第11話 星空ソラは運動をする

 ヒールスカイとしてウルヴァッド帝国との戦いをして数日が経った。

 テレビのニュースではヒアサシティ内にウルヴァッド帝国の戦闘員が現れたということに対する危機感と防衛設備がどうなっているかを見直されているということや評論家たちの議論が度々出ていた。

 それと同時にヒアサシティに現れた謎の少女ヒールスカイの話題も出ているけれども、ソラはそちらは見ないようにしていた。

 高校に行ってもヒールスカイの話題が度々出ているのが聞こえて、なんとも言えない表情をしてしまうのは仕方ないだろう。

 そんなある日の高校から帰ってきてから、ようやくこの間のアーススリーに起きた現象についての考えが纏まったのかエアーがソラに語り掛けてきた。


「えっと、つまり……どういうことですか?」

『つまりアーススリーが装着しているスーツはボクら精霊と同じようなものだと思うッピ。だから、地球の歌がアーススリーのスーツに力を与えたと思うッピ』

「そう、なのですか?」

『そうでなければ、ヤルキナイナー――いや、ウルサイナーの影響でやる気が無くなっていた彼らがやる気を漲らせるなんて怒らないと思うッピ。それに癒しの力がスーツに宿っていたからウルサイナーとひとつになっていたウルヴァッド兵も倒せたんだと思うッピ』

「じゃあ……リクくんたちはその力を使えるようになったのですか?」

『違うと思うッピ。だって、少ししたらスーツのラインが消えていったから……きっと癒しの力が入ってたからあんな風にちょっと強くなったって感じになってたんだろうと思うッピ』


 エアーの言葉を聞きながら、数日前の出来事を思い出す。

 初めてヤルキナイナー以外との戦いを行ったけれど、その自信は押し倒され、殴りけられた結果……かなりズタズタにされてしまった。

 だけど、それを彼女が助けようと思っていたアーススリーに助けられたという少しだけ情けない結末となってしまったけれど、町の人たちが無事だったことには安堵していた。

 ちなみにアーススリーや町の人たちに止められたけれど、ヒールスカイはそそくさとその場から逃げるようにして逃亡した。

 そしてその間にウルヴァッド帝国の怪人は1回現れたけれど、ウルサイナーは出現することは無かったようでアーススリーの尽力で怪人は倒され、巨大化したけれどもチキュウオーによってそれも倒されたようだった。


「何か力を使う方法とかがあるのでしょうか……」

『ソラが居たとき、というのは条件だろうけど……出来ればウルサイナーが現れてほしくないッピね。それと……今日もちゃんとするッピよ』

「う……、わ、わかりました……。頑張ります……」


 エアーに返事をしながらソラは立ち上がる。

 今更だが彼女の服装は高校のジャージと短パンという井出達だった。

 あの日の戦いの結果、彼女に足りないもの……それは運動神経と格闘技能だとエアーは感じたらしく、事あるごとにちゃんと走るようにと言うようになった。

 なので高校から帰って、食事を作るまでの1時間でもジョギングをするようにとエアーに言われてそれを実行することとなってしまったのだ。


「それじゃあ行ってきますね……」

『ちゃんと走るッピよ。それともボクもついて行こうかッピ?』

「いえ、それはやめてください」


 ジョギングをするように言われた当初、ソラはエアーを肩に乗せながら走っていたのだが……やれスピードが落ちたとか、やれもっと速く走れとか、もっと持てとか叱咤が酷すぎた。

 なのでひとりで頑張って走るしかないのだと彼女は理解したのだ。ちなみに格闘技能は……どうにかしないとは思うけれど、伝手がないために難しかった。

 そんなこんなで彼女はジョギングをすることとなった。



「は、はひ~……、はひぃ~~……、も、もう、むり……ですぅ……」


 家を出てから30分ほどが経った。

 エアーに言われたとおり彼女はジョギングを行うために近くの公園に赴くと、かるく準備体操をしてから園内を走り始めた。

 公園は遊具の類は少し離れた場所にあって中央には大きな池があるタイプのものでジョギングコースはその池の周囲を走るように設計されており1周は約1キロと短いものだが、何週も行うタイプのものだった。

