第2話
カーテンの隙間から差し込む日の光に思わず顔を
目を擦りながら日課であるカレンダーアプリを開いて、今日一日の予定を確認する。
そこに書かれていた『イベント』という四文字の単語に、俺は思わず飛び上がるようにしてベッドから起きた。
朝の準備を終わらせて、俺はいつものように全身黒い洋服に身を包む。一眼レフカメラを専用のポーチに仕舞い込んで本日の予定であるイベントの会場に向かった。
今回俺が向かったのは、オタク界隈ではかなり有名な撮影会のイベントだった。
今回は小規模だが、大きい規模のものだとその作品の世界観をコスプレイヤーが演じる『コスプレサミット』という大会などもある。さらにコスプレイヤー同士が集まり歌唱するイベントもあるなど、今やコスプレは日本文化の一部と化していた。
そもそも俺は生粋のアニメオタク……ではなく、コスプレイヤーオタクだ。元々、趣味であるカメラの勉強の幅を広げたいと始めたこのイベントへの参加だったけれど、いつの間にか沼にハマってしまい、気づけばレイヤー様を追っかけるオタク男子と化した。
アニメにはそこまでの興味はないけれど、推しの為なら勉強もする。それくらいの覚悟を持って俺は参加していた。生半可な知識は、レイヤー様の努力に対して失礼極まりない。
気になった方は片っ端から声をかけて撮影をしてもいいか聞いた。どの方も優しく快諾してくれて、その心に感謝して最高の一枚をフィルムに焼き付ける。
俺は基本的に先にSNSを使用して気になるレイヤー様に目星を付けてからこういったイベントに参加することが多い。今回もそうだった。何人かお目当てのレイヤー様に出会うことができ俺は
あとはひとり気になっているレイヤー様が、今日のイベントに参加しているという情報を得ていた俺は、昼休憩を
なにせうちは『お堅い家系』なのだ。
SNSを何気なく確認してみると、なんとここから程近い場所でその方が撮影を行っているらしい。俺は飲んでいた飲料系ゼリーに蓋をして鞄に仕舞い、その場所まで移動した。
かなりフォロワー数の多いレイヤー様だということを俺は失念していた。
現場に向かうとそこにはたくさんのカメラマンたちがレイヤー様を囲っていた。とても人気なのだろう、来る人見る人が絶えず蛇の道を作っている。なんとなく列の最後尾が見えたので並んでみる。こういうのはカメラマンに対してもリスペクトが必要だ。
そうして順番になり、目の前を見た瞬間——俺の脳内はショートした。
もこもこなヒツジ特有の柔らかい毛玉を纏う可愛らしい天使、最近流行っている『プリュム・ルル』という深夜帯アニメのヒロインである『プリュム』がそこにいた。
けど——
そこにいたのは、間違いなく、血を分けた姉だった。
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