学校朝

 HR一五分前、二年四組は半分ほどが登校している。美玲たちは教室に入り、リュックも下ろさず同じ人物の机へ歩く。


「おはよっ」

「おはー」


 二人の声に本を閉じ、にこやかに応じる優等生。三森沙良みもりさらだ。


「進堂、清水、おはよう」


 これでいつメンの完成。

このクラスの女子にはグループがあって、美玲たち三人は一緒に過ごしている。


 グループと言っても、スクールカーストはないので、みんな比較的仲が良いのではないか。ただ、クラスでの役割分担や学校イベントは自分のグループの友達と一緒、というのが暗黙の了解なのだ。


 春から仲良くしている三人組。

つるむようになったのはありふれた理由だ。


 始業式の日、思ったより知ってるメンツが少なくて、一年の時そこそこ仲の良かった清水と話していた。そこに、同じバド部でマネージャーの三森も加わった。(私はバドミントン部なのだ)それが始まり。

もともと仲の良かった二人と一緒になれて、

すごく安心した記憶がある。


 ちなみにお互い名字で呼び合っているのは、ふざけて始めたノリである。

もうすっかり定着してしまった。

何が面白いか三人とも分ってないが、楽しいからいいやと思っている。



 予鈴が鳴り、副担任が入ってきた。


「みなさん、おはよーう!」


古典担当の芳村よしむら先生。美玲は、この声が大きすぎる、おばあちゃん先生が苦手だ。授業はわかりやすいのだが、どうも好きになれない。この先生が来たということは、今日は担任が出張か何かなんだろう。




 ……ズキズキ


 不意にやってくる、頭の奥の慣れた感覚。

あぁ、今日はだめな日か。

そういえば昼から雨の予報もでてたな。

痛む頭に芳村先生の声が響く。

HRが終わるまであと何分だ?


「しょうがない」


 そうつぶやくと、美玲は通学リュックについているクマのストラップをポケットにねじ込んだ。

  

 HRが終わった瞬間に美玲が席を立つと、気づいた三森が心配そうに声をかけてきた。


「付き添いは?」

「今日は大丈夫」


ほんとに? と、まだ心配している。さすがマネージャー。面倒見がいいなぁ。


「てち持った?」


教室を出る直前、進堂にも確認される。


「うん」


答えると、にやっと笑って自分の席に戻っていった。こっちは軽い。


 散歩でも行くような足取りで、美玲は今日も一人で保健室へと向かう。

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