 それをソラは頑張って走り始めたのだが、半周するころには息も絶え絶えで心臓もバクンバクンと高鳴っていた。

 ちなみに周囲には人はいないのだが、居た場合はチラリと絶対に見られていたことだろう。何故なら走るたびに彼女の2つのメロンはバスケットボールのバウンドさながらブルンバルンとはげしく上下左右に動いていたのだから。

 そんなことになっている本人は走るフォームも悪く、マスクメロンの揺れが原因で簡単に疲れ切ってしまっていた。その結果、当然汗だくだ。


「はふ~……、はひぃ~……」

「あれ? ソラ、どうしたんだ?」

「ぅえ……? ぁ、リ、クくん……」

「ああ、急に止まるな。ゆっくり歩いて落ち着かせろ」

「は、い~……」


 ふらふらとしながらも走るソラだったが、突然声をかけられそちらを向くと彼女と同じようにジョギング……というよりもランニングに来たのだろう、ランニングウェアに身を包んでいた。

 そんなリクに気づいたソラは立ち止まろうとしたが、急に立ち止まったりしたら体に悪いことを知っている彼はゆっくりと歩かせるように言う。

 それに従い、ゆっくり歩いて少しして心臓の激しい音が静かになるのを確認してゆっくりと足を止めた。


「はあ、ふう……、こ、こんばんわリクくん。さっきぶりです」

「ああ、さっきぶりだなソラ。それでどうしたんだ? 突然ジョギングだなんて」

「えぇっと……その、ちょ、ちょっと体力をつけようかなって思いまして……」

(ヒールスカイに変身したらちゃんと戦えているから大丈夫だって思ってましたが、エアーからはすっごく運動音痴を叱られましたし……)


 指と指を突き合わせながら言うソラの言葉にリクは首を傾げたがすぐに納得するようにして頷くと心配そうに彼女を見てから、徐々に暗くなっていく夜空を見上げる。

 あと1時間もすれば街灯もともるころだと思われる。


「そうなのか? けど、もうすぐ暗くなるっていうのにひとりじゃ危なくないか?」

「そ、そう……ですね。でも、ちょっと体力をつけたくて……そ、それにもしも変な人が現れたらボッコボコにしてあげます! シュッシュッ!」

「――プッ。ソラ、そんなパンチじゃ逆に掴まれちまうぞ」

「むぅ……、笑うことないじゃないですかー!」


 ソラが口でシュッシュッ!と言うが実際にはヘロヘロパンチであったため、それを見たリクは笑いをこらえることが出来ずつい笑ってしまう。

 そんなリクにソラはぷくーっと頬を膨らませて怒るが、どう見ても可愛らしい。


「そう怒んなって。もしもソラが危なくなったら、お……俺が助けに行ってやるからさ!」

「え……。あ、いや、その……うぅ、何言ってるんですか!?」

「あ! そういう意味じゃないぞ!? いや、というか、どういう意味だ? ああくそ、でも助けに行くのは絶対だからな!」

「は、はい……」


 リクが言ったことにソラは顔を赤くし、戸惑いながら声を上げる。

 その様子によく分かっていない様子だったリクだったが、理解できたようで彼女と同じように茹で蛸となりながら否定をする。しかし、自分が言った言葉に若干混乱しているからか、よく分からないことになっていた。

