保健室

 消毒の匂いがする。保健室だから当たり前か。美玲はカーテンに囲まれたベットの上で目を覚ました。もう頭痛は治まったが、体がだるい。


 いまは何時だろうとスマホを確認するため、そっと右手をポケット入れる。しかし、ポケットに入ってたのはスマホではない。


「……てち」


 美玲が通学リュックにつけているクマのストラップだ。てちは名前。高二にもなって人形に名前をつけているのは、少し恥ずかしいが、許してもらうしかない。


 てちのお腹を握ると、かさかさ音が鳴る。200mlちいさめペットボトルほどの大きさの、クマの人形。背中にはチャック。音が鳴るのは美玲が入れている中身のせいだ。


 もう一度寝ようかと考えている間にチャイムが鳴った。左ポケットからスマホを出し確認すると、11時30分だ。3時間目が終わったらしい。次の授業は化学だったはず。


 少し考え、美玲はカーテンを開けた。


「せんせーい。教室戻るねー」


 欠課表を書き保健室を出ると、廊下で男子二人組が話し込んでいた。


 

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