、どうしたら良い? どうすれば良いんだ!?)


 どうしようもない状況にレッドアースは唇を噛む。

 マグマアース、シーアース、ガイアアースも呼べない。ましてやチキュウオーにさえも合体出来ないこの状況。

 待っているのは敵による一方的な攻撃。それを待つしかないのだろうか。


『何をしてるッピか! キミたちの相棒を呼ぶッピ!!』

『っ!? 誰だ!?』


 突如語りかけられた声にレッドアースは戸惑いの声をあげながら、声の主を探す。

 しかし声の主は見当たらない、それでも声は届く。


『今はどうでも良いッピ! とにかく、キミたちの相棒を呼ぶッピ! どんな場所でもキミたちが心から呼べば相棒は応えてくれるッピ!』

(いったい誰だ? それに相棒って……まさか!)

『二人とも、アースマシンを呼ぶんだ!』

『え!? でも、来ないんじゃない?』

『いくらアースマシンでもこの空間には……』

『信じるんだ! 俺たちのアースマシンを! 相棒を!!』


 そう言ってレッドアースは心の底からマグマアースへと呼ぶかける。


『来い、来い、来い、来い、来いっ!! 来い――マグマ、アーーーースッ!!』

『カモン! シーーアーーーースッ!!』

『来て! ガイアアーーーースッ!!』

『ムダ無駄! 無駄デスよ! たかが機械がワタクシが創り出したストレス空間の来られるわけがないのデスよ! バカですかねぇ!!』


 レッドアースがマグマアースへと呼びかけた瞬間、二人も自身のマシンに呼びかける。

 それを見ながらピエロは彼らをバカにするようにあざ笑う。

 だが……。


 ――ピシ、ピシピシ……パキィィィィン!!


 ガラスを砕いたかのように空間にヒビが入り、ストレス空間へとマグマアース、シーアース、ガイアアースが召喚された。

 それを見た瞬間、アーススリーをあざ笑っていたピエロは固まった。


『ナ――ナンデスッテェェェェェェェッ!?!? バカな、バカなバカな! ウルヴァッドの団長サマからも隔離された空間に来るはずがないとお墨付きがあったのデスよ!? それがナゼ?!』

『そんなの俺たちにも知るかよ! けど、反撃の時間だ! 行くぜ、ブルーアース、イエローアース!』

『うん!』『了解!』


 どう言えば良いのかわからない反応を見せるピエロにレッドアースが言うと、マグマアースへと飛び乗る。

 レッドアースの掛け声にブルーアースとイエローアースも続いて自身のマシンへと飛び乗ると、ウルサイナーへと攻撃を開始した。

 それを見ていたピエロだったが、すぐに冷静さを取り戻したようでアーススリーをあざ笑う。


『フ、フウ、あり得ないコトが起きたから驚きましたが、アナタたちのマシンの攻撃なんてウルサイナーには――』

『くらえ! マグマバレット!!』

『ウォーターカッター発射!!』

『ガイアスラーーッシュ!!』


 羽ばたきとともに放たれるマグマの礫が、地上スレスレを泳ぎ足を狙うように放たれた高圧の水の刃が、俊敏な獣のように飛びかかり振るわれた爪が――ウルサイナーを攻撃する。

 無数の顔が焼け、片足の足首から下が斬られ、黒い表皮が抉られた。


『『『『ウ――ウルサイナー!?』』』』

『っ!? バ、カな!? 何ですか、何なのデスか!? 何故ウルサイナーが傷つくのですか!?』

『だから知るかよ! けどなぁ、彼女の……ヒールスカイの歌を聞いていると力が湧いてくるんだよ! 俺たちなら出来る。頑張れるってな!!』

『ヒールスカイ……! ヒールスカイ! アナタですか! また、また! イツモイツモ、イツモイツモ何時もいつもいつもいつもっ! キサマラ癒霊少女は本当に目障りな存在だッ!!』


 仮面に手を当てながら怒り狂った視線を未だ歌い続けるヒールスカイへとピエロは向ける。

 一方でヒールスカイの戦いも佳境を迎えようとしていた。


「ダークフレア! 貴女を汚したその黒い炎、わたしが癒します! だから――聴いてください、わたしの歌を!!」


 そして彼女の歌は空間を満たした。

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