 それでも困ったことが起きたら絶対に助けるという言葉には信頼が出来ていたため、ソラはすこし恥ずかしそうに……それでも何処か嬉しそうに頷く。


「ま、ジョギングするなら一緒に走るか?」

「え? 良いんですか? リクくん、全力で走る気満々じゃないんですか??」

「なーに、ちょっと一緒にジョギングするぐらいなら準備運動と変わりないって」

「じゃ、じゃあ、おねがいします……」

「おう、任された! ――っと、ソラ、走るにしてもお前のフォームは全然だから、簡単に疲れるんだよ。もっとちゃんとしたフォームにしないと!」

「は、はい、でも……どんな感じですか?」

「こんな感じだな!」


 言いながらリクは走るのに適した基本的なフォームをポージングする。

 それを真似するようにソラもポージングするけれど、どこかおかしい。

 リクもそれが分かっているようで首を傾げた。


「んー、なんか違うなー……。ちょっと触るな」

「え――ひゃ!?」

「背中をもう少しピンとして、腕をもう少しこうで、脚はこう」

「あ、ああ、あの、リ、リクくん……!」

「それで胸は――って、わ、悪い!! 馴れ馴れしすぎたな」

「い、いえ……、その、気にしないで、ください」


 ソラの体に触れていたという事実にリクは自覚し、顔を赤くしながら距離を取る。

 そして気づいたのは鼻孔を擽る微かな甘い香り。女性の……いや、ソラの汗のにおい。

 それに気づいてしまい、リクの心臓はさらにドキドキと高鳴ってしまう。


(ああくそ、本当に……かわいいな)


 チラリと横目でソラを見ると、触れられたことが恥ずかしかったのか頬が赤いように見られ……それが男としての本能を刺激するようでたまらなく愛おしかった。

 というよりも、惚れている女の子の挙動は一挙手一投足すべてが可愛らしく見えてしまうのだ。

 だから、だから……。


(ソラが、ヒールスカイなわけ……ないよな?)


 すこし前に聞いたヒールスカイの検査結果を彼は信じられずにいた。

 そしてそのことを忘れようとするべく、彼は軽く頭を振るってからソラとともにジョギングするのだった。


 ●


 時間は数日前へと戻る。


 ウルヴァッド帝国の怪人を倒しシークレットベースへと戻ったアーススリーは変身を解除し、地球三兄妹へと戻ると戦闘による影響で体に異常がないかメディカルルームで母親のナミの手により検査を受け、異常がないことが確認されてからシャワー後に全員集まるよう指示をされた。

 突然の集まりにどうしたのかと首を傾げながらも、三兄妹はシャワーで汗を流してからブリーフィングルームに向かう。すると、ルーム内では何処か気まずそうな表情をしたナギとナミが待っていた。


「父さん母さん、いきなり集まるようにってどうしたんだ?」

「あー、うん。ちょっと……ね」

「なんだか言い辛そうですけど、何か言い難いことですか?」

「まあ、言い難いこと……ね。でも言わないとって思うけど、ちょっと確証が持てないって言うこともあるけど……。いえ、確証が持てないというか、頭が理解を追いつかないというか……」

「なんだか気にあるな~。いったいどうしたの?」


 三兄妹に対してナギとナミはどこか言い辛そうにしていたが、三兄妹の言葉に言うことを決めたのか何処か真剣な表情で三人を見る。


「ハナがこっそりと採取した彼女……ヒールスカイの血液や毛髪を調べた検査結果が出たんだよ」

「え、お前そんなことをしてたのか?!」

「あ、あはは、実はさヒールスカイの体についた砂埃を払ってあげたときにあたしのスーツに彼女の血がちょっと付着してたのと髪も引っかかってたみたいなんだ~。だから、それをお父さんたちに渡したんだよね~」

「それで、父さん母さん。彼女……ヒールスカイさんに関する結果はどのようなものだったのですか?」


 ナギの言葉にリクは呆れ、ハナは苦笑しながら頭をかき、カイはメガネをクイッとさせながら両親へと検査結果を聞きはじめる。

 それに対してナギがモニターを操作し、ナミが説明を始めた。


「初めに彼女――ヒールスカイの血液と毛髪から取った遺伝子情報から得た結果は私たちと同じ普通の人間と何ら変わりなかったわ。ただ私たち人間にはない未知の遺伝子情報も確認されたけど……少なくとも彼女はウルヴァッド帝国の怪人が持っている遺伝子情報とは異なっているのは確かよ」


