教室昼

 楽しそうに話す二人の友人を見ながら、美玲は黙々とおにぎりを食べる。異変に気付いた三森は控えめな声で話題を振る。


「清水、そんなに体育したかったの?

 天気残念だね」

「え?」


 窓の外を見ると雨が降っていた。朝の曇り空は雨雲だったようだ。ぽかんとしていると、進堂が口を開く。


「違うよ三森、今日はもともと体育館の予定

 だったから無くならない」

「ちょっとまって、なんで体育なの?」


そう言うと、二人は顔を見合わせた。


「だってさっきからご機嫌ななめだよ」

「サッカー楽しみにしてたし」


 そんなに顔に出てたのか。二人は全く悪くないのに申し訳ない。


「ごめん、眠たかっただけ」


 もう、紛らわしいと、二人は怒ったふりをしてこの話題は終了。三人仲良くお昼休憩の再開だ。


 それにしてもサッカーなんていつ話題にしただろう。サッカー、、これのせいで気分が悪いと言うのに。



 保健室を出て鉢あった男子の片方は、美玲の顔をまじまじと見てきた。そして名札に目をやり、隣の男子に耳打ちをする。耳打ちされた方の目線がこっちに向くのが見える。驚くほど分かりやすい行動に美玲はため息をつく。


 この学校で美玲にそんな態度を取るのは だいたいサッカー部だ。こちらは向こうの事など認識していないのに話題にあげられる事は正直気分が悪い。ここまで分かりやすい事は珍しいが、見ず知らずの男子の見せ物になる事はしばしばあった。


 なぜかはわかっている。サッカー部の

副キャプテン、北はやてが美玲の彼氏だからだ。


 男子同士でも案外恋バナをする事は、はやてと付き合ってから知った。サッカー部内でどのくらい話題にされているか知らないが、

二人の仲は広まっているのだろう。

目立つのが得意でない美玲は正直なところうんざりだった。


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