 ナミの説明をバックにモニターでは遺伝子情報の結果が表示されており、人間の遺伝子情報とほぼほぼ一致している表示がされながら何パーセントの結果が『???』と表示されている。

 続いてアーススリーのバイザーに記録された彼女のスーパーウルヴァッド兵との戦闘記録が表示され、一瞬揺れる双丘に目が行きそうになるも……スーパーウルヴァッド兵を殴りつけたり蹴ったりした際のパンチ力、キック力が推定で測定されているのだがそれを見て三人は驚いた顔をした。


「え!? 彼女の攻撃力は普通の女性よりも少しだけ強いだけですか?」

「ええ、スーパーウルヴァッド兵と呼ばれたウルヴァッド兵との戦いでは凄い攻撃力を発揮していたけれど、もしかすると……いえ、十中八九、特定の敵に対しては特攻を持っているんでしょうね。貴方たち三人が遭遇したっていうウルサイナーというものがこのスーパーウルヴァッド兵に使われていたのよね?」

「ああ、あのピエロってやつは自分で言ってた。ウルヴァッド兵の中にウルサイナーを押し込んでスーパーウルヴァッド兵と呼ぶことにしたって」

「だったら、そのウルサイナーっていうのに対してのみ彼女は絶大な攻撃力を持っているんでしょうね。……つまり、普通のウルヴァッド兵と戦ったりしたら彼女……百パーセント返り討ちに遭うわよ」


 真剣な表情でナミが言う背後ではデフォルメのイメージ映像が表示されており、スーパーウルヴァッド兵と思われる敵にヒールスカイと思われる少女が戦う姿が表示されて勝利するというもの。勝ったことが分かるように少女はジャンプしている。

 その次にウルヴァッド兵と思われる敵にヒールスカイと思われる少女が戦う姿が表示されるが……敗北していた。ウルヴァッド兵が勝ち鬨を上げて、その下では少女が倒れている。


「つまりじゃんけんのようなものか? 俺たちはウルヴァッド兵とか怪人と戦える。だけどヒールスカイはそれらと戦おうとしても高確率で勝てない。その代わりに俺たちはウルサイナーやスーパーウルヴァッド兵と戦っても勝てないけどヒールスカイは勝てるっていう感じか?」

「まあ、そんなところね」

「だったら~、彼女と協力するのが一番ってことだよね~?」

「そうですね。ですが、彼女は協力してくれますか? 現にこの間も彼女は戦闘が終わった後に僕たちと一緒に来てもらえないかと頼んでも断ったじゃないですか」


 ハナの言葉にカイは言う。

 初めてスーパーウルヴァッド兵と対峙して、未知の力を感じた後にアーススリーは怪我人の治療を終えたヒールスカイに同行を依頼した。

 しかし彼女は謝罪とともに拒否して、逃げるようにしてその場から居なくなった。


「それでこそ正体がわからないと協力を頼めないんじゃないの?」

「……というか正体、わかってるんだよな? だから俺たちを呼んだんじゃないのか?」


 ハナの言葉に被せるようにしてリクが言うと、ナギが小さく「あー、やっぱりわかっちゃうよなぁ……」と零した。

 その様子からヒールスカイの正体を明かしたくないといった様子が感じられ、どういうわけか三人は少し胸騒ぎを覚えた。


「リク兄カイ兄、なんか……イヤな予感がするんだけど」

「ああ、何だか俺たちにアーススリーの役割を託したときに近い感じがする……」

「それほど重要なんですね。それで父さん母さん、彼女の正体は?」

「……ラちゃんだ」

「「「え?」」」


 言い辛そうにナギが言うが、聞き取れずに三人は聞き返す。

 見かねたナミが告げる。


「ヒールスカイ――彼女の血液と毛髪から採取した遺伝子情報をデータベースに登録されている人物の中からすべてチェックを行ったのだけど、ヒットしたの。それが……彼女よ」

「「「は……? え?」」」


 そう言ってモニターに映し出された人物、それは彼らがよく知る人物だった。

 だから頭がそれを受け入れることができなかった。


「ソ、ソラちゃん? え、なんで?」

「冗談……じゃないのか?」

「嘘、ですよね? または誤作動とか……」


 当然三人は機械の誤作動や両親の冗談と言ってしまう。しかし、両親は彼らの言葉に首を振る。

 彼らと同じ反応を二人はしており、機械の誤作動かと思いながらもう一度だけデータベースの老若男女問わずチェックを行った。

 しかしそれでも、結果は変わらなかった。


「こちらも違うと信じたかったよ。けど、何度も遺伝子情報をチェックしても、95%の確率で彼女がヒットしてしまうんだよ」

「それと……こっちはソラちゃんのこれまでの経歴なんだけど、この部分を見てちょうだい」


 モニターに新たな資料が表示される。それはこれまでソラが過ごしていたことが書かれているのだが……初めの項目を見るように促す。

 そこには『●●シティにて保護、治療のために●●シティホスピタルへ移送。その際、データベース内に遺伝子情報が確認されず、ウルヴァッド帝国から逃げた人物と予想される。治療後、目を覚ましてから担当者が応対するも、彼女はこれまでの記憶を失っていることが確認される』と書かれていた。

 三人はソラが星空家の実子ではないことは知っていた。だけど、それまでの過程は知らなかったために驚いた様子だった。


「あいつ……、そんなことひと言も……」

「ソラくん……」

「ソラちゃん…………」

「件のピエロという敵の言葉とソラちゃんの境遇を合わせるなら……、彼女はきっとピエロが居た敵の組織と戦う存在だったということだろうね。それで何らかの衝撃で彼女はこの世界に弾き飛ばされ……これまでの記憶を失った」

「それで何かが起きたことで記憶を失っていた彼女は記憶を取り戻したと考えているわ。私はその何かが貴方たちが初めて遭遇したっていう、時が止まった世界と思っているの」


 ナギとナミの言葉に三人はつじつまが合うと感じて何も言えない。

 そんな子供たちの様子を見ながら、二人は進める。


「今のところ、この情報はこちらで止めているけれど……僕らとは別の組織に彼女の情報が行くとソラちゃんは強制的に協力させられるかも知れない。もしくは変身していない内に襲われたりする可能性だって……」

「「「っ!!」」」


 ナギの言葉に三人は反応するが、その可能性は否定できなかった。

 アーススリーである者たちは基本的に正体は明かされていないし、例え変身したとしても正体が誰かと認識される直前に世界中に設置されているとある装置によって変身した相手のことを忘れてしまうようになっていた。

 だがヒールスカイであるソラにはそれは適用されない。だから、正体がバレてしまうと彼女の能力を欲するために誘拐したり、無理矢理協力なんてする可能性だってある。下手をすれば人間としての尊厳を踏みにじることさえも……。

 変身している状態であれば一応は切り抜けることが出来るだろうが……、変身していなければさらにその危険度は増してしまう。

 そしてもしかするとあんなことやこんなことさえもされるのでは……。とかそんな行き過ぎた想像がリクとカイの頭を駆け巡る。


「……なんて、ことですか…………!」

「くそっ! 俺たちが不甲斐ないばかりに……!」

「いやいやリク兄カイ兄、まだソラちゃん捕まってたりしていない生きてるってば。というかどんな想像をしてたのよ」


 顔に手を当てながら嘆くカイ、悔しそうに拳を手に当てるリクを見ながら呆れた様子でハナが口を開くが……聞こえていないようだった。

 そんな二人の様子を見ながら、両親はハナへと言っておくことにした。


「とりあえず、今のところ彼女のことは機密事項にしておくけど、出来れば三人とも気を付けて彼女を見ていてほしいと思っているんだ」

「うん、わかったよ。あたしもソラちゃんが何かされるっていうのはイヤだからね~。二人にもしっかりと言っておくよ」

「よろしく頼むよ」

「よろしくね、ハナちゃん」


 悩み続けるリクとカイを他所に、三人はそう話し合いをしてからブリーフィングルームを後にした。

 そうしてソラの知らない間に話しは進展していった。

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